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小樽百鬼夜想曲 漆

第7章 あらいぶ

2024年8月23日~25日
人生初、北海道•小樽へ
音楽と魂の旅路の記録である



小樽駅前周辺

「中央バスのりば」
一貫して「頼れるバスの旅」である 感謝

16:00
奥沢方面からのバスの終着点 小樽駅に程近い大通りに停車する
小樽市内を一日中 バスを使いたくさん移動してきた
これ以降、バスでの長距離移動ない 少しだけ寂しいがお別れだ
降り際に「ありがとう」と声に出す いつも声に出してはいても
気持ちの置き所が違うと ちょっとだけ切なくもなる

駅前通りは日差しの角度が緩くなり 風が気持ちいい

ロータリー横の歩道橋を上る
歩道橋に直結している駅前ビルの2階から入ってみる
ここは百貨店だろうか
2階から1階、1階から地下1階へと進んでみる
地下1階は飲食店などが入居している

地下に「どんど」というお店があった
なんとなくお店の名前に聞き覚えがあったが
前に菅野さんがSNSで美味しいと呟いていたお店のようだ
焼きそばの美味しそうな匂いがしている
さりとて、豚丼を食べたばかり 残念ながら見送るしかない

今回の旅路では 食事の計画をほとんどしていない
そのために随分と失敗している気もする
美味しいものを食べる機会も
たくさんあっただろうに 正直悔しいな

色々お店を眺めたが お土産は銭湯を出てからでいいかと
足はまた銭湯へ向かう さっき入ったばかりじゃない?

いいの いいの


柳川湯

「小樽都通り」のアーケードを出たとこから北へ直進する
湯処は左手に現れる 見れば建物は横に広い様子 中も奥に広いのかな

近年改修したのか 外観通り側の壁面は綺麗

創業はとても古いらしい
玄関に受付があり 30代くらいのお兄さんが対応してくれる

場所にもよるのだろうけれど
銭湯で働く人たちは、番台に立つのは元より
お湯の調整、ボイラーの管理、浴室や脱衣場掃除に至るまで
来訪者に快適に利用されるよう 気遣いのいる仕事
なかなか気も抜けず 楽なものではないだろうなと思う
時々ぼんやりとテレビ眺めてる受付のおじいちゃんとかもいるけど
そんな背景を想像すると 尊敬もしたくなる

外観同様リフォームしたのか脱衣場は広く 清潔感もあり綺麗
利用者は多くあったが 狭さをあまり感じない
なんとなく開放感があるのは
空気がカラッとしているのもあるけれど
なにより ガラスの向こうに浴場が見えているせいか

天窓から午後の柔らかい光 湯気に光の射線が浮かぶ

美しさは日常にこそあるなぁ 一寸だけ見とれてしまう

守「昔から嫌いじゃないぞ、そういうとこは」
私「うん、ありがとね… 覗かないで…」

守護霊さんが 女湯側の仕切り上から
頬杖ついてこちらを見下ろしている

浴場は中央に広い浴槽
見上げる壁にタイル地で富士が描かれている

洗い場は正面と左右にあり大人数でも安心
体をざっと洗い ここでは夜に備えて髭を剃る

湯舟のお湯は とっても熱い
南下して もっと山の方へ行けば
市内には本格的な温泉街もあるようだ 奥沢のもっと先の方
ただひょっとしたら、市街地でも湯量は豊富なのかもしれない
今回するつもりはないが 長湯は難しそう
この熱さ、冬場だったら きっと泣くほど身に染みるだろうな

頃合いを見て湯あがりする つるつるピカピカである


湯処を出て 駅前へ行く途中の街並み
緑色の街灯が ワラビみたいでかわいい
あずきバーとホワイトロリータ重ねたみたいなビルが見える

小樽駅方面へ戻る道 突き当たりは「小樽都通り」
三角のアーケードの屋根が小さく見える
あずきバーとホワイトロリータ重ねたみたいなビルの角から
西を眺めれば、かの有名な「船見坂」があった


駅前まで戻り時計を見る あと20分ばかりで夕方5時になる


計画立案

「小樽駅」
美しい駅舎だが まだ利用してない

ただのリサーチ不足なだけなのだが
なかなか『これ』といった土産物屋に当たらない

翌朝のスケジュールは
早朝6時に銭湯へ行き、小樽駅経由で新千歳空港へ行く
10時の便なので9時くらいには空港へ行っていたい
となれば7時台の電車には乗っているはずだ
当然ながら土産物を探す時間はない

