会社員失格女が年収1000万に至るまで|独立準備期
■目次
1、絶望した時こそ独立せよ
2、副業で適性を見よ
大学卒業の1週間前に内定先を(実質)クビになり、1年ごとに3社を転々とした「会社員失格女」が独立してから1年半で年収1000万に至るまでの話。とにかく挫折ばかりだった私が、独立しようと心に決めた時のことから。
1、絶望した時こそ独立せよ
「好きなことだけしたい。私は会社員失格だ」
うず高く積まれた資料のまんなかでパソコンを見つめながら、強烈にそう思った。生ぬるい春の陽気が街全体を包む土曜日の夜のことだ。あらゆる生命がみずみずしく芽吹く季節に、自分ひとりだけ幼虫のまま羽化できず、地中深くにもぐりこんでいるみたいだった。
大学を卒業してから1年ごとに転職を繰り返し、独立するまでに3社を渡り歩いた。内定をもらってインターン勤務した会社を含めば4社だ。最初の2社は新規営業を、3社目はマーケティングを、4社目でようやく制作を担当した。肩書がライターになったのは最後の一社だけである。その会社は代々木のマンションの一室にあり、社員はたったの5名。畳の上にデスクを置き、都会のざわめきを感じながら仕事をしていた。
さまざまな紆余曲折を経てようやくライター職につき、名刺に「ライター」と印字されてじんわりと喜びを噛みしめたのもつかの間、書く意欲はしゅるしゅると萎んでいった。その会社は社史編纂会社であり、大企業の100年史などを制作するのが主であった。一般的なライティングとは全く異なり、膨大な資料と向き合って事実をわかりやすく書くことが求められる。要は分厚い資料集を作るようなものだ。歴史的興味がなく研究肌でもない私は、社史執筆に全く向いていなかった。山のような資料を左上から右下まで時間をかけて読み込んでも、ふと顔を上げると何も頭に入っていないことに気づく。目線が往復しただけだ。
そんな状態だからろくな原稿が書けるはずもなく、みかねた上司に強く叱責された。
「お前ふざけんなよ。そんなんなら辞めちゃえよ」
不甲斐なさやら悔しさやら、あらゆる感情がないまぜになり、ボロボロと涙をこぼしながら「確かに辞めたい」と思った。
土日出社は当たり前、連日22時ごろまで働くものだから夕食は深夜になり、私はぷくぷくと太っていた。ストレスが食へ向かうタイプなので、仕事が忙しければ忙しいほど太るのである。当時は今の夫と付き合っており、結婚に向けて意欲的に恋愛したい時期でもあった。しかしこの会社にいる限り、私に土日の自由はないのだ。
デートは?結婚式は?育児は?
どこまで人生のコマを進めても「?」が浮かぶ。
一度自分の席に戻り、涙を引っ込めながら5分ほど考えて「辞めよう」と決意した。そしてまた上司のところへ行き
「さきほどお話しして考えたんですが・・・私、辞めます」
「え!?」
上司はおおいに驚いた。5分前に「辞めちゃえよ」と叱責した部下が「ハイ辞めます」と言っ。テンポが良すぎてもはやコントだ。私は第三の目でこの状態を客観視しながら「きっと『最近の若いやつはわからん、辞めろと言ったらすぐ辞めた』と言われるんだろうなあ」と思っていた。
辞めた理由はほかにもいろいろあるのだが、とにかく私は自分の現状に絶望し、「今、ここには望みがない」と思った。どうせ望みがないなら独立したい。失うものはないのだから。
2、副業で適性を見よ
とはいえ収入がゼロになるわけで、野垂れ死にしたくなければお金を稼がねばならない。私も手ぶらで独立したわけではなく、2つの武器を頼りに独立した。副業と彼氏である。
まず、副業は2社前から始めていた。ライターになりたいとは学生時代から思っていたのに、一向に執筆業につけない自分に嫌気がさし、ライター講座の知り合いに仕事を紹介してもらって、こっそりペンネームで執筆活動をスタートしたのだった。単価は安く、1本あたり3000円程度の記事を細々と書いていた。化粧品会社での勤務経験を活かして美容記事を書いたり、土日に取材して飲食店の紹介記事などを書いたりと、今振り返ってみれば会社勤務の傍ら地道にがんばっていたと思う。書くこと以外の仕事に比べたら圧倒的に楽しく、全く苦に感じなかったというのが大きいが。
だから社史編纂会社を辞めることにも不安を感じなかった。ほかの執筆業を経験していなかったら「そもそもライターとしての適性がないのでは」と疑ったかもしれない。でも、ほかの執筆業が楽しかったから「私は社史執筆には向いていないのだ」と判断できた。
周りにも背中を押してもらった。すでに独立している1つ年下の女の子に「私も独立できるかな?」と聞いたら「うん、できるよ」と言われて、そうかできるのか、と素直に飲み込んだ。そして、フリーランスの男性イラストレーターに「独立しようと思うんですが、食べていけますかね?」と聞いたら「世の中って意外と食べていけるようにできていますよ」と言われ、世界の色が花咲くように明るくなった。
また、彼氏との同棲が決まっていたのも大きかった。どれほど極貧になっても宿無しはまぬがれる。「そりゃチートだ」と思われるかもしれないが、彼氏と同棲にこぎつける方が独立よりもはるかに時間がかかったし、血の滲むような努力をした。彼に至るまで東西南北あらゆる合コンに行き続け、出会った男性は星の数ほど。長くなるのでここには書かないが、私の恋愛遍歴は涙なしには語れない。「断じて楽にたどり着いたわけではない」とだけ言わせてくれ。
なんにせよ、独立に際して衣食住に不安を感じるなら、同棲できる恋人探しがおすすめだ。「自分から必死に恋人探しなぞしたくない」なんて天上人の戯言である。北川景子や石原さとみでもあるまいし、恋愛に関するプライドはとっくに東京湾に沈めてきた。独り身時代に「この泥水をすすれば唯一無二の愛が手に入りますよ」と神様に言われたら、きっと私はバケツ一杯の泥水を躊躇なく飲み干しただろう。
またあたらめて書くが、自分を無条件に肯定してくれる恋人は精神的支柱にもなり、あらゆる逆境に立ち向かう勇気をくれるのである。さながら私はPRGゲームの勇者で、彼はヒーラーだ。彼が私の心のエンジンとなり、この魂が燃え尽きるまで全力疾走させてくれる。
次回は目標の立て方と実際の売り上げについて、以下の3本立てでご紹介します。
目次
■会社員時代の給与を下回るべからず
■時給換算して考えよ
■さて、初月の収入は?
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