shot_hagita

日本の外国人労働問題に関する文献の自習室として始めました。最近は国内外の社会運動や教員の労働問題にも関心を広げています。

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日本の外国人労働問題に関する文献の自習室として始めました。最近は国内外の社会運動や教員の労働問題にも関心を広げています。

マガジン

  • 教育労働問題

    教員の労働問題に関する文献の紹介など。

  • 外国人労働問題

    日本の外国人労働問題に関する文献の紹介など。

最近の記事

部活のこれからを話す前に

中澤篤史『そろそろ、部活のこれからを話しませんか――未来のための部活講義』(大月書店、2017年)の感想など。 〈本書の内容〉 ・中澤篤史『運動部活動の戦後と現在――なぜスポーツは学校教育に結び付けられるのか』(青弓社、2014年)の内容を踏まえつつ、一般向けに書き直したもの。 ・日本に特有な学校部活動の特徴を戦後民主主義教育の理念だった「自主性」に求め、その内容のあいまいさに加えて、「自主的な」活動が半ば強制されるという矛盾が、部活動自体の加熱化・肥大化、そして生徒と教

    • 部活動顧問の断り方の諸問題

      西川純『部活動顧問の断り方』(東洋館出版社、2022)の感想など。 <本書の内容> ・時間外勤務を命令できないこと(超勤4項目)を盾にして闘うことの正当性を主張している。 ・交渉相手は教育委員会でも職員会議でも上司や同僚でもなく、あくまでも校長であることを明確にしている。 ・社会体育のイメージを「兼業」によって具体化しており、むしろ「教育活動」の方を片手間で行うものにするという視座の転換を示している。 ・さらに、社会体育の価値を地域コミュニティの再生機能に求めることで、部

      • 「不満の冬」から「ストライキの夏」へ――イギリス労働運動近況(1)

        2022年6月、イギリスの鉄道労組(RMT)がストライキに入った。直接的な要因は臨時労働者の大量解雇が通告されたことにあったが、問題はそれだけでなく、賃金の減少にもかかわらずコロナ禍と戦争によって電気やガスなどのエネルギー価格が高騰したこと、さらにその遠因でもある公共サービスの民営化に対する広範な不満が背景にあった。最近の労働運動の高揚という話題では、アメリカの事例に関心が集まりやすいが、その陰に隠れてやや捉えにくいイギリスの最新の動向を追ってみたい。 1)ストライキの推移

        • 失業・休業中の外国人労働者の臨時動員

          新型コロナの感染拡大を受け、宿泊業や飲食業で強制休業、製造業などでは雇い止めや派遣切りが広がっている。ほぼ非正規労働者で占められる外国人労働者も例外ではない。一方、各国政府が渡航制限を行ったために、技能実習生が来日できない状況になり、実習生に依存してきた農家が打撃を受けている。その「人手不足」を補うために、休業・失業中の外国人労働者を臨時で雇用する動きが見られる。これは外国人労働者の「コロナ・ショック」を社会保障ではなく「雇用維持」あるいは「エッセンシャル・ワーク」への動員で

        マガジン

        • 教育労働問題
          2本
        • 外国人労働問題
          10本

        記事

          移住労働、人身取引、性売買

          大野聖良「人身取引研究の展開と課題」『ジェンダー研究』(お茶の水女子大学ジェンダー研究センター年報)13号(2011) 人身取引(trafficking in person、人身売買)とは搾取目的の人の移動である。かつて「人身取引」といえば性売買(売買春)のことであり、主に女性や児童の性搾取被害として問題化されてきた。しかし、搾取の条件が整っていれば家事労働や工場労働でも人身取引は発生する。人の移動という視点をとることで、人身取引を性搾取を超えた国際移住労働の問題として捉え

          移住労働、人身取引、性売買

          日本で働く非正規滞在者の素顔

          鈴木江里子『日本で働く非正規滞在者』(明石書店、2009) 《3》男性の非正規滞在者28人の聞き取り調査。 〈313~389〉彼らは「もの言えぬ不自由な労働者」ではない。 ・入職経路  通常の雇用回路ではなくエスニック・コミュニティのもつ回路を通しての場合が多い。また、エスニック・コミュニティは失職した同胞に仕事を紹介したり臨時の住居を提供したりといった相互扶助的な機能も担っている。寄せ場やブローカーを利用した者もいるが、あくまで同国人の友人の紹介をへて。  一方、自国

