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ラストマイル 流れるプールに流されている人たちの話

8/23から公開のラストマイルをやっと観に行くことができた!
ドラマが大好きな友人の勧めで、アンナチュラル🍋、MIU404🍈を観て、ずっと楽しみにしていたラストマイル🍊
SNSでネタバレを踏まないようにするのが大変で、「伊勢志摩」という文字すら見た瞬間スワイプしてしまっていたほど…。笑

あまりにも刺さりすぎて、久しぶりにnoteを開き感想を残すことにした。
※以下ネタバレしかありません。
※あまりにも散らかってて読みづらいです。
※映画を観て熱の冷めやらぬうちに書いているので、所々曖昧です。
※他の人の考察や感想を読まずに書いています。

404号室
冒頭、羊急便の委託ドライバー・佐野親子が配達をして回るところが描かれる。そのなかで、重要な役割を果たす404号室への配達(厳密には、宅配ボックス)が写された時、「404…機捜やん!ファンサービス凄いな〜」としか思っていなかった。
しかし、MIUを観ているから機捜が連想されるわけで…よくよく考えると、そもそも404の意味は「not found」すなわち「未検出/見つからない」であって、この時から最後の爆弾の在処は示されていたのだな…と。
冷静に考えて、4と9を避ける日本で、404号室のあるマンションってなかなか珍しい気が…。私のマンションもなかった。
違和感仕込むの上手いよなー。

ヤギさんと羊急便
「もしもし?羊さん?」「ヤギです!」
羊急便のモデルはヤマト運輸かな?緑色がイメージカラーで、キャッチーな動物の名前。デイリーファストのエレナに振り回される羊急便の八木さん。単なるコミカルなやりとりのために用意されたネーミングではなさそうな気がした。
私はヤギという名前から「やぎさんゆうびん」という童謡を連想した。登場するヤギはべつに郵便屋さんではないのかもしれないけど、郵便まわりのイラストなどにヤギが使われることもよくあると思う。
郵便≠宅配だけど、ものを届けることという点では一致していて、その責任者が八木という男なのが面白い。一方、羊にはそういうイメージはないのに(クロネコにもフラミンゴにもないけどね)、なぜ羊急便にしたのかと考えた時、この物語にもうひとつ羊のモチーフが出てくることに気づく。
最後の爆弾が仕掛けられた、子どもからママへのプレゼントは羊の枕だった。羊は寝たい時に数えるもので安らぎの象徴。そして、洗濯機にぶち込んで爆発を防いだのは羊急便の佐野親子なんだよなあ。
アンナチュラルではミコト先生が、しんどい時でも食べることの大切さを語っているのに対して、ラストマイルでは安眠の大切さを語っているのかも。エレナも睡眠障害抱えてたみたいだし…。
てか、佐野さん(息子)かっこよすぎるよ!!毛利さん推しやけど惚れてしまった。お父さんの方の佐野さんには仕事をする人間としての在り方をすごく問われるけど、佐野さん(息子)の仕事への向き合い方ってこれ以上ないほど尊敬できる。もともと作ってたひのもと洗濯機に対するプライド(「熱に強いんですよ」)が、命を救ったこと。警察に任せたり誰かに判断を仰いだりせずに、自ら爆弾を回収しに行ったこと。10分でご飯食べたり車で寝たりすることじゃなくて、届けたものに対する責任を自分で取ろうとしたことで、仕事に向き合うってこういうことって見せつけられた気がする。
佐野さん(息子)、12個の爆弾のうち唯一2個に遭遇してて無事でヒーローすぎる。すごい確率だから宝くじ買ってくれ。報われてくれ。
お父さんも、届けた荷物のことちゃんと覚えてて凄すぎる。全てをデータで管理するデイリーファストから見たら、FAXで管理してとっちらかっちゃう羊急便に呆れてしまうのかもしれないけど、現場の人間が日頃お客さんとの関わりの中で届けた荷物を覚えていたからこそ守れた命もあるわけで…。
爆発を防いだ洗濯機がひのもとの洗濯機だって分かった瞬間、横隔膜震えるくらい感動して泣いちゃったよね。
みんな、羊の枕で安眠しておくれ…。

色の使い方
先述したように羊急便は緑色。
一方デリファスのイメージカラーはオレンジで、冒頭からこれでもかというほど強調される。エレナの身に付けるものもオレンジが多いし、最後に着ていたオレンジみずたま襟の洋服が印象的。
緑色とオレンジといえば、私の中ではヒロアカのデクとかっちゃんなんだけど、色相環では緑の反対は赤、オレンジの反対は青であって、反対色のそれぞれ隣にある色という関係。なのでパキッとした印象を与えつつ、真反対ではないのでビビッドすぎない、相性の良い関係性。
爆弾テロの責任の所在や対応について、エレナと八木さんが対立する構図に見せかけて、最終的には協力してコンベアーを止め、事件を解決する、というのが、カラーリングから暗示されているように思えた。
また、色彩的な表現でもうひとつ印象的だったのが、アメリカでエレナと筧が接触するシーン。
雪によって白銀になったスクリーンにエレナの赤よりのオレンジコートはあまりにも鮮明で…それに対して、筧は白っぽいコートにブルーのマフラー。ブルーのマフラーは、山崎の父に突き飛ばされる回想でも身につけていた(気がする)。この時はどっぷりとデイリーファストの人間だったエレナと、デイリーファストへの恨みを持っている筧を、カラーリングで見事に表現していたシーンだった。

