萩原正人

タイタン所属(元キリングセンス) 臓器移植芸人 連載:水道橋博士のメルマ旬報「死ぬ前に…

萩原正人

タイタン所属(元キリングセンス) 臓器移植芸人 連載:水道橋博士のメルマ旬報「死ぬ前に跳べ」 2000年:肝腎臓同時移植atダラス/2015:生体腎臓再移植at東京女子医大 肝臓日記:http://hagi-net.com

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福島の友人と命の恩人

ほんとうならこの日、去年に引き続き福島にいたはずなんだ。かなり熱めの飯坂温泉の露天風呂につかって、今日の講演会の出来不出来を反省していたはずなんだ。 もっともこ…

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4年前
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『死に前に跳べ』 第2回 救う会詐欺をおいつめろ! 2016年12月

悲しい事件がおきてしまった。 日本でも脳死移植はできるが、圧倒的にドナーが少ない。そのため、最後の希望として、海外渡航移植にかける患者さんがいる。かつてのわたし…

萩原正人
4年前
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『死ぬ前に跳べ』 第1回 爆報!THE フライデー 2016年11月

今春(2016年3月)、爆笑問題が司会をしている「爆報!THE フライデー」に出演した。いや、出演したという表現は正しくない。コメンテーターとしてひな壇を飾ったわけでは…

萩原正人
4年前
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中国からの荷物が届かない

5月のことだ。 コロナ自粛であまりに暇を持て余していたので、amazonでジグゾーパズルを買った。5月9日のことである。 画面上、お届け予定日は<6月11日>となっていたが…

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4年前
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鯖がぐうと鳴いた 長編ver あとがき

あとがき この「鯖がぐうと鳴いた」は、2014年12月25日から、2015年9月9日まで、水道橋博士のメルマ旬報で連載をさせていただいたていた。このあとがきは、連載終了後に書…

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鯖がぐうと鳴いた 長編ver #6/6

最終章 鯖がぐうと鳴いた      一  吉祥寺の駅近にある喫茶店で待ち合わせた。  いらっしゃいませと出迎えたウェイトレスに、待ち合わせと断りをいれ、ホールの…

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鯖がぐうと鳴いた 長編ver #3/6

 第二章 鯖もおだてりゃ木に登る      一   平成六年、夏。  デビューから八年が過ぎていた。 「新橋の日比谷口を出るとSL広場がありますから、そこへ三日分…

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鯖がぐうと鳴いた 長編ver #5/6

第四章 溺れる鯖は藁をも掴む      一  隔月で開催を積み上げてきた、新座さん主催のお笑いライブが、記念すべき第一〇〇回目を迎えた。  初期のライブでは、お…

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4年前
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鯖がぐうと鳴いた 長編ver #4/6

第三章 俎板の上の真鯖      一  血管を毛虫でも這いずるような不快感だった。いや、もっと硬いものがごりごりと血管を進んでいく。  麻酔で感覚の麻痺したはず…

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萩原正人
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鯖がぐうと鳴いた 長編ver #2/6

 第一章 生け簀の鯖は大海を知らず      一  一九八八年、冬。  骨から震えがくるような、寒い日の午後だった。  夕べは遅番で、揚げ物油が髪にへばりついてい…

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4年前
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鯖がぐうと鳴いた 長編ver #1/6

 序章 月光の鯖が友を呼ぶ      一  江ノ島の右肩に白い月。  そこへ突進するように慶太がハンドルを切った。片瀬東浜と西浜の隙間をぬって、江ノ島弁天橋のた…

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鯖がぐうと鳴いた 短編

※これは2011年7月に、桶田敬太郎くんと一緒に、片瀬漁港から鯖釣りにいった出来事をモデルとした小説です。 鯖がぐうと鳴いた                萩原正人 …

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福島の友人と命の恩人

福島の友人と命の恩人

ほんとうならこの日、去年に引き続き福島にいたはずなんだ。かなり熱めの飯坂温泉の露天風呂につかって、今日の講演会の出来不出来を反省していたはずなんだ。

もっともこのご時勢。
講演会のオファー段階から、
“コロナ渦の様子を見て、中止もありえる”とのことだった。
楽天家の俺としては、そんなことはないだろうと高をくくっていた。
のに。
この情勢を鑑みて、イベントが中止になってしまった。

すげー悲しい。

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『死に前に跳べ』 第2回 救う会詐欺をおいつめろ! 2016年12月

『死に前に跳べ』 第2回 救う会詐欺をおいつめろ! 2016年12月

悲しい事件がおきてしまった。

日本でも脳死移植はできるが、圧倒的にドナーが少ない。そのため、最後の希望として、海外渡航移植にかける患者さんがいる。かつてのわたしがそうだった。

しかし海外渡航移植には、膨大な費用がかかる。そのため救う会を結成して、ひろく公に募金をお願いする。わたし自身、萩原正人を救う会を結成し、募金活動を行なった。

そしてこの救う会には非難がつきまとっている。
なかには激しい

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『死ぬ前に跳べ』 第1回 爆報!THE フライデー 2016年11月

『死ぬ前に跳べ』 第1回 爆報!THE フライデー 2016年11月

今春(2016年3月)、爆笑問題が司会をしている「爆報!THE フライデー」に出演した。いや、出演したという表現は正しくない。コメンテーターとしてひな壇を飾ったわけではないのだから。

この番組では、芸能人の知られざる過去を、それもかなり壮絶な体験を、毎度どこからかと驚くほどに掘り当てて、エンターテイメントに料理して放送している。なんとも恐れ多いことに、こんなわたしも芸能人のはしくれとして取り上げ

