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やる前に「やる意味」を考えてしまうあなたへ

効率重視、コスパ重視の昨今、「これって意味あんのかな?」と自問自答する人は多いと思う。私もしょっちゅう考えては立ち止まる。

自意識過剰なむっつりナルシストゆえに、仕事においても「私がやる意味」を常に考える。風吹けば飛ぶペラペラの新卒時代から「これ、私がやる意味ある?」と考えては首をかしげていた。

タイムマシンに飛び乗って当時の私の頭をパコーンと叩きたいが、残念ながらタイムマシンはまだ開発されておらず、社会人になりたての私は大層生意気なままであった。

代表的なのが飛び込み営業で、文字通りその辺のビルに突撃して「求人広告はいらんかね!」と物申すのだが、これがもう本当に迷惑な虫かただの空気みたいに扱われる。毛量控えめツヤ感多めのオジサンに一瞥されてシカトされた時は、膝から崩れ落ちそうになった。箱入り娘で甘ちゃんの私にはシンプルにつらくて耐えがたかった。

「なんでデジタル時代にこんな馬力根性の営業方法やねん、非効率すぎるやろ!そもそもノーアポで突撃って迷惑やん!」

とエセ関西弁で半泣きだったが、今思えばメンタル強化のための通過儀礼だった。そう言ってくれればよかったのに、とは思うが、まあ身もふたもないので言わなかったのだろう。

だから私は「やる意味はない」と判断した飛び込み営業に身が入らず、渋谷のセンター街の漫喫でサボり倒していた。すると上司から電話がかかってきて「…今、どこいるの?」とめっちゃ疑われた。バレてる!

独身時代、婚活に燃えていた私はマッチングアプリで片っ端から男に会い、かるた大会のように「脈あり!」「脈なし!」と素早く手札を切っていった。

ある日、のんびりした雰囲気の男性がふらりと現れて、つかみどころのない会話にやきもきした私が

「どんな人を探しているの?」

と剛速球で切り込むと、仏のように穏やかな顔でこう言った。

「別に決めてないよ。気が合えば友達でいいし、お酒が好きなら飲み仲間でいいし、お互いにいいなと思えば恋人でいいし。最初から目的を決めちゃうと、いろんな人と会うのがつまんなくなっちゃうじゃん」

ずがーんと雷に打たれたような衝撃が走り、なんかすごく、自分がしょうもなく思えた。

確かに私のほうが効率はいいかもしれないけど、早く恋人を見つけられるかもしれないけど、彼のほうがはるかに豊かな人間関係を築けるに違いない。

彼のほうが、きっと目の前の人との時間を楽しめている。

確かに時間が限られている人生で目標達成していくには、やりたいことをできるだけ早く実現していくには、やる意味や目的を考えることも必要だろう。

でも、それらを考えるのはいったんトライしてからでもいいのでは、とも思う。

ものぐさで現実的な性格ゆえに、SNSを開いても「そんなにフォロワーいないのにやる意味あるのかなあ」、noteを開いても「まだ書きたいテーマが固まっていないのに書く意味あるのかなあ」、お風呂に入るにも「明日だれにも会わないのに入る意味あるのかなあ」(それはあるやろ)というように、いちいちやる意味を考えるクセがある。

でも、考えるほど「やっぱやめとこ」となり、行動力がテキメンに落ちるのだ。やっぱやめといたせいで、知らないまま手のひらからこぼれていった「やる意味」は無数にあるだろう。

とりあえず、いったんやってみてから意味や目的を考えてもいいのではなかろうか。
そもそもやる意味なんてやってみないとわからない。
神さまでもあるまいし、やる前から意味がわかるわけないのだ。

「やる意味あるのかな?」と思ったら、「やる意味を探してみよう」と言い換えて、人生の寄り道を楽しんでみようと思う。
軽率に無計画に、ただの出来心でやってみようじゃないか。
その寄り道は遠回りのようで、意外と近道だったりするかもしれない。

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秋カヲリ@星天出版代表
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