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三崎にて ①

2024年10月26日
神奈川県 三浦市 三崎へ行った日のこと



往路



始まりは大崎から


10月26日 07:05


深夜バスに乗って辿り着いたのは
東京、大崎のバスターミナル


今日の目的地は神奈川県
『芋煮ロックフェス』という
音楽イベントに行くのが 1番の目的である

目的地までの路線は品川駅から電車に乗る
大崎駅から品川駅までは山手線内回りで一駅

ほんの少しの距離なので、朝の街を歩くことにする



大崎西バスターミナルを後にする



昨晩のこと
名古屋、新栄のHUNNY×BUNNYで
ショーウエムラさんと藤山拓さんのライブだった



今年はショーウエムラさんによく会えた
藤山さんもライブでいっぱい歌が聴けた

たぶん、すぐにまた会う気もする

予定が思いもかけずに合ったなら
それはそれで嬉しい



何でもそうかもしれないが
良いことも悪いことも続くときは続く
タイミングってあるんだろうなぁと思う





ライブ終わりの足で名駅から深夜バス
いつものルートと言われれば いつものルートである



大崎からビルの谷間を少し歩く
品川の駅西一帯は、坂が地味に多い



昨晩ちょっと飲みすぎたのと
深夜バスでの寝起きがしんどいのと
これから1日野外でイベントがあるので

ちょっとだけズルしちゃおう

品川駅まで何キロもないのだが
歩けば10分くらいはかかるだろう
道端の「LUUP」を3分ほど使う


電動キックボードは
体に負担がないからいい


不思議なもので
楽をする時の言い訳ほど
スルスルと出てくる


人間とは度しがたいものである



品川のホーム

ここからは電車一本で
終点『三崎口駅』まで行く

土曜日の朝でも人が多い 流石東京


07:35 赤い電車がやってくる




電車は多摩川を渡り神奈川県へ入る
車窓を流れていくベッドタウン
人口が多いんだろうなぁと ぼんやり思う




1時間ほどの間に
景色は郊外へと色を映していく




線路は小高い丘を走る
進行方向の左手には宅地が広がり
先には海と半島の東岸が見えている



この景色は、初めて見る気がしない



映画で見たような光景…



いや「ような」じゃなく
劇場で見たその光景、そのものである


線路は半島のカーブに沿って
先端へ向かっていく


ドアの窓に近づき海方面
映画『この日々が凪いだら』の景色の中を行く








三崎口駅


次が終点のためだろうか
『三浦海岸駅』では多くの乗客が降りていく
乗客の減った電車は緩やかに発進する

次で降りるためドアの前に立ち 外を眺める


畑や森の緑が多く目に入る
高低差のある丘陵地が広がっており
大きな建物が少ないためか見晴らしが良い

橋脚に差し掛かる
下には住宅の屋根が見える

「(随分と高いところを走っているなぁ)」

宅地と共に広がる 黒い土の畑
農作物が良く育ちそうな土の色をしている
この辺はみな、この色の畑なのだろうか


速度が落ち、橋脚は駅へと続く
そこは終点 『三崎口駅』だった



ホーム端からの1枚
奥にある駅舎寄りの風景は、映画にも登場する
『三崎マグロ駅』という圧の強い洒落
ホームにあった



トイレを済ませて駅を出る


土産物屋が駅舎に併設されている
干物などの海産物などが見える
だが残念ながら店は開店前だ


駅前ロータリーには、遠足なのか
ワチャワチャと数人の児童たちの姿

…?

なにか…違和感がある…なんだろうな


遠足にしては妙に小綺麗な服装
小綺麗な理由は、制服姿だからか


遠足ならば、もっぱら運動着だろうし
少なくとも制服は着ない気がする


全員が同じ学年という風には見えないし
通学って感じでもない


だが、なんというか
とても既知に富んでいるというか
言葉を選ばなければ、そう

みんな賢そう(ボキャブラリーが壊滅的)

