今日は俺の負けにしておこう
最近できたお店…ホームセンターなのだが生鮮食品なども扱っているところでね。
仕事帰りに寄ったのよ。嫁さんより早く帰れそうだし晩メシ何にしよう?的なのもあるからな。
ん!美味そうな揚げ物発見!ハムカツにチーズを入れてあるようだ。時間的に20%offのシールも付いてるし…よし買おう。
他に安いレトルトカレーやラーメンスープの元なんか持ってさぁレジへ…
お!セルフレジもあるんだ~、でもはじめてだし…オペレーターの居るレジは?と…
あらあら並んじゃってるじゃ~ん。
大丈夫だ、ビビるな俺よ、最近はレンタル屋さんで慣れてるじゃないか…というコトでセルフレジへこなれた感じを振りまきながら進む。
会計スタート!まぁこれ押さな始まらん。
バーコードをかざせ‥おぉレンタル屋さんと変わらんやん。
ところがハムカツが俺をラビリンスに叩き込む。
バーコードが無い…無いものかざしを試みたがヤツは冷徹だ。さぁどうする?…
少しヒヤヒヤしたが画面の中に“バーコードのない商品”なるボタンを発見!なんだよビビらせるんじゃねぇよ。押してみると“お惣菜、揚げ物”とかあるじゃ~ん。ブーッシュ!
金額の選択画面だ…そう…100円だったよ。
“ピッ”…
ん……………?
ヤツは人ではないので仕方ないが俺にやたらと商品を袋に入れろを繰り返している。
だってあなたは先にスキャンした商品の時はそんなこと言わなかったじゃん、このタイミングで入れろっていうの?
さてどうしたものか…「戻る」なんてボタンは無く「取り消し」なんてのも無い。「係員を呼ぶ」ボタンしかない。堂々とセルフレジに進んだ俺を見ていた人達の手前「係員を呼ぶ」ボタンは押すことが出来ないのだよ。
しばし戸惑いを挟んだがいい考えを思いつく。“入れたフリ”だ。ヤツはマシーンだからな。
ヤツの正面から隣の棚へ手に持ったパックを移動させるとようやく黙ってくれた。何処で見てんだよ、アンタ…
ヤツを見直しながらも、俺には霊長類ヒト科の雌の方々よりコイツ相手の方が得意なんじゃないかと思った。女性相手では俺は多分黙らせることは出来ないだろう。
え……が、20%offは?どうする?
「係員を呼ぶ」ボタンを押すと「係員を呼びますか?」→はいorいいえ表示→「いいえ」押す→戻る、を繰り返す…
ふと、視線を上げると通常青点灯をしているヤツのランプが赤くなっている。なんてお利口さんなんだ!一瞬でもヤツを可愛く思えた俺が悔しかった。
マズい!
「どうされましたか?」はマズい!
さぁどうする?「俺出来ません」アピールをして屈辱を纏いながらスタッフを呼ぶのか?
俺は一瞬で腹を決めた。
20%offの商品を値札のまま買うことを…
“俺そういうの全然気にしないから”を全身にみなぎらせ、ふんぞり返り気味に店を出た。
家に帰ると嫁さんからメール…
「遊んで帰るから晩御飯はいらないよ」…
わざわざ決めることもないのだけれど今日はどうも俺の負けらしい。