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通信障害


仕事を終えて会社を出て、iPhoneをみると「圏外」の文字。やれやれ、と冷蔵庫に余っていたハムとチーズで適当にサンドイッチを作った、というのは村上春樹であって、ぼくは村上春樹ではなくぼくなので、疲れた身体を引きずりながら中野駅まで歩いた。電源を落としてつけてを繰り返して、「検索中」を経て、「圏外」の文字へ。やれやれ。

帰宅した頃にやっと「3G」となって、docomoの通信障害があったことを知る。その時点で復旧したということが書かれていたが、いまこれを書いている23:54、「3G」のままだ。喉の痛みが激しいとき、もしかしたら一生この喉の痛みと共に過ごしていかなければならないのか、と軽めの絶望が脳裏を過ぎるが、正にそれに近い心境だ。世の中は「5G」へと加速させていくなか、ひとり「3G」の世界にいる。ぐるっと見渡す限り荒野が続いている。ぼくはひとり「3G」の世界にいる。ブラウン管テレビが落ちていて、トムとジェリーが放映されている。好きなあの子は「5G」の世界で「5G」の男と海岸線を見渡せるカフェでコーヒーを飲んでいる。ぼくはひとり「3G」の世界にいる。みたいな、そんな軽めの絶望のなかにいる。

完全なる復旧を待っている。

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