上手く逝けるといいのだが
髪屋に行ったんだな。2週間超えてくるとハゲなりにサイドの白い部分がモサモサと伸びてくるのが気になるのだ。
普段よりも長い時間、鏡の前で己の風貌と対峙することになる。
顎から下のたるみをやたら見せられるわけよ。
「オッサンになったなぁ·····」
親父の葬式の際に数十年ぶりに再会した叔父が開口一番で俺に言った言葉だ。
その叔父もその後一年ほどでポックリ他界してしまった。競輪場から自転車で帰る途中だったらしい。叔父が競輪が好きなことなどまるで知らなかったけど、不謹慎ながら俺も嫁さんも訃報を知った時に微笑ましく思ったもんだ。
親父が亡くなるひと月前に同居していた祖母···嫁母の母が亡くなったが、この人も"えっ”という感じで亡くなってしまった。
そこからの訃報はポックリものが続いていたんだな。誰もが望むであろう最期だがこればかり自分でどうこうできるものではない。親父も昼から出掛けていってサクッと今生を終わらせていたし、血筋で俺にもそういう終いを分けてもらえないモノだろうかね?
一昨日に母に電話してみると自宅も不在、携帯は電源の入っていないメッセージ。なんとなく気になるもので今朝電話してみようと思っていたところで母より着信。普段通り身の周りの話や映画の話をして終わったのだが、その後しばらくしてふたたび母から着信があって···。
何だ?と電話してみると
「実は北海道に行ってたのよ···お前に黙っているのも心苦しくて···チーズやお菓子を送るよ···」と。
「別にサラッと言えばいいじゃねぇかよw」
俺も変だがこの人も変な人である。