政治家になりたいんじゃない。器に入り切らない人が戦っているもの。(「なぜ君は総理大臣になれないのか」を見て)
ずーっと見たかった映画。
「なぜ君は総理大臣になれないのか」
香川県選出の衆議院議員、小川淳也さんを、2003年の初出馬から追ったドキュメンタリー。
彼は、32歳の時に、高松高校→東大→官僚のエリートコースを降りて、政治家を志す。
この映画の監督と最初に会った時の言葉が印象的だった。
監督が、企画書に
「それでも政治家になりたい」
っていうタイトルをつけたときに、
自分は政治家になりたいと思ったことは一度もない。やりたいんじゃない、やらなければならないんだ。少子高齢化の社会を、よりよくする政策立案を、自分がしないといけないんだ。
と語るのだ。
社会の仕組みは、その時の権力者に都合よく作られる。
一般人が社会を変えたくても、まずは今の仕組みで発言権を持つころから始めなければいけないところが、最初から不利。
私はここで諦めてしまうけど、この人の不幸は、それができる実力があったことだ。
それでも、
・民主党から立候補するも、選挙区に強力な自民党候補がいてなかなか勝てない
・やっと比例代表で当選しても、比例当選の議員は党内の発言権が弱い
・民主党の政権失敗
・党内の派閥争い
・解党
・筋を通すために無所属になるか、中央での発言権を得るために本意でない政党への合流という妥協を取るかの葛藤
等々、
本人の意図しないところで、悪循環に巻き込まれ、肝心の、「社会をよくする政策」を実現するに至るまでの発言力を得ることができない。
ほんと、この映画見てると、志のある有能な若者をこんなに無駄遣いしてバカじゃないの!と思う。
政治というのは、正義や誠意や熱意や理想だけでは出来ない
と、本人の口から出るのが悲しかった。
それでもやっぱり理解者はいて、途中の選挙戦で、慶応大学の教授が応援に駆けつけてくれるの。
その人が、
「彼がこんなに苦悩するのは、今の政治の器に入り切らない男だからだ」
って言う。
本当に、あなたの能力を活かしきれない社会で申し訳ないって思った。
この映画で、小川議員は、事あるごとに、
「総理になりたいですか?」
という質問を投げかけられる。
初当選した頃なんかは、「43歳までに」とか言ってたのに、だんだん端切れが悪くなってくる。
で、49歳になった今年、映画の最後でもう一度聞かれるの。
「それでもまだ総理になりたいですか?」
これを、ぜひ、見てほしい。
その答えを聞いて私が思ったのは、
結局この人が戦っているのは、ライバル候補でも、派閥でも、世間の空気でもなくて、自分自身なんだな、
ということ。
政治家を志した頃から変わっていない信念を、諦めろとささやく自分と、戦っているんだ。
この人の苦悩を見てると、見てるこっちの方が、もう諦めていいよ、楽になりなよ、って思ってしまうんだけど、この人が望んでるのはそんなことではない。
自分自身に対して誠実であること。
まだ可能性を信じている自分。
それを、諦めたくないんだ。
見終わったあとは、清々しい気持ちになり、パンフレットも買っちゃいました。
果たして、近い将来、小川総理は誕生するのでしょうか。
最後に、映画のタイトルの答えは、以下の質問と同じということを心に留めて。