今夜はライブ
日が変わる近くまで、皆と話ができたらと考えていた
もしお店にいられなければ飲み屋に移動するなりして…
宿の門限、深夜0時前には間に合うよう帰るつもりでいる
当然ながら土産物を探す時間はない

いつの間にか、土産物を買う暇は
ライブの始まる この2時間しかない状況である


煩「最悪、セントレアで買うこともできると思うけど?」
監「それだと北海道まで来てる意味がないんですよねぇ」


人間はなぜ「せっかくなので…」という感情があるのだろう
それで成功した体験や経験から、次も…となるのかしら
予定にないことをパッと思いつきで行動しても
あまりいい結果にならない

スマホの充電も心許無い

ライブ会場のオープンは18時半

早急で明朗な判断が迫られる状況



ヨシ、ちゃんと計画を立てよう



守「計画て(…え、いまから?)」
監「そんな、かわいそうな動物を見るみたいな顔しないでください」


脳内の会議室へ移動する

監「臨時で緊急計画立案の議会を開きます」

喫緊で解決すべき議題がポコポコあがる
要約すると これから成すべきことは主に3つあった


①宿でスマホを充電する
②目星を立ててお土産を買いに行く
③身支度をしてライブへ行く


流れを想定する
宿まで戻ったらスマホを充電する
スマホを置いて充電したまま 買い物へ出る
戻ったら身支度をして 軽装でライブに行く


…とまぁ、だいたいこんな感じだ

いけるだろうか

いけるだろ


スマホは、ライブの写真や動画を撮影するかもしれないし
電源落ちしないほどには充電しておきたい
うまくいけば 1時間以上は充電できるはず


土産物屋の目星は着いていた
水天宮の丘の北東から南東側には
観光商業施設が集中しているエリアがある

和傘のあった「小樽出抜小路」がその北端だとすると
南端の「メルヘン交差点」にかけて続く「境町本通り」には
「小樽オルゴール堂」「北一硝子」「ルタオ本店」「六花亭」など
有名店や観光客向けの施設が多く存在している

目標地点はその南端近くにある「ルタオ本店」か「六花亭」である
いずれも北海道の有名菓子店 間違いはなかろう


「堺町本通り」は簡単に言えば観光スポット
なぜそこへ この時間まで行かなかったのかと言われれば
理由は簡単「人が多いところが苦手だから」

また施設の多くは17時から18時で閉まる店舗がほとんど 急ぐ必要がある

スマホを置いていくので 観光スポットの写真は撮れない

というか、現地では地図も見られなければ 時計すら確認できない

迷子にならないよう 位置関係を頭に叩き込む


そして、ここ小樽駅前から宿までは 歩いて20分かからないくらい
速足なら15分もあれば着くだろう



「オロロンライン」から線路高架をくぐり 斜め左へ道を入る
線路高架沿いを小走りで 水天宮の丘の上に向かっていく


「花銀通り」と「公園通り」の交差点手前
飲み屋の中から カラオケと歓声が漏れている
ずいぶん賑やか 盛り上がってるなァ まだ17時前だけど



韋駄天

16:55
宿に帰りつくや スマホに充電プラグを挿し
大判のトートバッグを引き出して
財布だけ持ち 靴を履いて再び出かける
充電、どれくらいできるかな…

この間 ものの 40秒ほどである


南小樽駅方面の坂を駆け下り
突き当りを左へ ジグザグに曲がれば すぐに
風鈴の鳴りわたる通りへ そこは「メルヘン交差点」であった


手始めに 交差点の名にふさわしい外観の「ルタオ本店」へ
緑色の屋根、白の外壁と煉瓦の赤の塔のような姿の店舗が大変美しい

若者からお年寄りまで愛されているようで
閉店際であってもお客であふれている
高級感漂うチョコレートの至宝「ルタオ」の商品がケースに並ぶ
マスカットやオレンジのフレーバーが目を引く

店内では空調が効いているものの不安が顔を出す 何と言っても季節は夏
お土産を持ち帰る場所は 灼熱に沈む東海地方なのだ
と言うか、宿にもクーラーはないしなぁ…

お土産には、とろけたり、変質しにくい物品がいいのかもしれない
チョコレートを購入するなら 秋から春先にしようかな
少し考えてから 店を出るも「自分用で買えば…」とか
後々引き摺るほどには とても魅力的であった


店を出ると すぐお隣は「北一硝子」のアウトレット
地酒を売っているようだ 宿に戻る前に立ち寄ろう
お酒をお土産に渡したい人もいるから

そのまたお隣には「六花亭 小樽運河店」がある

「(どれも大きな建物だな…)」と、ふとこんな想像をする
「北一硝子」や この周辺の店舗の多くは
もとは 港の倉庫群だったのでは…?