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中国からの荷物が届かない

中国からの荷物が届かない

5月のことだ。
コロナ自粛であまりに暇を持て余していたので、amazonでジグゾーパズルを買った。5月9日のことである。

画面上、お届け予定日は<6月11日>となっていたが、<在庫有り>と表示されていたので、「そんなバカなことがあるか!」と注文をした。いくらコロナだとはいえ、配送にそこまで時間がかかるはずもない。

案の定である。注文から3日後に「5/12に●●が発送し、ご注文のお手続きが完了し

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鯖がぐうと鳴いた 長編ver あとがき

鯖がぐうと鳴いた 長編ver あとがき

あとがき

この「鯖がぐうと鳴いた」は、2014年12月25日から、2015年9月9日まで、水道橋博士のメルマ旬報で連載をさせていただいたていた。このあとがきは、連載終了後に書いたものの一部改定版である。

 この文章は、あとがき的な何かである。
「いったい何のあとがき?」と思う方がいたとしたらどうしよう。戸惑う。これこれこういう小説を私は書いてきて、その連載が終ったので云々……と、私は説明するべ

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鯖がぐうと鳴いた 長編ver #6/6

鯖がぐうと鳴いた 長編ver #6/6

最終章 鯖がぐうと鳴いた

     一

 吉祥寺の駅近にある喫茶店で待ち合わせた。
 いらっしゃいませと出迎えたウェイトレスに、待ち合わせと断りをいれ、ホールの中程に立って店内を見渡す。そこにまだ鎌田氏の姿はなく、後からもう一人きますと窓辺のソファーに席を取った。
 選ぶでもなくメニューを眺めてアイスコーヒーを注文する。それから五分程たって、
「まったー」
 と、陽気に語尾をあげながら、鎌田氏

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鯖がぐうと鳴いた 長編ver #3/6

鯖がぐうと鳴いた 長編ver #3/6

 第二章 鯖もおだてりゃ木に登る

     一 

 平成六年、夏。
 デビューから八年が過ぎていた。
「新橋の日比谷口を出るとSL広場がありますから、そこへ三日分の着替えを持って、朝七時に集合してください。くれぐれも遅刻は厳禁ですからね。勝ち抜けば十六日から二十日まで、泊まりでの拘束になります。そのつもりで準備してください」
 マネージャーからの連絡は、それだけだった。
 具体的な企画内容は一

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鯖がぐうと鳴いた 長編ver #5/6

鯖がぐうと鳴いた 長編ver #5/6

第四章 溺れる鯖は藁をも掴む

     一

 隔月で開催を積み上げてきた、新座さん主催のお笑いライブが、記念すべき第一〇〇回目を迎えた。
 初期のライブでは、お客さんが一〇人に満たないこともざらにあったが、試行錯誤の末、今では立ち見が出るほどの大盛況だ。
 もっとも、キャパが一五〇程度の小さな劇場だけど。
 いつにも増して新座さんがご機嫌だった。
「マキちゃん、おはよう。今日のお客さんはラッキ

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鯖がぐうと鳴いた 長編ver #4/6

鯖がぐうと鳴いた 長編ver #4/6

第三章 俎板の上の真鯖

     一

 血管を毛虫でも這いずるような不快感だった。いや、もっと硬いものがごりごりと血管を進んでいく。
 麻酔で感覚の麻痺したはずの首筋に、ときおり鈍い痛みも感じる。声を上げるほどじゃない。それでも、身体を動かさないように肩を強張らせて、顔が歪むほど歯を食いしばる。
 いったいどうしちゃったんだよ、私の躰。
 一瞬のめまいの後、椅子に腰掛けたままバイト先で昏倒した

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鯖がぐうと鳴いた 長編ver #2/6

鯖がぐうと鳴いた 長編ver #2/6

 第一章 生け簀の鯖は大海を知らず

     一

 一九八八年、冬。
 骨から震えがくるような、寒い日の午後だった。
 夕べは遅番で、揚げ物油が髪にへばりついている。この日は夜からお笑いライブがあって、せめて身奇麗にして舞台に立ちたかった。
 洗面具を抱えて、凍てついた真鋳のノブをまわす。板敷きの廊下へ出る。冷気が素足に絡まって、腰へ抜けて歯と肩が震える。昼でも薄暗く、ぽつんと寂しげに裸電球が

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鯖がぐうと鳴いた 長編ver #1/6

鯖がぐうと鳴いた 長編ver #1/6

 序章 月光の鯖が友を呼ぶ

     一

 江ノ島の右肩に白い月。
 そこへ突進するように慶太がハンドルを切った。片瀬東浜と西浜の隙間をぬって、江ノ島弁天橋のたもとにもぐりこむ。
 釣り宿が軒を連ねていた。看板には片瀬漁港と達筆な文字。右手には魚市場があって、定置網で水揚げされた魚が直販されている。そこには、私の知らない夏の江ノ島があった。
 漁港の朝は、前のめりに動き出していた。
 船宿にた

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鯖がぐうと鳴いた 短編

鯖がぐうと鳴いた 短編

※これは2011年7月に、桶田敬太郎くんと一緒に、片瀬漁港から鯖釣りにいった出来事をモデルとした小説です。

鯖がぐうと鳴いた                萩原正人

 再会

 江ノ島の右肩に白い月。
 そこへ突進するように慶太がハンドルを切った。片瀬東浜と西浜の隙間をぬって、弁天橋の袂にもぐりこむ。
 船宿が軒を並べていた。看板には、片瀬漁港と達筆な文字。右手は魚市場だ。定置網によって水揚げ

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