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いい夢みろよ あの花篇

2023年11月4日(土)

大阪・北浜 雲州堂

出演
•谷澤ウッドストック(vo. Gt.)
•Jin Nakaoka(ma.)
•加藤喬彦(ba.)
•斉藤慶司(br.)


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

中之島を北へ渡り右へ。
大通りから離れる。
川沿いというより、少し内陸側を進む。
高速であろう高架をくぐる。
高速の高架は高く、その下を
そう高くないビルが立ち並ぶ。

きっと昼間はせわしなく
事務所やら工場やらは
稼働しているのであろう。

夜は今。ひっそりとしている。

間もなく、そんな街角から
厚ぼったい帽子をかぶった
細身の男性が路地から出てくる。

Jin Nakaokaさん。

今回のライブでマンドリンを弾く人だ。
何か荷物を取りに出たのだろうか
通り沿いの建物の引き戸を開けている。

突然の登場で、お声がけする心の準備もなく。
「(ライブ直前だし、いきなり暗がりから
 声掛けするのも悪い気するナァ…)」

初対面の人には臆することが多い。
昔から、これは変わらない。
いいと思えない部分だと感じている。

Jinさんが出てきたってことは
目的地は…。

おぉ、発見。到着しました。


入場待ちのお客さんが、外にも

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

18:52

北浜雲州堂

倉庫とあるが、中はライブステージ

古い商店の店構えをそのまま生かしたお店。
内装は壁を取り払い、柱や梁はさらけ出して
開放感あるステージと客席になっている。

美しい空間。初めての来訪

歴史の刻まれた柱や外壁に味わいを感じる。
入り口横に階段があり、2階は楽屋だろうか。

受付を済ませる。
会場の奥は、扉を挟んでバーカウンター。
そして、ホール。机と椅子が並ぶ。

こちらに来て、ライブの幕間や
演目終了後は少しゆったりできそう。
お手洗いも奥にある様子。

カウンターで、芋の水割りを頼み受け取る。
会場へ戻る。客入りは上々である。
ほぼ満席ではなかろうか。

…ん。おや?

客席に見たことある男性が…。

眼鏡に帽子、化繊の青地の上着。
しっかりとした大きなカメラを手に持ち
周りのお客さんと談笑している。

彼は、Nさん。確か愛知県で暮らしてる人。
彼とは3日前に鑪ら場で会っている。

私から声をかける。

「どうもどうも~」

久しぶりというには遭遇率高すぎない?
と、お互いに笑いあう。

彼とはこれまで
京都や東京でも会っていたりする。
会う場所は決まってライブ会場。
打ち合わせはしていない。
行き合わせてしまうライブが
たまたまよく被るだけである。