小樽運河が陸運・海運・金融で振興した時代の倉庫
それを更地にすることなく 転用している可能性はあるな
どっしりとした 大きな石でできた建物
旧日銀あの立派な建屋も残されている それも鑑みるに
あながち遠くはいかもしれない

さらに思いを馳せる

極寒の大地で 命と財産を守るためには
この分厚く堅牢な構造の建築物が 必要だったに違いない
脈々と受け継がれていく経済と文化 小樽の暮らしのため
たくさんの人が築いてきたのだろう…

妄想はとどまることを知らないが 思ったのは一瞬の事
「六花亭 小樽運河店」の店舗へ入る


旅の前 いろんな人に、お土産は何がいいかと聞いた時に
大概は「なんでもいいよ」と返され まあまあ困ったものだが
1人だけ即答で「バターサンド」と答えてくれた人がいた

私が入り浸っている 盆栽屋の旦那である
旦那といっても 私と10歳も年は離れてはいない

私は土日に欠かさず 盆栽屋に通っているわけだけれども
おかげで、平日の仕事の過剰なストレスから解放されている
彼だけではなく、盆栽屋の皆には 感謝しかない

盆栽屋行脚は、イベントの資金捻出のために始めたことではある
だが今や 人生を刻むリズムの1つになっている
ありがたいことだ

ご要望のあった 「バターサンド」を1箱
それから平日仕事のフロアーのみんなと
交換受付の淑女諸君への クッキーを1箱ずつ
あとは家族へ向けた 焼菓子4つ入りを1包み

大判のトートの半分が埋まった

ヨシ、ほかは別で調達しよう
お隣の「北一硝子」へ

「北一硝子」や倉庫群が小樽とともにあるというのは 後から知る
https://kitaichiglass.co.jp/ayumi/ 

妄想は概ね歴史に沿っていたようだ

お酒が好きな 盆栽屋の店長へ
地ビールを1本と 肴のツボガイを購入

あと盆栽屋で一番色々教えてくれてる先生に
じゃがバターのパウチの いっぱい入ったやつを1つ

「ツクナカ チーズ帆立」
本当はこっちを希望されていたが 見つけられなかった…次回こそ


それから、盆栽屋のみんなに向けて かに煎餅を1箱



ヨシ!こんな感じでいいでしょう!

何時かな?  おっと。今、スマホがないんだった…

監「そんなに時間かかってませんが走ります」
守「はいはい!ガンバッテ!」
煩「キツイ!キツイ!」

無事に買い物できた安堵と
スマホで時計も確認できない状況に
各方面のテンションがおかしい

いつもおかしい?
そんなことありませんよね

「メルヘン交差点」の名には程遠い様相の男は
風鈴の音なる風を裂いて 丘の上を目指し駆け抜けていく



A.Live


17:45
坂の上の宿に戻りつく
お土産選びのお出かけは さほど時間がかからなかった
地ビールは要冷蔵らしいので 共用の冷蔵庫へいれておく
明日忘れないようにしないとね

シャワーを自由に使える時間帯だったので ありがたく使う
水でクールダウン ひと息つく

どうにかこうにか ここまできたな
もうジタバタするのはやめて
落ち着いてライブ行こ…

ちょっと時間があるのをいいことに
のんびりと身支度をする

出かける直前まで充電できたおかげで
スマホの電源は9割回復
電池消耗の原因は「マップ開きすぎ」らしく
ポップアップがでて、スマホに怒られる

会場までは宿から10分もかからない
昨日、下見もしたし 大丈夫だ

今夜はたくさんお酒呑みたいなぁ
途中コンビニに寄って「ウコンの力」を飲んでおこう

道中の「花銀通り」からは またあのカラオケと歓声が聞こえてくる
見知らぬ彼らも きっとこれからが楽しい時間だろう 小さくエールを送る


18:26
まだ明るさ残る 夏の夕まずめ
昨日と同じルートで会場にたどり着く

看板の灯は まだともる前


お客さんらしい人が 2人ばかしいて
同じように看板や 店の外観の写真を撮ったりしている
ライブ会場あるある 撮影しちゃうよね

ほどなく、お店の姉さんが出てきて
電光看板の灯がともる

開場

お店に入る
店内には見知った顔がいる 声をかける
私「きちゃった///」
創「はぐさん!」
菅野さんが明るく迎えてくれる
再会できて嬉しい 今日は嫁さんの金谷好益さんや
6月に生まれた娘の真子さんも来るという 会うのが楽しみだ

