生産と消費。「技術」の循環。鳥取県日南町・大宮炭。
ゆかりのある鳥取県日南町を訪問した時のこと。町役場・農林課のA氏と話をする機会をもらった。私自身は、「体の半分が日南町の血なんですよ。」などと談笑。「祖父の家は、江戸時代の建物で...。田畑の手伝い、川遊び、オオサンショウウオ、蛍、アマゴ、ヤマメ。そして、間延びする花火大会…。」まさに、自身の「思い出話」の押し売りだ。
農林業が中心である日南町。かつては「たたら製鉄」が盛んであったことを知る。たたら製鉄を中心とした産業が発達し、製鉄を支える「炭」もまた、生産が盛んだった。しかし、近年の燃料革命に押され、次第に衰退、消滅したが、4年前に「たたらの火を絶やすな」を合言葉に、地元有志の皆さんで大宮炭焼き窯同好会が発足。試行錯誤を重ね、伝統・技術の再開、炭の生産を開始した。
従来より、少しずつ炭を国産に切り替えていこうと考えていた私たちと、技術や伝統を再開、維持しようという、炭焼き窯同好会の皆さんとの思いが一致。この5月25日に、初めての大宮炭が入荷した。
まるで、短距離選手のような!
「一度、日南の炭を中心に焼いてみます」と焙煎師。炭が柔らかく、着火しやすい。また、投入直後から全力疾走。想像以上の火力で急激に温度が上がり、排気弁を完全に閉め、酸素供給をなくし、炭のくどを開放したまま、必死で温度を下げる。
これは、制御不能やね。と、一回目の火づくりは完全に失敗した。前半から飛ばし気味だった炭は、後半はかなりやせ細り、体力の限界を迎えた。しかし、焙煎師曰く、「手ごたえはありました」とのこと。「多分、こうしたら、うまくいくんです。」と、地面で模型作り。
先ほどの、失敗を見ていたら、使用量を減らさないと、危険だということはわかる。そして、2回目のテストが始まった。
日南町の炭を「スターター」として、その上に備長炭を置くことで着火ができる。「火付きが悪いが長持ち」な備長の特徴を補う役目。そして、火力が落ちてきたら、大宮炭と備長炭の中間くらいのオガ炭で調整。なるほど。
創業依頼、焙煎師がそれぞれ独自の火づくりをする私たち。その技術(伝統)は、現在も静かに引き継がれている。
日南町もまた、かつてのたたら製鉄の伝統、炭づくりの技術を絶やさない。そのために、有志で再現した大宮炭。
互いに伝統や技術をつなぐために、生産と消費をうまく循環させ、持続的な関係性を築いていきたい。素直に、そう思える。