ピアス(2002.5.22著)
私の耳たぶには穴が開いている。私の年代の女性で、耳に穴を開けている人は日本ではあまり多くはないように思う。
親にもらった 体に傷をつけるなんて・・・という人もいる。 実際私も最初は少し抵抗があった。10年くらい前まではピアスではなくてイヤリングをしていた。がしかし度々片方を落としてしまう。そういう時に限って大抵お気に入りのイヤリングである。
長女は高校を卒業したその日、形成外科に行きピアスの耳にしてきた。「痛くは無かったよ」「簡単だった」と言って、穴を開けた耳たぶに軸が太めのピアスをはめて帰って来た。料金は7000円と言ったように記憶している。
ひとつ面倒なことは、開けてから1ヶ月間毎日、患部を消毒液で丁寧に拭いてやらなくてはならない。そうしないと化膿したりするらしい。
人によっては病院に行かずに友だち同士で開けたり、自分自身でやる人もいるとか。耳を氷で感覚が無くなるまで冷やして、太い 針で穴を開けるそうだが、聞いただけでもなんだか恐ろしい。
若い人の中には、耳だけでなく実にさまざまなところにピアスをつけている人がいる。鼻・おへそ・それに口の中の舌にまでピアスをしている。それも同じ場所にいくつもつける。本人がしたいようにしているのであって、誰に迷惑をかけるというものでも無いことだから自由だとは思うのだが、お洒落感覚は人それぞれなんだなと不思議に思ってしまう。ファションとは奥深い。
そんな私もアクセサリーの類には若い頃から興味がある。変わった形や綺麗な色に魅惑され買い求めたり、人から頂いたりした物が箱の中で次の出番を待っている。
高価な宝石を欲しいとはあまり思わない。きらびやかで豪華な宝石よりも、私には安価で自由度の高いアクセサリーのほうが似合っているように思う。かわいいデザインのものが多いし、素材もさまざまだからお店を見て回るだけでも楽しい。カジュアルな服装が流行りの今は、軽い感じの遊び心のあるアクセサリーがマッチするようにも感じる。そういえば昔はよくブローチをつけたものだが、最近はあまりしなくなっている。
丸顔の私は、ちょっと変化を持たせるためにもイヤリングをよくしていた。 以前、夫が海外旅行をしたおりに、白っぽい玉で出来た四角の形をしたイヤリングを買ってくれた。ところがある日、そのイヤリングを私はやはり片方だけ、知らぬ間に無くしてしまった。上品でお洒落なデザインを大変気に入っていたので、ずいぶんと悔やんだ。くれた夫にも悪い気がした。悔しくてどうにかならないかと、片方の残ったイヤリングを上手く活かして、ペンダントに加工してもらった。あまりに残念がる私を見て、「ピアスだったら無くすことがないよ」と娘がしきりに薦めてくれた。
そういう訳で、娘が行った同じ形成外科に早速行き、思い切って私も耳たぶに穴を開けることにした。大きなホッチキスのようなものでガチンと右と左を一回づつ挟まれて、それで終わり。耳のところなので音が大きく感じられ少し驚いたけれども、痛くもなく数分で済んだ。
鏡を見ると耳たぶにはすでに小さな青紫色のラピスラズリのピアスが埋め込まれていた。ピアスの軸はやはり太かった。しばらくは寝ている間もそのピアスをしておかなくてはいけないが、ピアス周りの皮膚がきれいになった後は、いろんなピアスが楽しめるという。どうした訳か、なんだか若くなったような錯覚を覚える。なんとなくルンルンの気持ち。
おかしなものである。
今でも洋服に合わせて、今日はどのピアスをつけようかなーっと思いながら、これにしよっと選んで、耳につけるその過程も楽しんでいる。
ネックレス・指輪・ブローチ・ブレスレットなど身に付けるアクセサリーはいろいろあるが、耳を飾るピアスはほとんど毎日つけている。うまく洋服やその時の雰囲気にマッチした場合、その服や私自身までをも引き立ててくれる。顔の両横でゆらゆらと揺れる、動きのあるピアスは心まで軽くしてくれるような気がするのである。