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いやしのおかた
「おめでとう」
『え・・。わたしはしんじゃったのですか』
「ん。そんなわけない。こうして会話をしているのだから」
『え・・え??』
「でも現象界からみるとそれはしんだというのかもしれないね。まあなんであれとにかく、おめでとう」
『・・・。どうしてめでたいのです?』
「役割を全うしたからだよ。じぶんがかるくないかい?」
『・・かるいです、とても』
「まぁらくにして(というのもおかしいが)、くつろいで」
『は・・はぁ』
「すこしはなそう。あなたはこの状況におどろいているようだから」
『・・ええ。ふしぎな感覚です』
「この老人にきかせてくれないかね。人生とはどうだったかを?」
『たしか、わたしはうまれ・・さまざまな経験を・・そしてしんだ?』
「しんだというのは少しおかしなことばだね」
『でも・・いまは身体がない』
「おもしろい、おもしろい」
『面白くないですよ!まさかもうしぬなんて』
「現象界をみてみなされ。なにか異なるかね?」
『え・・・。なにも変わらずみんな生活している?』
「あなたはたしかにうまれてしんだかもしれない。でもそれは単なる死生観ではないだろうか。どうして消えることなきあなたが、しぬことをまるで悲劇のように語るのだろう?」
『・・消えない?わたしが??』
「はっはっは。現にいまここに在るのではないかね?」
『たしかに。でもわたしの死生観では最期は灰に・・』
「死生観とは字の如く、それそのものが観念ではないだろうか?」
『・・たしかにそうです』
「いまいちど、ふりかえるといい」
『え。なにをです?』
「あなたのあゆんだ人生を」
『え、うそ。あのときあのひとがしたことって??』
「あなたの掴んでいた観念に気づかそうとしていた。またあのときの感情はなぜ起きたのだろう。あのとき身体に顕れた病は?なぜあのひとはあなたにとってイヤな役を演じたのか・・などの理解がおとずれたかい?」
『・・・イヤして癒し?』
「はっはっは。現象の対象はすべて癒しの御方だよ。外側の現象も内側の感情も、ぜんぶあなたのために自動で起こる良き兆候なのだから」
『・・・。ほんとだ。ふしぎといまならわかります』
「現れが異なるため、とても気づきにくいだろう。それでも現世の鏡は完璧にあなたを写していた。完璧な人生以外存在しないゆえに」
『な、なんてことでしょう!』
「まぁいい。そんなことより大切なのは境界はどこにもないということだから」
『・・た、たしかに。いまはふしぎと境界をまったく感じません』
「ひとはあの世とこの世、在ると人間、自国と他国、自分と他人、強者と弱者、男と女、などなど。分離を作り出し、楽しむ」
『ええ。楽しいですから。勝った負けたなんてのも』
「うまれたしんだ。しあわせふこう」
『!!』
「分離、価値判断、決めつけ。ぜんぶ思考さんがみせる愛だよ。で、いまはどうかね。あなたのおっしゃる ” しんだ状態 ” は?」
『 ” ぜんたい ” を感じます・・わたしがやすらぎ?あい?そのもののような』
「それは生きてる間にもあなたはそうだったのではないだろうか」
『・・・そういわれると、そのようなときもあったと』
「観念とはおもしろい!生きてる証だねぇ」
『・・いま。その観念が薄まっていくのを感じます』
「それはそうだ。なぜなら現象界の思考や身体ではなくなったのだから」
『あの・・。わたしはいまどこに?』
「生前、あなたが天国と呼んでいたところだよ」
『ひょっとして』
「実は、ずっとそこにいた」
『・・・観念がそのようにみせて?』
「重かった。辛かった。でも嬉しいときも。至福のときも」
『あ、あ、ああ・・』
かれ、かのじょは泣きたかった
じんせいのそうだいさにきづき
おおくのものから
じっさいには
すべてのものから
あいされていた
ことにきづき
なきたくて
なきたくて
それは
もう
たまらなかった
でも
それは
もう
かなわなかった
なぜなら
すでに
からだでは
なくなっていたからー
「この老人にきかせてくれないかね。人生とはどうだったかを」
『いやしでした。しふくでした。あいでした。いのちでした。ひかりでした。てんごくでした・・う。うぅ・・』
「それらは、ほんとうのあなたのことなのだよ」
『!!』
「すばらしき人生をありがとう。いやしのおかた。しばらく空に在りなされ。あたたかな空に」
かれ、かのじょは
なにもいえなくなった
なにかをいう
ひつようもなくなった
聖心に
かえったから
かんぜんに
かえったから
まなびの
かのうな
色から
まなぶは
ふかのうな
空へと
みちみち
みたされ
あるに
とけてしまった
それでもまた
まなびたくなれば
へんかを
たのしみたくなれば
また
うまれるだろう
ひとつのまま
かみのことして
それまで
せいじゃくのなかに
やすらぎのなかに
しふくのなかに
ただ
ある
せかいに
いやされたまま
せかいを
いやしたまま
空にきづいた
いまのあなたと
おなじように
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