          日本で働く非正規滞在者の素顔

          日本で働く非正規滞在者

          鈴木江里子『日本で働く非正規滞在者』(明石書店、2009) 《序》「非正規滞在者」とは「領土を所有する主権国家の承認をえることなく、領土内に滞在している外国人(当該国の国籍をもたない者)」(21頁)のことである。日本の行政の側からは「不法滞在者」「オーバーステイ」などと呼称されている。1980年代後半以降は「不法就労者」とも呼ばれた。「非正規滞在者」という名称は、彼らの不法性を一旦留保した上で、その就労実態を把握し、正当に評価することを目指すための概念である。 〈22~3

          日本で働く非正規滞在者

          グローバリゼーションと移民(3)

          伊豫谷登士翁『グローバリゼーションと移民』(有信堂高文社、2001) 《8》1980年代、日本に突如として「外国人労働者問題」が登場した。1960年代の世界的な移民の時期に、日本には新規の移民流入が「なかった」からだ。日本経済は明治期以来、朝鮮人・在日コリアンを労働力として利用してきたものの、彼らが移民として論じられることはなかった。戦後の日本政府は終始一貫して移民の受け入れを拒否してきた。その一方で、いわゆる「バイパス」を通って、多くの外国人が「不法就労」という形で国内の

          グローバリゼーションと移民(3)

          グローバリゼーションと移民(2)

          伊豫谷登士翁『グローバリゼーションと移民』(有信堂高文社、2001) 《2》現代の移民を生み出している構造の根底にあるのは発展途上国における農村社会の解体である。「農村分解」という現象自体は歴史上でくり返し起きてきたし、それが農村部から都市部への(若者の)人口移動を生んできたことはよく知られている。これと現代の解体過程が違うのは、資本主義の世界的展開が、単なる人口の流出や世帯の分離ではなく、経済の再生産の場としての農村――「生存維持経済(subsistence econom

          グローバリゼーションと移民(2)

          グローバリゼーションと移民(1)

          伊豫谷登士翁『グローバリゼーションと移民』(有信堂高文社、2001) 〈11~16〉近年、盛んに議論されている経済的グローバリゼーション、つまり経済活動が国家の枠を超えて展開する現象は、単に多国籍企業や国際金融市場の発展と人の国境を越えた移動だけを意味するのではない。それは、特に1990年代以降に顕著になった「グローバル・ドリーム」の商品化のことである。つまり、商品の価値基準が有用性から審美性・記号性へと変化し、企業は映画・音楽・ツーリズムなどの象徴化・ブランド化・イメージ

          グローバリゼーションと移民(1)

          寄せ場と野宿者と外国人労働者

          青木秀男『現代日本の都市下層』(明石書店、2000)、特に第5章・第7章 《5》経済のグローバリゼーションは、東京・横浜・大阪・名古屋などの主要都市を「世界都市」へと変貌させた。と同時に、そうした都市の下層に形成されていた労働世界にも変化をもたらした。都市下層の労働世界とは、土木・建設・運輸などの業種の特徴だった重層的下請け構造の最底辺で、主に日雇いで働く労働者たちの生活世界である。1980年代後半、ここに外国人労働者が急増し、複数のマイノリティが競合・共存する多元的な民族

          寄せ場と野宿者と外国人労働者

          労働者としてのALT

          奥貫妃文&ルイス・カーレット「労働者としてのALT(外国語指導助手)についての一考察」『大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター年報』9号(2012) 〈1〉日本の英語教育現場では、日本人の英語教師とALT(Assistant Language Teacher、外国語指導助手)がチームで授業をするのが一般的になった。しかし、ALTを労働者として捉える視点は欠けている。 〈2ー(1)〉そもそも明治期から外国人労働者は「お雇い外国人」、つまり臨時的存在として位置づけられていた

          労働者としてのALT

          日本における外国人労働者問題

          戸塚秀夫「日本における外国人労働者問題について」『社会科学研究』(東京大学社会科学研究所紀要)25巻5号(1974) 〈一〉入管法をめぐる議論は、難民認定に関する政治的問題に集中している感がある。しかし、同法の核心は移民労働力の規制にある。すなわち、旅行者の積極的な誘致の一方で、在留資格の付与によって外国人の入国・滞留を抑制することである。ところが、このような「入国管理」という建前の裏では、偽装、「特別措置」、その他の抜け道を通って不熟練労働者が入国しており、その実態は(

          日本における外国人労働者問題