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名刺代わりの小説10選
先日読了した『同志少女よ、敵を撃て』(逢坂冬馬)が、すごく面白かった。
WWⅡの独ソ戦、ドイツ兵に母を殺された少女が復讐を誓い狙撃兵になる話。
史実とエンタメ性のバランスがいい。女性だけの狙撃小隊というのも、オタク心に刺さる。
『ストライクウィッチーズ』とか好きな人は刺さりやすいかも。
導入部は『鬼滅の刃』に近いものがあるな。
イリーナが富岡義勇。
主人公たちはめざましい活躍をするんだけど、英雄譚や武勇伝ではない。
戦争によって大事なものを失った少女が、別の何かを得て、心を埋める、そんな感じ。
見どころはたくさんあるけど、スターリングラードのアパートに立てこもってた四人の兵士は特に印象に残った。これはまあベタなヒロイズムだけど。
あとはクライマックスのタイトル回収シーン。
同志少女を、敵を撃て。
敵とは何か。
これは読者にも考えさせられるものだった。
俺は戦争が生む狂気、みたいな解釈をしたけど。
ともあれ、アガサ・クリスティー賞を受賞、直木賞候補にも挙がり、本屋大賞1位を獲得した本作は、俺の心に刺さりまくった。
これまで読んだ作品の中でも、かなり上位かも。
そんなわけで、以前もポストした「名刺代わりの小説10選」を更新した。
○水滸伝 1 曙光の章
— 🀋 ヤマサンブラック🀋 (@zantetsusen) January 28, 2025
○五稜郭残党伝
○柳生非情剣
○蝉しぐれ 下
○同志少女よ、敵を撃て
○海馬改版
○永遠の0
○冒険者たち
○黒い兄弟(下)
○深夜プラス1〔新訳版〕#名刺代わりの小説10選 #名刺代わりの10冊メイカー https://t.co/3Xz4fyqWiA
『同志少女よ、敵を撃て』、殿堂入り。
せっかくなので、先に挙げた『同志少女よ、敵を撃て』以外の作品を少し紹介したい。
📕『水滸伝』 北方謙三
言わずと知れたハードボイルドの大御所による歴史小説。
替天行道の旗のもとに集い、官軍と戦う108人の英傑たち。
読んでいて、血が滾ってくる。
本作がきっかけで、俺は小説を書くようになった。
それぞれ個性的で熱い人物ばかりだけど、特に好きなのは楊志と雷横。
多勢を相手にひとりで闘うようなキャラが好きだな。
俺は若いころ繁華街でチンピラ5人と喧嘩して半殺しの目に遭ったけど。
『楊令伝』『岳飛伝』と続き、「大水滸伝」と銘打たれていて、全50巻を超える。
『水滸伝』だけでも面白いので、ぜひ読んで欲しい。
文庫が毎月刊行されている『チンギス紀』とも繋がっていて、さらに現在、元寇を題材にした『森羅記』が連載中。バイタリティと熱意に敬服。
📕『五稜郭残党伝』 佐々木譲
戊辰戦争で官軍に降伏せず脱走した、蝦夷共和国軍兵士たちの物語。
新撰組が好きな人には刺さると思う。
あと『ゴールデンカムイ』好きな人にもおすすめ。
アイヌの戦士がめちゃくちゃかっこよかった。
📕『柳生非情剣』 隆慶一郎
隆慶一郎といえば、『吉原御免状』や『花の慶次』原作の『一夢庵風流記』などを挙げる人が多いと思うが、俺はこれ。
柳生十兵衛など、柳生一族を題材にした連作短編集で、直木賞候補にもなった作品。剣戟描写はもちろん、どこか物悲しさがあって好きな作品。
📕『蝉しぐれ』 藤沢周平
架空の藩である海坂藩に仕える下級藩士の青春物語。
秘剣を伝授された主人公が、かつて淡い恋心を抱くもすれ違いとなり、藩主の側女となった幼馴染を守りながら闘う姿に胸が熱くなる。
ラストシーンは俺にも蝉しぐれが聞こえるようだった。
いわゆる海坂藩ものは何作もあるけど、長編ならこれ。
短編だと『隠し剣孤影抄』。
映画化された「必死剣鳥刺し」が収録されているんだけど、俺が特に好きなのは「女人剣さざ波」。
不細工な妻が剣が不得手な夫に代わり果し合いをする話。