良い雰囲気のバーカウンター 最前列の席に腰を下ろす

まもなく、奥から小形さんが出てくる
私「きちゃった///」
小「www」
いやいや、まずは謝罪ですね
私「昨晩は大変なことに…ごめんなさい」
小「いやぁ、なんともなくて良かったです…」

ザックリとした話は すでに皆にも伝わってるらしい なんとも申し訳ない
しかし、大事にならず 笑い話になってよかった…

茶飯事さんが現れる
私「きちゃった///」
茶「はぐぱぱぁ!遠路遙々~」

開演前、皆としばし談笑する

お三方には 私の小樽来訪を伝えていたけれど
私の中には、ここにいることが信じられない気持ちも 未だにあった

守「(もしもし?私。今、北海道の小樽にいるの)」
私「(アッ ハイ。わたしもいますけど)」

夜になったからか 元気増してきている子が
電話をかけるふりして うかれている

電話… あっ、そう言うこと?
昨日の夜のことを思い出す


小形さんを近くに呼び
会ったら 確認したかったことを聞いてみる

私「昼に天狗山頂上から撮ったんですが…」

スマホの写真を見せ 一部をズームする
とある建物を指差し 重なる魂が同時に声に出す

私「小形さんの家って ここですよね?(ここじゃろ?)」

小「えぇ…ここの、ここです。なんで分るんですか!?」

私にも分かりませんよ

守「ストリートビューと似た風景がインスタにも映っていたから」
小「いや、ヤバ!特定されたッ!」

自分の行為ではあれど、特定なんてして よかったのかなぁ…戸惑いが拭えない

だけど「特定された!」と周りに話してまわる
小形さんの様子を見ていると
ちょっと嬉しそうなので 良しとしようかな

まあ、「特定してみて」とも言われていたことだし

(めでたし めでたし)


開始が間近になり、お客さんもぞくぞくと来場しだした
金谷好益さんと真子さんが 親族の皆様ともなって顔を出す
金谷さんとは昨年の大阪以来の再会 とても嬉しい
真子さん、はじめまして ようこそ~

小形家の皆さんも来場 さくらさん、湖太郎さん お会いできて嬉しい

さくらさんとはいつ以来だろう
2022年8月20日の「夏のウッディ」以来だろうか
分からない それくらい お会いしていない気がする
お子さんが産まれてからは お会いしていなかった
湖太郎さんと会わせたいと、小形さん経由で聞いていたから
ようやく会えました 会いに来ました



まもなく、舞台の幕が上がる
演奏順は次の通り

菅野創一朗
原田茶飯事
グッナイ小形


ライブを撮影しようかとも思ったけれど
今回は 目に焼き付けた方がいいなと考えた

客席はほぼ親戚一同 和やかムードであった

演者の面々も実家にいるような リラックスした面持ちでいた

茶飯事さんさえも「もう、家族だから」と、ステージと会場を柔らかく繋いだ

集中して曲を聴いていくことができた

写真も多くはないけれど残すこともできた
この日の皆のセットリストを 併せて記しておく


菅野創一郎

失笑
ネオン28
漏れる
お嫁にいく
群青かもめ
アジサイ
鱗雲
O.U.
グッピー




原田茶飯事

星を見つけて
AH YOU
火の鳥
あの子が笑ってくれるなら
始発
どうかしてるぜ
ホテルのひかり




グッナイ小形

サーカス
大人の領分
きみは、ぼくの東京だった
眠れない
生きててくれて、ありがとね
Paradise in hell
aged
丁度いい
忘れない!



