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いい夢みろよ 宴発夢行 直行便
難波橋 橋上
妙に開放感があるなぁとは思ったんだ…。
店を出た時から、なんだか肩が軽いなと。
そら、上着を着てなかったら身軽だわ。
忘れ物するのはなぜか、一体誰のせいだ?
酒のせいか?いや、自分のせいだな…
誰のせいにもできない現実を受け止める。
テクテクと、来た道を戻る。
終電はなくなった。
走ったせいか、最後に飲んだお湯割りが
体に一気に回るのを感じる。ホカホカする。
脳内では『この後』が議題に提示される。
以下は矢継ぎ早に出た意見である。
「またお酒が飲めるぞ~。やったね!」
「時間もあまり気にしなくていいよな」
「バンドの人ともお話できるかもしれない」
「お開きになったら、大阪を歩きませんか?」
「わしゃ大阪城って行ったことないのぅ」
「腹も減ってきた、なんか食べようぜ?」
あんまり、ロクなものがない。
けど、そうね
賑やかなことだ。
失敗や後悔は一瞬に過ぎ去る。
生きている時間は有限だからな。
楽しくやろう。
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雲州堂 再び
しょぼくれていても仕方がないので
朗らかな顔をしてお店へ近づく。
店先には数人のお客さんがいて
谷澤さんとお話している。
通りの暗がりから現れた私を見つけ
幽霊を見つけたみたいな顔をする谷澤さん
「お久しぶり」
また訳の分からないことを口走る
「な、なにかありました?」
「いや、上着忘れちゃってサ…」
「そんな…言ってくれたら送ったのに」
おぉ、その選択肢もあったか
酒浸りの脳ミソがのんきに思う。
思うと同時に、こう口に出る。
「終電ないから、もう少し飲みますよ」
カラカラと笑いつつ、お店の中に入る。
壁を見やると、ハンガーにかかった上着が
「(置いてけぼりかよ、勘弁してくれ)」
と、恨めしそうにつぶやく。まぁ、なんだ。
戻ってきたんだ。許せ。
会場ではNさんとも再会。
軽く理由や状態を説明する。そして私は
「お酒飲まなきゃ~」
などと言いつつバーカウンターの方へ。
飲もう。今度は、慌てることなく。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
バーカウンターで頼んだのは、桃のお酒。
ちょっとだけ疲れた体には、甘いのがいい。
ホールの壁際に1人座り、心と体をいたわる。
ぼんやりとライブを反芻する。う~む。
とても良かった…。来て良かったなぁ…。
酒が進む。
酒がうまい。
うますぎる。
全体、だいぶ落ち着いてきた。
和やかな空気を肴に、手持ちの酒も空いた頃
谷澤さんがカウンターにやってくる。
こちらから声をかける。
谷澤さんと、同じお酒を頼む。
「おかげ様で、だいぶゆっくりしてます」
「なんかいつも違うグラス持ってません?」
「芋の水割り、芋のお湯割り、ときまして
今のは桃のお酒でした。よく見てますねぇ」
ちょっとあきれ気味に
「ちゃんぽんやん…」
そして、谷澤さんはふわりと続ける
「だいぶ、つらそうやったけど大丈夫?」
はっとする。
ライブ終盤の光景が浮かぶ。
最前列で見ていた。そのせいもあってか
ステージからもばっちり見られていた。
最後の曲で、私は色々思い出して泣いていた。
谷澤さんは気付いていたのだろう。
どうやら、まぁ、ひどい顔だったようだ。
少し恥ずかしい気持ちもあったが、
「いろいろ思うとこあってね…あの曲。
素晴らしくて、感動したんですよ。
来てよかったです、ほんとに…」
素直な気持ちが言葉に出てくる。
「いやぁ、そう言っていただけると…」
同じお酒が手元に。乾杯する。
ただただ、素晴らしい日に立ち会えた。
ゆるやかに、深く、音楽に浸る夜。
感謝の言葉ばかりが出る。
夢のようだね
![](https://assets.st-note.com/img/1700131245974-mxeVWJeBGY.jpg?width=1200)
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ホールにもまだ、わりとお客さんがいて
谷澤さんも他のお客さんと交流を深める。
私は会場側へ戻る。
もちろん手には酒。
それから上着。
Nさんはお客と2人で談笑している。
「(割って入るようで申し訳ないなー)」
そう思う一方で、
「(他に顔見知りいないしなぁ)」
「(なんだか楽しそうだ)」
と、ズケズケと入り込む。
行動と思いは必ずしも一致しない。
「やぁどーもどーも」
と、談笑に加わる。
Nさんは、コインパーキングに車を停め
そこを今日のキャンプ地とするらしい。
また、翌日には移動する。
といった話をしている。
「やぁ~、過酷なことするなぁ!」
「人のこと言えないでしょ!この人ね…」
「うわーヤバい人おるわー」
酔っぱらいを相手する優しい2人は
私のバカな話も、笑って受け取ってくれた。
他愛ない話に花が咲く。
ありがたいなぁ…
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時間は過ぎ去り、22時を回る。
すっと、また帰りの電車の時間を調べてみる。
翌朝も久居の近くで「みどりの日」なのだ。
大阪は、一体何時に出たらいいのか?