う~ん…なんか…片田舎の風景にしては
存在感がありすぎて違和感ある…

引率の大人も どことなく教師っぽくないし
教員や親御さんと言うより…なんか…
マネージャーみたいな…


ま、いいか


部外者の中年男性が児童に声をかけるのは
普通に通報案件だと感知できるので
とりあえず考えるのをやめる



大きな周辺地図 兼 バス路線の案内書図
駅舎と駅前ロータリー




駅前のロータリーは
雨をしのげるバス停になっている


フェスの会場近くまでは
特別に運行されるシャトルバスではなく
通常運行のバスが出ているようだ


今の時刻を確認すると8時50分すぎ
イベントの開場は11時から


もう一度 時間を見る
いま9時前である


うん、早すぎますね


このままバスで移動したら
開場前に会場で待ちぼうけしてしまう
漁港だから鮮魚市場とかあるだうけども


ここから会場までの
距離や所用時間を調べてみる


車なら13分
歩くとこんな感じ


会場までの距離は5~6キロ
歩けば1時間半である

普通に考えれば
歩く距離ではない


少し迷うものの
すぐに足は動き出す


このあたりを訪れるのは初めてだが
見て歩きたい理由があった


ずっと憧れていた土地と言ってもいいかもしれない







ヨコハマ買い出し紀行



大学生になって1人暮らしを始めたての頃
親しく遊ぶ友人もいない根暗な性分の私は
授業のない日は本屋で時間を潰したりしていた

『ヨコハマ買い出し紀行』は
その頃に出会った漫画である


物語の「あらまし」を簡単に書いておこう


温暖化で海面が上昇し、沿岸都市は水没
文明がやや後退してきた世界で
「ロボットの人」である主人公は
カフェを営みながら周囲の人々と交流していく

…平たく言えば、ただそれだけの内容である

文明の衰退は随所で見られるものの
描かれる世界に悲壮感はない
むしろ、カフェを営む主人公の
のどかすぎる日常や旅行記が徒然と描かれる


物語全体として
激しいバトルなんて皆無だし
ドラマチックな展開も そう多くはない
ただ、主人公を取り巻く 周囲との距離感や
その描かれ方が、とりわけ心地いい

主人公は「ロボットの人」ではあるものの
登場する人々は、性格や個性のある1人の「人間」として接し
その時代を一緒に生きている

思考の距離感 触れ合いの温度
時間の愛おしさを丁寧に撫でるような



そんな漫画


「見て、歩いて、喜ぶもの」
というワードが作中にある


自身の、日々の発見を
「見て、歩いて、喜ぶ」ことは
この漫画がきっかけな気もする

とても好きな漫画である


そんな『ヨコハマ買い出し紀行』の
主な舞台がここ、三浦半島なのである


見て歩きたかった理由は
単純に、それに尽きる





緑の大地


地図確認すれば ほぼ1本道

『三崎口駅』から
目的地の『三崎港』まで、距離は長いが
迷うこともなさそう 歩み進めことにする



駅を出るとすぐに
緩やかに上り坂であり、道すがら
民家や農産物の販売所などが点在する

道路のわきには、のどかな畑が広がる


畑では何を育てているのかな?
観察してみると、野菜だけではないようだ


この葉っぱと香りは…

マリーゴールドのように見えるけど
花がついていないから何とも言えない


う~ん…


マリーゴールドは冬越しできないはず
この辺は暖かいからで越冬出来るのかな…?



見渡す一帯がこの植物の圃場である



少し考えてみる


ひょっとしたら「緑肥」か?


収穫を終えた後の耕作地では
計画的に肥料としての植物が育成されることがある
大きく育てられ、最終的に畑へ漉き込まれる
植物は畑の土の中で分解されて
肥沃な土壌となるのだ

有名どころに、レンゲや菜の花などがあるが
これらを総じて「緑肥」と呼ぶ

なるほどこれだけ大きな株なら
よい肥料にはなりそうだ


誰も答えを出してはくれないが
恐らくは正解だろう

農家さんは畑での育成の時間を無駄にしないのだ
誰とは無しに 1人で感心してみる



こちらは大根のようだ

この地方、三浦大根が有名な郷土野菜だが
こちらの畑の大根もその品種だろうか…

さすがに葉っぱだけでは判別できない
大根なのは間違いないのだけれど


猛禽類型の鳥よけを仰ぎ見つつ道を進む




小網代の森



分岐


駅から道をまっすぐ、20分ほど歩くと分岐が現れる
交差点の青看板には『小網代の森』の文字


ひょっとして、ここは…!


先述した漫画の中には
「ミサゴ」という不思議な存在のいる
「鬱蒼とした森と入り江」が何度か登場する

そのモデルとなった場所かもしれない
寄ってみよう


ルート確認をすると
その森はかなり広大な様子
本来の半島の中央を行く最短ルートではなく
半島の西側を大きく回り込むような道へそれる

距離は1.2キロ
所要時間も20分ほど増えてしまう


自問する

「どうする?」

「いやぁ、迷うことないでしょう」

「ですよね」

回答は早かった

行かないで後悔するより、行って後悔した方がいい
ただまぁ、後悔なんてする気は、さらさらないのだけれど

遠回りの道を行こう
「見て 歩いて 喜ぶもの」の言葉が後押しする


道を右に折れ
急坂のアスファルトの道を下ると
森の入口が待ち構えていた




「こあじろのもり」と読む


全体地図
南北が逆さだが、その広さがわかりやすい
鬱蒼とした森の中に延びる散策路
構造がかなりしっかりしていることに驚く


散策路を一歩踏み出そうとするも
大きな疑問が沸き立つ

「ここは…
 ここは、一体どんな経緯で、こうなってる?