めちゃくちゃ泣いた。
藤沢周平は男女の機微や風景を情緒豊かに描くよね。表現がほんと美しい。
📕『海馬(トド)』 吉村昭
猟や飼育など、動物や生き物に関わる人たちの鬱屈を描いた短編集。
前科のある男が昔ながらのやり方で鰻を獲り店で出す「闇にひらめく」は、役所広司主演で映画化されている。
最後に救いがあり、心が温まる話が多いな。
やはり動物を題材にした短編集『羆』もおすすめ。
こちらは救いのない話ばかりw
たとえば金魚を飼育する「蘭鋳」という話。
主人に先立たれた若い後妻の連れ子、中学生の少年が主人公。
父の跡を継いだ兄が金魚を育てるようになるんだけど、兄嫁は男と駆け落ちして心中。
兄は父の後妻、つまり主人公の母と関係を持ち、金魚のことなんかどうでもよくなってしまう。
池は放置され藻で覆われ、金魚がぷかぷか浮かんでて、それを主人公が見つめる虚しいラスト。
ほかにもやるせない話が多い。
吉村昭は素朴だけど力強く、写実感ある筆致。大好きな作家だ。
📕『永遠の0』百田尚樹
これは結構読んでる人多いと思う。
戦闘機乗りだった祖父のルーツをたどる物語で、いろんな人から話を聞くうち、祖父の人物像、そして思いが明らかになっていく。
最後の特攻シーンは鳥肌もの。
岡田准一主演で映画化され、それも面白かったけど、特攻シーンの描写はやはり小説の方が断然いい。
まあこのラストは最後に読者にカタルシスを与えるサービスシーンなのかな。
平和な暮らしを願いながらも叶わない凄腕のパイロットが最後に技量を見せつける。しかし誰も殺さず散っていった、という。
📕『冒険者たち』斎藤敦夫
アニメ『ガンバの冒険』の原作と言えばわかりやすいかな。
実はガンバはシマリスが主人公の『グリックの冒険』に出てきたサブキャラだけど人気が高く、それを受けて書いたスピンオフが本作だったりする。
ノロイを筆頭とするイタチの群れと闘うネズミたちが熱い。
戦いの役には立たないがノロイたちの本性を暴くため犠牲になったオイボレが泣けたなあ。
続編『ガンバとカワウソの冒険』も面白いけど、こちらはメッセージ性が強くて、好みが分かれるかも。
📕『黒い兄弟』リザ・テツナー
アニメ『ロミオの青い空』の原作。
19世紀のスイス、イタリアの舞台に人身売買や少年労働の過酷さを描いた物語で、主人公は煙突掃除夫の少年。
これも感動したな。おすすめ。
ラストの一文が心に残る。
📕『深夜プラス1』ギャビン・ライアル
ハードボイルドの代表的作品。
エージェントの主人公が、富豪を護衛して国境を越える話。
相棒のガンマンはヨーロッパで3番目の腕なんだけど、アル中でメンタルが弱い。
さらに敵としてナンバー1,2の男たちが立ちはだかる。
スリリングで面白い。
ハードボイルドって結構勘違いされやすいけど、男たちの内面にある弱さが魅力なんだよね。
弱さを、タフな鎧で包む。
「男のやせ我慢」、これがハードボイルド。キザとか伊達とは違う。
とまあ、そんなわけで、俺の好きな作品を紹介したけど、バトルものに偏ってるなw
あまりジャンルに拘らず読んでるつもりだけど、好きな作品はやっぱり傾向が似ちゃうのかも。
子供の頃からアニメは『機動戦士ガンダム』や『ルパン三世』が好きで、漫画は小学生の頃から『ゴルゴ13』読んでたからね。
初めて読んだ『ゴルゴ13』の話がひどくてさ、絶海にある監獄島で、白人の看守が全裸の黒人の女囚に蛇をけしかけるの。
局部から潜った蛇が女の体内を喰い破り、女が断末魔の声をあげる。
小学校低学年でそんなの読んだもんだから俺の人格が歪んだのかもしれない、って漫画のせいにしちゃいかんな(==)ウム
ともあれ、これはおすすめ、という小説があれば教えてください。
あ、俺の小説も読んでみてください。
感想くれたら泣いて喜びます。
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