今さらだけど『大神』考察 その2

【その2 古代文明に馳せる想い】

※この記事はゲームのネタバレを含みます。

 大神での最終局面。カムイ地方での戦い。イッスンの故郷からの100年前の神木村、双魔神との戦い、そしてラストバトル。イリワク神殿のギミックはなかなか手強くもあったが、寄り道もせずにいっきにクリアしてしまったのは、それだけ夢中になってしまったから。

 そんなカムイ地方だが、実に興味深いステージだった。方舟ヤマトが出現したときは「これ宇宙に飛び立つ」と思ってしまった人は多いだろう。そして禁断の森の奥にはタイムゲートがある。急にSF色が強まるものの、カグヤのロケットやウシワカの空中基地などがうまく働き、大神と言うゲームの中に違和感なく納まっている。

 ゲーム内では、このカムイの地について知り得る情報は、双魔神についての伝説があること、かつてヤマトが落ちてきたこと、などあるが…、どれもこう…ふわっとしてる。

 さて、このカムイと言う土地について考えるきっかけになったのは、ラストバトル直前のヤマトでのボスラッシュだ。今まで倒した妖怪たちは、このヤマトを本拠地としていた。そいつらを今度こそやっつける為に、改めて戦うことになる。(ノリとしては、ロマンシングサガ3の四魔貴族みたいもんだろうか。)そんな皇ファミリー大集合なわけだが、双魔神の姿はなかった。そう言えば双魔神は、もとから皇の手下ではなかった。じゃあなんだったっけ。

 双魔神モシレチク・コタネチクは元々はこの地方で悪さをしていたが、過去の英雄がイリワク神殿に封印した、と言うのがゲーム内情報。しかしながら、それぞれ機械仕掛けのフクロウのような容姿であり、時間を止めたり早送りしたりする。妙にサイバーだ。

 ところでピリカが森に迷いこんだ時、夢の中に2羽のフクロウが出て来て…と発言していた。が、その言葉を聞いたイッスンが「フクロウって言やぁ、このカムイの守り神じゃねぇか」と返していた。このカムイにおいて、また元となったアイヌ神話においても、フクロウは守り神だ。

 双魔神が悪さをして封印されたと語り継がれる以前、元々のあの2体は守り神だったのではないだろうか。今回、双魔神がヤマタノオロチにより狂わされていたが、それはヤマト墜落の200年前にも起こり得る現象だ。その時の出来事が人々に語り継がれたのではないだろうか。

 もうひとつ、カムイには幽門扉と言われるタイムゲートが存在する。なんとなく方舟ヤマトと似た材質感。イッスンが言うには「神話の時代からある」らしい。そして誰が作ったかは忘れられてしまったが、今はコロボックルの一族が管理していると言う。『神話の時代』がどれほど昔か分からないが、ヤマトが墜落した200年前を指しているようにも感じられる。

 幽門扉を作ったのは地上人なのか、あるいは月の民なのか。ただ、少なくともカムイには時間を操るテクノロジーが存在していたのは確かだ。月の民と同等か、それをも越える超文明が栄えていた古代のカムイ。そこでは幽門扉と言うタイムゲートの他にも、時を操るフクロウの守護神がいて、打出の小槌を利用したコロボックルたちとの交流があったのだろう。

 加えて、双魔神が機械で「作られた存在」であり「オロチに操られた」とすれば、考察1での「方舟ヤマトは常闇の皇に乗っ取られたのでは」と言う推測とも、なんだか重なり合って見える。(一方で同じように暴走させられていた龍王については食い違うことになるが。)

 また、幽門扉の先が神木村と言う点も、シナリオの都合だけではない意味があると思われる。カムイに存在した高度な文明。しかしそれも、ヤマトの墜落や玄冬の蝕と言う災厄により滅亡に瀕していた。人々は最後の手段として、タイムゲートから過去の時代のナカツクニへと避難した。その時、幽門扉の管理をコロボックルに任せたのは、彼らが「蕗の葉の下」であり、妖怪たちから隠れられる存在であったからだろうか。

 この説を当てはめてゆくと、なかなか面白いことになる。まずカムイに住む人々は獣に変化することができる半獣人で、普通の人間がいない。100年前の神木村で、ムシカイに似た少年がUFOのようなものを持っていた。ツタ巻遺跡にあるロケットのような巨大土偶と、それを占領するように座していた女郎蜘蛛。これらのちょっとした点が、なんだかひとつになった気がする。そしてヤマタノオロチがナカツクニの神木村を襲ったのも、彼らがカムイ地方の住人の子孫であったからではないだろうか。

 時を越え生き延びた人々がいた一方で、何らかの理由で留まった者たちもいた。それがカムイに暮らすオキクルミやピリカ達の祖先だ。妖怪と戦うことを選んだのだろうか?それとも置き去りにされたのか?半人半獣の生物兵器だった…なんて、ちょっとダークな考察も面白いかも知れない。しかしながら英雄の剣クトネシリカは武器ではなく方舟ヤマトの封印を解く鍵であり、その力を発揮するには正しい心を持っていなければならなかった。古代人は戦いを好まない、平和で穏やかな性格だったのだろう。オキクルミらの祖先は、そんな古代人らを愛し、守ろうとした動物たちだったのかも知れない。

 200年前、方舟ヤマトの墜落によりナカツクニへと舞台を移した白野威らと妖怪の戦い。それは古代文明をも巻き込む大戦争だった。ゲーム内に残された数々の不思議は、作品中では語られることのなかった、もうひとつの物語の名残りだったのである。そんな角度から世界を見てみたら、また新たな発見があるかも知れない…。

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