今日は車で来たらしい。確かに車でも
大阪までなら2時間半もかからない。

「今日、楽しみですね。じゃ…」

開演時間が近いので話はそこそこに。

彼は後ろの方の席に落ち着いている。
サテ、私はどこに落ち着こう。
会場の席はすでにほぼ埋まっており
最前列が3席ほどが空いている。

よし。ここがいい。

時間を見る。19:00

もう始まるだろう。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

この日の演奏の内容を
詳細に語るのは差し控えよう。
後日、動画に上げるようなことも言っていた。


楽しみは、待っている時も楽しみなのだ。
それは、私だけの楽しみでもないから。

見るからに会場の壁が薄そうで
寒いかもしれないと思って
上着は着たままで、ライブが始まる。

1、2曲目で熱くなる。上着は脱いで
膝に置いて観覧。

ライブ全体を通して
室温は、寒すぎず、暑すぎず快適。
音量もでかくて、非常によい。

トークを含めて谷澤さんらしいステージ。
愛ある、夢見心地の時間に
観客も、泣いたり笑ったり。

良い音楽に酔いしれる。

夜が進む。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

1部の演目が終わり、バーカウンターへ。
もう少しお酒が飲みたくなる。

バーカウンターのあるホールの壁に
ハンガーがあったので上着をかける。
休憩時間でトイレには長蛇の列。


次はホットでいこう。
芋のお湯割り。

あったまる~。

と。

ライブ前に声かけられなかった
谷澤さんがいらしたので、ご挨拶。

「10月はキャンセルしてゴメンなさい」
「全然!今日はありがとうございます…」

二言、三言、談笑。
谷澤さんは他のお客さんとも交流していく。


トイレの列が短くなったので、用を足す。
手を洗って、鍵を開けた瞬間
がらりとドアが開く。
目の前にはJinさん

「オット!ごめんなさいよ!」

「こちらこそ!すみません、どうぞッ!」

出番前だ、ステージ前には
ビシッとセットアップしてもらおう。

ホールに掛けてあった上着を取り席へ戻る。
会場の壁にもハンガーがあった。
お湯割りで少し体も温まったことだし


こちらに掛けておこう。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

2部終了。

素晴らしかった。

谷澤さんのライブ。ソロは何度もあるが
バンドセットは初だった。ウッドベース、
マンドリン、ドラムスが入り、
ソロとはまた違って、とてもいい。

非常にパワフルな印象。
このバンドの音で
多くの場所でも演奏してもらえたなら
きっと喜ぶ人も多いのではないかな。

ただ、最前列では
少々首が疲れてしまうな。
映画館で最前列に座ったような感覚。
雲州堂のステージは
学校の体育館のように7、80センチほど
高座になっている。ひょっとしたら
離れた場所での観覧が
正解だったかもしれない。

けれどもそれは後から
些細なことだとわかる。

幕後。客席を見回す。
Nさんは他のお客さんと話をしている。

ふと、帰りのことが頭をよぎる。
今から帰れたりするのかな…?

このときの時間をよく覚えていないが
21時を回っていた気がする。
酒を片手に、スマホを取り出す。

今回、宿を取っていないが
ネカフェやらどこかで
適当に夜を空かせばいいか…
ぐらいに考えていた。


そう、ライブを見るまでが目的であり
それ以降のことは、考えていなかったりする。


いつものことだが

人間らしくありたいなら

あまり真似してはいけない。

痛い目を見る。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

検索。。。

終電の時間が…
北浜、21:18発。
おうちの最寄り駅、00:02着

…あ、これ
急げばおうちの布団で寝れる…?

ヨシ!そうと分かれば急ごう!



半分くらい残っている酒を
がっと飲み干す。
以外と濃かった。芋のお湯割り。

慌てず、カウンターへグラスを戻し
スタッフさんに美味しいお酒のお礼を言う。

サッと荷物を手に取る。
客席のNさんにお別れを。

「またね!ありがとね!」

軽く手を振る。あちらも手を振る。

見回しても演者さんが誰も見当たらない。

楽屋かしら。
ステージ近くから上を見ると
吹き抜けの先に演者さんの誰かが見える。

と、丁度2階から谷澤さんが降りて見えた。

お別れを。

「じゃ!」
「ありがとう!」

互い腰に手をやりパシパシと軽くたたく。

他の演者さんにも挨拶したかったな…
想いを胸に。
またの機会にしよう。

玄関先の谷澤さんに手を振り

駅へ駆け出す。


大通りへ出る。


大阪の町並みが煌めき


後ろへ流れていく。


ああ、楽しかった!


ありがとう大阪!



中之島に差し掛かる。


庭園が見える

遠くに白い花が小さく揺れている

ああ、遠目で見ても綺麗だna


白い花たちが

声を張り上げている

ん、なんだ?


「おおーい、アンターっ!」


酔っぱらいの耳に届く。




「上着、忘れとるでェー!!」





緩やかに足は止まり



天を仰ぎ、両手で顔を覆う。


頭の中は、あの花より真っ白。



つづく



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