ちょっとした気づきたち
・冒頭の「時差ボケ」発言、気持ちの問題じゃなく事実だった。福岡からじゃなくアメリカから来たって判明した時にハッとする。

・最初のデイリーフォンが爆発した時、ファーって窓が明るくなって、そのあとドカン!って爆発していて、「助走あるんや」って思っていたけど、よく考えると他の爆発の時にはカチッドカン!で助走なくて、筧の死に方の描写で合点がいった。

・筧が作成した偽のブラックフライデー広告、デイリーファストに見せかけて、デイリーファウスト。ファウストっていったらゲーテだよなあ?でもどんな話だっけか…と思い検索してみた。

高名な錬金術師ドクトル・ファウスト(ファウスト博士)の伝説を下敷きとして、ゲーテがほぼその一生をかけて完成させた大作である。ファウスト博士は、錬金術や占星術を使う黒魔術師であるとの噂に包まれ、悪魔と契約して最後には魂を奪われ体を四散されたという奇怪な伝説、風聞が囁かれていた。

Wikipedia「ファウスト(ゲーテ)」

えっと…最初の焼死体(つまり筧まりかの死体)、四つに分かれてたって言ってなかった?
四散(四方に散ってちりぢりになること。byデジタル大辞泉)って字を見て震えたんやけど、こじつけすぎ??
あと、単に幸福(イタリア語)という意味もある反面、拳・砲(ドイツ語)って意味もあって、単に見間違いやすいからfaustにしたわけではなさそう…。

・これ見よがしのマクド。なんか皮肉だなあと思っちゃった。単に広告かもしれないけど、孔くん買いに行ってなくて宅配してる気がするんだよなー。あんなでっかい工場だし、自分で買って持って来てたら冷めるし、宅配してもらってるだろうと。荷物の宅配/物流を管理している人が、食事を宅配してもらっている。食事の宅配にもまたさまざまな社会問題があって…。社会問題の連鎖の縮図。

・六郎で推し量る時間の経過
筧まりかに辿り着く直前の配送データ確認画面で、舞台が2023年の11月だとはっきり示される。そして六郎は山崎を「5年前、夜勤のバイトをしている時に」受け入れたと。アンナチュラルは2018年のドラマだから、ここでもちゃんと地続きなんだなあと思い知らされるという…。これぞシェアード・ユニバース…!!!

ベルトコンベアーを止めるために何kg必要だったのかって話よ(まとめ)
ロッカーに記された「2.7m/s→0」の落書き。矢印の下には70kgとも記されている。山崎は自分の体重でベルトコンベアーを止めようとしたんだ、と合点がいった時の虚しさったらなかった。
できるだけネタバレ要素を省くことを心がけて2週間過ごしてきたけど、予告を観ていて、「満島ひかりがなんか物流止めないように頑張ってんだな」ということは分かるようになっている。「止めませんよ、絶対。」というエレナの台詞はあまりにも印象的なので、予告を観た誰もが「爆弾が荷物に仕込まれてて、満島ひかりがなんか物流止めないように頑張ってるストーリーっぽいぞ」と思って鑑賞に臨むことになる。
けれど、最終的にエレナはコンベアーを自ら止めることになる。
ただ、70kgの身体を使って止めようとした山崎の存在が、この物語をスタートさせている。そして、本当の意味でベルトコンベアーを止めたのは、山崎を失った筧。70kgじゃ足りなくて、甚大な被害と引き換えになってしまった。
現実世界にもいえることだけど、人間が大事なことに気づけたり立ち止まって考え直したりできるのっていつも大きな被害が起きてからなんだよな。地震でもコロナでもそうだけど、たまに人が人に傷つけられることによって、そういう気づきがある。非難しなければならない人に対して、「あの人がいなければ気づけなかった」とある意味感謝しなければならないことが起きるもどかしさ。
観客が誰かの責任にすることは簡単で、今作では五十嵐あるいはサラに対して、「お前らが利益を追求するから取り返しのつかないことになるんだぞ」って怒りをぶつけることはできるけど、私には五十嵐も苦しそうに見えた。リモートだから分からないけどサラももしかしたら…。
みんな流れるプールの中にいて、止められないし、止まれないって話だなあと思った。事件があって初めて止めることができた。「絶対に止めたくない」と思っていたエレナが、「止めないとダメだ」って思えるようになったのは、多分、焼き鳥のおもちゃを開けそうになって焼き鳥になりかけたところから。
その時のカチッという音が、エレナが流れるプールを止めないと、っていうスイッチに切り替わった音にすら思えた。
私は佐野さん親子みたいに命かけて自分の仕事の責任とれる気持ちにはなれないし、エレナみたいに流れるプールを止められる自信もない。
だけど、大きな被害が出る前に立ち止まって考えるくらいはできるかなと思ったから、もう少しこの映画を通して製作陣が伝えたいことについて、考えようと思った。もう一回は絶対観に行きますよ!!!

P.S.ゆるゆる感想
・毛利さん大好きかっこいい。刈谷さんとのタッグ圧が強すぎるけど掛け合いでホッとする。
・爆処の人かっこいい!小田島さんというらしい。爆処の男に弱い(コナンの萩原推し)。
・機捜出てくるところテンション爆上げすぎて、BGMに乗ってたら(私が)、伊吹も同じ感じでノリノリで可愛かった。勝俣くんに俊足枠取られないでねー!
・アンナチュラルで1番好きなのは8話、1番苦しいのは4話なんだけど、8話は焼死体の話で歯のデータベースのことがあったし、4話はブラック企業の話だったから、今作でどっちも思い起こさせられて刺さらないわけがなかった。
・爆発する時あからさまに分かりやすいからまじでヒヤヒヤする…。焼き鳥のおもちゃのとこと最後の404号室ハラハラしすぎてやばかった。ずっとハッハッってなってた。
・みんな、寝ようね。

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