![](https://assets.st-note.com/img/1700131698434-W2lYXtpLne.jpg?width=1200)
出発は鶴橋、05:44で?
伊勢中川到着は、07:33の予定なぁ。
例えば寝過ごしちゃったりして
松阪まで行ってしまう、とかは怖いから
伊勢中川で止まってくれるのはありがたい。
というか、これがマストかな。
移動時間は寝る時間だ。
名張で起きるけど。
「みどりの日」は09:00からだから、
伊勢中川で乗り換えする時間で調整だな。
駅で暇をつぶそう。目的地は近い方がいい。
…なんか旅慣れしてきた?
ま、いいか。
そろそろお店もお開きのようで
演者の皆さんは舞台上でフォトセッション。
便乗して撮らせてもらう。
![](https://assets.st-note.com/img/1700132443749-sT3WJbvupb.jpg?width=1200)
・谷澤ウッドストック(vo. Gt.)•Jin Nakaoka(ma.)
写真を撮る人まで撮るのがスキー
それぞれにお礼を言いつつ、店を出る。
上着を羽織って。さようなら。
またね。
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と。
歩き出したものの、ノープランである。
閑静な夜の街。暗がりにスマホが点る。
大通りまで出る前にルートを決めようか。
というか、最終地点も決めていない。
いや、決まっているか。
最終地点は駅だ。
始発の出る駅。
ええと。
大阪上本町だったか?
いや、鶴橋か。
やはり決まっていないじゃないか。
頭がうまく働かない。
そこまでは、どんなルートで目指そう。
今から出てしまうと確実に時間を持て余す。
途中で何か食事もしたい。
休息も取りたい。
土地勘がないものだから
あーでもない、こーでもないと
棒立ちのまんまで、スマホと睨めっこする。
ああもう。全然、旅慣れしていないじゃない…
そうこうしている間に店の方から一団が。
バンドメンバーのお帰りである。
Nさんも一緒にいる。私に気が付く。
「またね」から再会のスパンが短すぎる。
なんだかんだで、ご一緒することに。
難波橋北詰のセブンイレブンに立ち寄る
乾杯をするためお酒を物色する一行。
みな、やり遂げた顔をしている。
私はスッと店を出て準備する。
荷物から取り出した炭酸水に
同じく取り出した瓶。
丁寧に琥珀色の液体を注ぐ。
これを目撃したJinさんが一言
「学生の頃見たことある、ヤベエ奴だ」
エヘヘ、どうも。ヤベエ奴です。
皆が集まり、店先でささやかに乾杯。
このままコンビニの店先で宴会…と、
そんなわけにもいかず。
おのおの、自分の酒を片手に移動する。
行先は、中之島方面。
橋を渡り、途中の階段を降りる。
![](https://assets.st-note.com/img/1700133622425-7FyqaqSojG.jpg?width=1200)
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「…アンタ、また来たんか」
呆れ顔の白い花が迎える。
思わぬ所へ来たものだ。
しかも、思わぬ人たちと。
ああ、酔った頭が働かない。
いい夢をみている。
![](https://assets.st-note.com/img/1700133779166-wi7GulFGwR.jpg?width=1200)
つづく