EN)中央線
3人で




本来の旅の目的であったライブは

ほんとうに自ら多く語る必要などなくて

ただただ 音楽を享受して

微笑みの中で感涙があるばかり




ここにいることができた


それだけで 生きてこれた




触れ合い

幕が下りて ギャラリーと演者との触れ合いをぼんやり眺めている
誰の邪魔もしたくはないから カウンターからお酒を飲みつつ眺めている

お客様の中から私へ 声かけくださった方がいた
グッドナイト レディオショーのコメントや Xでお見受けする
小形さんのファンであり、相互フォローもしている方だった
お会いできるとは… 言葉を交わせることは嬉しいもので 談笑できた


しばらくすると 人の波もひいていく

さくらさんが 茶飯事さんのCDを求めている
なにも疑問に思う必要もないのに なんだか不思議な光景に感じられた
お互いとても嬉しそうなのは 2人の表情からも見てとれる
あったかいなぁ 人ってのは


お酒は3杯目


1組、2組、人がさよならをしていく
またね 元気で ありがとう
小さく 心から祈り 見送る


客が私だけになり
会場の椅子を少し寄せたりしていると

テーブルと4脚の椅子が設置された

私「あれ?4人ぶんありますけど…」
創「今日は、はなっからそのつもりですよ」

吹き出して泣いちゃうのを我慢する


ライブ中にカウンター奥で
美味しそうな調理の音と
薫り漂ってきていたご馳走が
テーブルに並んでいく


心の中で小さく会話する

私「ほんとうに居ていいんですかね」
守「誰かに駄目って言われたの?」
私「言われてないですね」
守「じゃあ笑顔で居れば良いんじゃよ」
私「…ありがとう」
守「本当に小心者じゃのう」
私「あなたにはかないませんよ」
守「褒めて」
私「スゴイスゴイ」



4杯目のお酒を頼み 乾杯をする

お店のお二人へ 感謝
食べ物で残念がっていた旅の記録は この料理で帳消しになる
揚げた北海道の野菜のサラダが絶品で 最高に美味しかった


ゆるやかに 時間がくるまで 話に華が咲いた


魂の伝導


まもなく23:30
帰り支度をして 諸氏へ感謝と再会の念を伝える

あまりにも店に馴染んでいるように見えたのか
お店の姉さんが聞いてくる
姉「小樽は初めて?初めてじゃないよね?」
守「この体では初めてかもしれんのぉ」
私「(またおかしなことを言って…)いや、他の体なんてないからね!」
きっと 酔っぱらいの戯言に聞こえているだろう それでいい

