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The Language of Food 女性から女性へ、日々の料理をつたえることばを残すミッション



著者:アナベル・アブズ、刊行日:2022年2月3日、ページ数:416、ジャンル:伝記フィクション、料理史、対象:中高生以上(マイルドな性的表現を含む)

著者について
アナベル・アブズ  
ジェイムズ・ジョイスの娘ルチア・ジョイスを主人公に父ジェイムズやサミュエル・ベケットとの関係などを小説にしたJoyce Girlでインプレス・プライズの新人作家賞、スポットライトノベル・アワードを受賞し、グッドリード・アワードなど数々の賞でノミネートされた。

あらすじ
時代は1830年代後半、イライザ・アクトンはたった1冊出版した詩集を足掛かりに名を成したいと願っていたが、出版社には相手にもされず料理書を書いてはどうかと勧められる。失望したイライザだったが、突然破産した父親が死亡を装ってフランスに逃れたため、イライザと母親は屋敷を出て家を借り、そこで食事つきの宿泊施設を営み始める。
 節約のためそれまで雇っていた料理人に暇を出し、代わりに初めて働きに出る少女を調理補助として雇ってイライザが料理を担当することになった。それまで卵すらゆでたこともなかったイライザだったが、料理レシピを見ながらいつ、どのタイミングで何をどれくらい入れるのかなど細かい指示が見当たらないことに不便を感じ、自分で研究を重ねてレシピ本にまとめようと決意する。新しく雇った少女アンはとても味覚と観察眼に優れていることが分かり、メキメキと能力を伸ばしていくアンをイライザは料理書執筆の片腕として扱うようになる。二人はこの作業を通して絆を深め、最終的に10年がかりとなる料理本執筆プロジェクトを進めていくが……
 
感想
イライザ・アクトンは実在の人物で、有名なビートン夫人の家政読本より15,6年も前に家庭料理の本格的なレシピ本を書きました。イライザの料理書Modern Cookery for Private Familliesは、現在の料理書で普通にやっている材料のリストアップや各レシピの調理時間などを初めて記した画期的な本だったのです。ビートン夫人はさらに豊富にイラストを加えたり、材料をレシピのトップにリストアップしたりして現在のレシピにより近くなったけれど、今の料理書の生みの親と言えるのはやはりイライザ・アクトンでしょう。
 大人気ベストセラーとなったイライザの革新的な料理書は、詩人としての野心を持っていたイライザに出版社が執筆を提案したことがきっかけで始まります。いったん肝をくくると友人知人からレシピを募り、それらを10年もかけて実験を繰り返した末にベストな調理法を見つけた実に科学的な実用本だったのです。この小説では各章タイトルに興味をそそる料理名が入っていて、イライザとアンのレシピ探求の旅を読み進めながら私も時々同じメニューを作ったり食べたりしていました。タイトルにThe langugage of foodとあるように、詩人でもあったイライザは優れたレシピを美しい詩に例え、アンはそんなイライザを慕い始めます。読んでいる側も、イライザとアンの料理の探求を通していっしょに豊かな体験をしているという気持ちになれる一冊です。
 この物語には友情の絆を深めるイライザと助手のアンがそれぞれ持っている秘密も物語のカギになっていくのですが、貧しい労働者階級のアンについてはほぼ記録がなく作者の空想で、イライザの秘密も現在では否定説もあるそうですが、その後イライザが料理書執筆を断念する危機に直面して下す決断に緊迫感が増すし、精神病院や家族の債務によって不幸に陥る女性たち、非嫡出子の行方など、ヴィクトリア時代と言えば…というネタもたくさん盛り込まれているので、歴史小説好きはぜひ読みたくなることでしょう。というわけで翻訳だしませんか~?

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