君たちがいて、私がいる
「水平線」
滝口悠生
東京23区から南に1200キロメートルの所に硫黄島という島があって、太平洋戦争で米軍と日本軍の間での激戦の末、アメリカ兵が星条旗を立てるあの有名な写真が示す通り、かつてアメリカ軍に占領された。島民は疎開したが、島に残った兵士、および、軍属として徴用され島に残された島民の多くが戦闘によって死亡した。1968年にアメリカから返還されたが、以来島は自衛隊が管理し、東京都が春のお彼岸に行っている、旧島民とその親族向けの墓参事業を除いては一般人の入島は禁止され