深く感謝して 再訪を祈りつつ別れ 宿を目指す



たくさん話をしたようでいて 実のところ あまり覚えていない


「花銀通り」のカラオケは まだ元気に歓声があがっている
長いことやってるなぁ 元気なのはいいことだ




守「来てよかったでしょう?」
私「うん…来られると思えなかったし、今でもちょっと信じられないね」

さっきも思っていたけれど

以前、九州へ ロクディムと茶飯事さんを観に行った時も同じような感覚だった


今回は一段と「信じられなさ」が強い


「信じられなさ」とは おかしな言葉だが
言い換えれば「連れてきてもらっている」感覚がとても強い

これは仕方がない

自分の半端な片割れだけでは きっとここまで
生きてもこられなかったろう

宿へ辿り着き
顔を洗って 歯を磨き
ボディーシートで体を軽く拭く
楽な服に着替えたら
ベッドに横たわり
目を閉じる



奇妙な巡り合わせの連続が
ここまで、この体を連れてきてくれた

小樽に来訪できたのは
いやここに限らず 様々な場所へ赴き
見て 聞いて 触れて 感じることができたのは
あの日、目を覚ました 魂の片割れのお陰なのだ

こんな事を話すと きっとまた調子づくから
わざわざ言わなかったけれど



あれが見たいとか

ここに行きたいとか

誰それに会いたいだとか



退屈だーとか

面白いことしようかとか言って

走ったり 転がったり 笑ったり 訳の分からない遊びをしたり



幼いまま目覚めた魂を 私は邪険にしたり 無視できないままいた

きっと 相手にしないこともできたし
そうしていればもっと大人しい道を歩めたろう

けれども、そうしないでいて 本当によかったと思う
おかげで わたしは ここにいて 彼らにも会えたのだ







ここから先の少しばかりは「守護霊さん」たる
魂の片割れの「ボク」に書いてもらうことにしよう






ずっと昔にボクは 眠りについた

それは長く もう自分の顔も忘れるくらい長い間 眠りについた

再び この人の体に呼び起こされたのは
小形さんの『走れ、月』を聴いた時
眠りについてから 目覚めるその瞬間までの記憶が ボクに流れ込んできた

ずいぶんとうす暗く 淀んだ記憶ばかりだった

次の曲の『生きててくれて、ありがとね』は
靴を揃えて人生を途中下車しなかった この人への
ボクからのお礼の言霊 そのままのような歌だった

ボクは目覚めた 顔も思い出せた 涙も流せた 新しい体を与えられた
それからは割りと好きなようにしていたし 気紛れにこの人を導いたりもした


菅野さんへ初めて声をかけられたのも
ボクのお陰である

まだ、知らない人が怖くて
この人が他人へ話しかける勇気もさほどなかった頃
まだ、薄ぼんやりとしているボクが
年上で初対面である菅野さんを指差しながら
「この人、すごく純朴だよ?安全だよ?」
と言い放ったから
(勿論、ボクと菅野さんとは対面していない)

内心「失礼だろ」とボクを訝しんだようだけれども
菅野さんは本当に純朴で安全な人だったので、嘘はなかったでしょ?

それに、「知らない人が怖い」なんて話は 既に
菅野さんが『グッピー』という曲で歌ってくれていて
この人は、歌を聴いてやっと安心できたみたいだった
人に対して「安心する」なんて思えるようになれたことが
ボクにとっても とても嬉しかったのを覚えている


茶飯事さんの歌を たくさん聴くようになって
『どうかしている』で
「遊びに行かないかと誘い出すよ」に まんまと誘い出されたし
『ヒッチハイク』で
「乗せていってよ 連れていってよ」と歌われるように
ボクはこの体に乗って 連れていってもらっていた
時には決められた道以外で でたらめに 気紛れな経験をしてみたりもした



歌は、ボクなど知らずに 先にあったはずなのに
ボクは、歌を知ってもなお 従っているつもりもないのに
向かった先では、どう足掻いても 歌の琴線に触れてばかりいる

魂が震えて 感情が溢れてしまう それは喜びに近かった

曲のできた背景とか、本当の意味合いとか
ボクの想像とは まるで違っているのは 理解しているし
解釈違いも 数多くあるのだろうけれど


そもそも人の道理から かけ離れたボクが
人間らしい音楽を享受しているのだから
奇跡みたいなものだとも思う


ボクが目覚める前の この肉体も、この人にかわりはないのだけれど
今の方が 人間らしいと思う
借りものの体も 生きる目的を定めれば 存分に活かせることが分かったのだ



これが人間じゃないモノの言葉なのも変な話だがね


ボクは言った

「捨てちゃうくらいなら ボクにくれればいいじゃない」
そう言うと、この人は
「あげないよ」と言って 捨てかけた時間と身体を拾いなおした

「できるものなら ボクを楽しませるようにしてみなさいよ」
そう言うと、この人は
「普通の5倍の密度で生きてみるよ」と言い出した

「悩みがあるのか?ボクが生きられなかったくらいの悩みか?」
そう言うと、この人は
悩みを考える暇も与えないくらい
楽しい予定でスケジュールを埋めはじめた


生き急いでいるようにも見えるけれど それは逆で
いつ終わるかもしれない恐れに震え続ける必要はないの
いつでもボクを楽しませるように生きてくれればいいだけだから
迎えの時は一緒に行くと約束してあげる だから終わりまでは連れていって





書「…好きに書いていいと言いましたが 明け透けで 本心すぎませんか」
守「嘘書いても仕方ないでしょ」
書「【ボク】表記ですけど【ワシ】じゃなくていいんですか」
守「本心じゃからの」
書「なんで普段【ワシ】なんですか?あ、照れ隠しですか(笑)」
守「しばくぞ」


小樽の夜は 静かで満たされていく




今回はここまで


やあ こんばんは いらっしゃい
投稿〆時間ギリギリですね

これまで土日(土曜メイン)にあげてきましたが
先週から今週までは色々ありすぎました

なにより映画館に6度も行ってますし
レビューもまあまあな分量を毎回書いたりしてたり
インスタライブ見てて何も書けなかったり
雀魂やったりしてたので
本当に時間って貴重だなと思いました

言いたいことちょっと書けてて 守護霊さんはご満悦のようです
ただし、校閲まだしていないんで、書記官は真っ青ですねオイ逃げるな

次回、最終回です

当然、最終回の内容は1行も書けていませんが
来週は土曜の夜には上げたいみたいです

遊ぶなとは言わんがやることやってほしい
自分のことじゃないの?
それはそうなんで困るよね

じゃあ また

次回 グッバイ小樽




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