 最近の一般的な森林公園なんかでは
 路面が崩れていたり、材が腐っていたり
 そんな場面を見かけることもあると言うのに
 ここは、整備が行き届きすぎている

 …というか、この散策路にしても
 全く足元がぐらつくこともない

 どうしてこうなってる?
 安心感より、ちょっと怖いが勝るな」


瞬間的に良くわからない不安に刈られ
少しだけここの歴史を調べてみることにした
はやる気持ちを抑えスマホを開く


歴史

昭和40年代、この森の一帯は
都市計画において市街地化区域に指定されたのち
ゴルフ場の開発計画まで立たてられていたようだ

平成に入り
市民団体による保全の組織が立ち上がる
この団体が母体となり、NPO法人が発足される
現在もこの法人によって、保全活動が継続されている

平成7年 県が、三浦市と業者へ「小網代の森」の保全方針を提示する

平成9年 県が基金を使い、緑地の買取を開始する

平成17年 国土交通大臣によって「小網代の森」は
近郊緑地保全区域に指定される

平成22年 実に15年の月日をかけ
県は、保全に必要な用地確保を完了させる

さらに…そこから今日に至るまでに
幾度か手が加えられ、散策路や道案内の標識などが整備された


※参照 小網代の森について - 神奈川県ホームページ
(https://www.pref.kanagawa.jp/docs/d2t/kankyo/p820028.html)


「小網代の森」とは
川、谷、森林、湿地、干潟、海に至るまで
関東地方では唯一、連続した自然環境の集水域で
日本でも現存する数少ない生態系の形成区域…らしい


スマホの画面を閉じ
森に先へ延びる散策路を、改めて見てみる


そんな希少な場所なの…

フラッと来ていい場所だった?

いや、しかしこれは僥倖だな

散策路は入り江まで続いているとのことだし

ゆっくり見て回ろう
少し長い寄り道になりそうだ


この森を1.2キロ歩きます


ちなみに、あとから確認したところ
やっぱりここは
『ヨコハマ買い出し紀行』の作中に登場する
ミサゴのいる森のモデルらしかった






散策路


森の入口は急坂を下った先だったが
そこからさらに散策路は階段の下りが続いている

深い谷の先 道の両側は、はるか頭上まで緑が茂る

1本1本の木々はそこまで太い大木ではないが
地形と立ち位置から まるで密林の奥へきたかのような感覚
緑の穴に落ちたように錯覚してしまいそうだ

散策路は地面から高い位置で続いており
直接地面へは降りられない造りになっている
原生生態を守る配慮だろう


小川に沿って、路が続く
道幅の広さはほぼ一定
歩道の素材は、耐久性の強いプラスチック
安心して歩ける路面に だんだん慣れてきた


植生はシダが多いな…と思えば解説標識がある


なるほど




しかし、あまり虫を見かけない
夏場であれば昆虫、甲虫、羽虫の類は
森に溢れていただろう


今は、その時期が過ぎてしまったようだ

もう10月
暑さでなく涼やかな風…というより
しっかり乾いた秋風が吹き始めている


小川の水音が心地よい
あとでゆっくり見るため
道にある説明を写真に撮る
1日じっくりと観察したいところだが
限りある人の時間は無情である



歩きだしてから7、8分
1/3くらいは進んだろうか
谷間の区間はゆるやかな下りが続いたが
次第に平地が増え、湿地が現れる

まんなか湿地
名前もゆるやかで好き
湿地にも植生によって特性が違うようだ


さらに5分ばかり進むと
森が拓けてススキの原となる

地図は南北反転する
あと少しで入り江が見えるのかな
湿地であっても
足場の安定感は健在である
トンボもたくさんの種類が見られそう
穂が揺れる 美しい秋


やなぎテラスから5分
小網代湾を望める地点へきた

おや、地図がまた南北反転している
北西にも出入口があるようだ
(地図では右下)
汽水域
カニにはよい生活圏
テラスからの眺め
入り江は少し遠く感じる


東から入ってきた、この保全地区だが
南西へ抜ければ、まもなく終わりとなる

湾を右手に道は低い峠へ続く

少しだけ視点が高くなり入り江が見渡せる
この光景は、漫画のまま
訪れることができて良かった



周囲は山の小道といった風景に変わり
スズメバチやヘビの注意看板もある

森の起点のひとつ
出入口は最初の場所含めて3ヶ所
アカテガニの生態について

道はカーブしていて、森の出口には
目印となる公衆トイレが見える

木々が途切れると右手に生える木に
ピンクの花が咲いている

フヨウが咲いていた
まだこれから咲き誇るだろう
大きな花弁は 何も語らない美しさ
振り替えれば、その先に「小網代の森」
素晴らしい場所だった


時計を見る もうすぐ10時

目的地までゆっくり歩いても50分ほど

もう少しだけ寄り道しても大丈夫かな







今回はここまで


2025年となりました
なるべく良い年にしたいです
みなさまも、どうか健やかに✨️


次回、往路の続きからです



フェス会場についてからのことは
ダラダラと過ごしていましたので
簡単になるかなぁと思います


例によって
まだなんも書けてませんが


ひとつ、よろしくどうぞ
また来週…



三崎には美しい場所が多い






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