【掌編小説】色々あるけど結局ネト麻を打つ女
帰宅すると、わたしはメイクを落とし、部屋着に着替えた。
コンビニの袋からストロング系缶チューハイを取り出す。ひと息に、三分の一ほど飲んだ。
「あー、疲れたぁ。ホントやんなっちゃう」
仕事が終わったあと、部屋でひとり飲みながらぼやく。それが、わたしの日課だった。
今日のわたしは、本走で散々な成績だった。ゲーム代はフルバックだが、負けは自腹だ。今日はほとんどタダ働きに近い。本走は男性メンバーが優先で入るから、わたしはアウトが嵩むことはないが、男性メンバーの中には、アウトオーバーで給料が残せない者もいる。
雀荘メンバーより割のいい仕事はいくらでもあるが、ガールズバーなど夜の仕事は柄ではない。一般企業に応募する気力も失せていた。在学中の就活は全滅で、大学を出てもう一年近くメンバーを続けている。
結局、麻雀をしている時がいちばん楽しいのかもしれない。
缶チューハイを七割ほど飲んだところで、スマホが鳴った。夜番の成岡ケンジからのメッセージだ。
〈次はいつ会える? また二人で飲みに行こうよ〉
成岡は麻雀が上手く、ネット麻雀の段位もわたしよりずっと高い。それを鼻にかけているところは気に入らないが、何度か彼に麻雀を教わったこともある。ただ、一度飲んだ勢いでホテルに行って以来、しつこく誘われるようになった。
正直、彼とのセックスはイマイチだった。アレは麻雀の点棒みたいに細かったし、わたしの反応をいちいち気にしてくるところも気持ち悪かった。
シフトが違うこともあり適当にはぐらかしてきたが、それももう疲れた。
わたしは成岡に返信した。
〈もう二人で会うのは無理。ごめんね〉
すぐに返信が来たが、未読スルーした。
麻雀が強いところは魅力的だが、その他でマイナス要素が多い。
「わたしって、やな女なのかな……。ま、いっか。めんどい」
缶チューハイを飲み干すと、わたしはネット麻雀のアプリを開き、段位戦を予約した。