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『Ghost of Tsushima』レビュー
先日、Ghost of Tsushima(ゴーストオブツシマ)をクリアしました。
評価の基準としては、ゲーム全体を100点として、
ゲームプレイ:30
演出:20
無二性:10
グラフィック:10
ストーリー:30
という私の中の割合で述べていきたいと思います。
ストーリーは、ネタバレをまとめて話すため、最後ということで。
ゲームプレイ 27/30
難易度はノーマル。
戦闘はかなり好感触。パリィや崩しを基本とした戦闘は、常に緊張感を強いられます。一対一のときはシンプルで、相手の動きを見極めて剣劇をすればよいですが、敵陣地に乗り込むのがストーリーの進め方なので、集団戦が多く、囲まれたときにどう一人ずつ倒すかの立ち回りを要求されます。
成長システムも解放のさせ方が面白く、盾兵特攻スタイルまでしか開放していないのに、槍兵や重兵が次々と出てくる序盤は、かなり慎重に闇討ちで敵を減らすことが求められ、徐々に仁が強くなるにつれてストレスから解放されていくのは絶妙です。
戦闘は、R2ボタンで型を切り換え、敵のスタイルに合わせて戦っていくのですが、この仕組みは時折厄介です。何故なら、R2ボタンはまた、物を拾うボタンでもあるからです。敵を倒してすぐに型を切り換えたいとき、足元にある死体の物資を拾ってしまい、瞬時に敵に対応できず、ダメージを受ける場面が多々ありました。
また、分かっているのに、敵に対応してない型を使うと、結構時間を取られる説明文が発生することが数回あり、少しストレスを感じました。
このゲームにおけるバトルのもう一つの売りは、闇討ちと称されるスニーキングプレイですが、こちらのクオリティは正直低いかなという感じです。というのも、敵のAIが単調で、視界にいなければ何の反応もなく、視界に入ってから敵と認知されるまでの時間が長いので、慣れてくると若干の作業を感じました。メインクエストの中では、絶対にふり返らない、サンドバッグのような敵もいました。
探索はとても充実しています。探すものが多いのはもちろんですが、神社などは、いざ場所についてから、ミニダンジョンのようにフリーランを駆使してアクロバットな攻略をしていくことになり、毎回工夫があるので満足でした。登り旗や文書も、目的地に着いてから、屋根裏や崖沿いに隠されていることがあるので、注意が必要です。
ツシマでは、他のゲームと違い、目的地表示にマーカーを使うのではなく、風や鳥が主人公を導いてくれるのですが、個人的にはかなり好きでした。方角のみが示されるため、具体的な距離感が分からず、蒙古や賊をかいくぐりつつマップを進むのは、旅をしている実感が強く感じられます。
しかし、拠点内では風も鳥も発生せず、あまり役立ちません。やや広めの拠点では、このどこかに弓職人や甲冑師がいるのは分かっているが、どこにいるか分からない状況に陥ります。そこはけっこう不親切な仕様かなと思いました。サブクエストでは、足跡や痕跡を探す内容が多くありましたが、どうも見えにくかったり、どこにあるのかわからなかったりと、不満を覚えました。そこは部分的にマーカーを使っても良かったのでは。
また、特筆すべきこととして、ロード時間の短さがあります。マップ移動をして、合間にスマホを持ち、パスワードを入れ終わったと思えば、もうロードが完了しています。恐るべき速さです。
PS5では、超高速SSDによりロード時間が存在しないとされていますが、それよりは長いとはいえ、次世代ゲームを疑似体験することができました。
もちろん良いことでしたが、一点だけ不安に思ったことがありました。ロード時間が早すぎると、プレイヤーは瞬間移動能力者になってしまうのです。オープンワールドのゲームによっては、徒歩や馬移動の面倒くささを今まで以上に感じることになるのではないかと思いました。
ゲームプレイは、ほとんど熱中して楽しむことができますが、ときどき現れる不満に一瞬我に返らされます。とはいえ、ちょうどいい難易度で、時間制限のあるクエストもなく、自由に楽しめる良いアクションゲームでした。
演出 19/20
まず、音楽がとてもいいです。壮大すぎず、平易すぎず、戦闘の邪魔になることなく、場面場面に緊張感をもたせてくれます。
アジアの楽器も多用されています。蒙古との戦闘では、ホーミーを基調にしたBGMが流れていて、新しい音楽体験を味わいました。
そして黒澤明風の一騎打ち演出も良かったです。ただ、何回もこれをみせられるので、もう少しパターンが欲しかったところ。
人物の表情はもう少し頑張ってほしかったです。個々の感情をぶつけるシーンでも、表情の演技が薄めなので、あまり感情移入できませんでした。リップシンクも甘め。
無二性 6/10
対馬という舞台、鎌倉という時代設定、元寇という舞台設定は、手垢のつきまくったサムライものの中でも独自性があり、ユニークでした。しかし、作家性という点ではどうでしょう。
結局、このゲームの焦点は武士道の誇りに焦点が当てられており、魅力ある時代背景を十二分に活かすことができていないと感じました。時代と思想との齟齬をいうのではなく、その齟齬から価値ある意味を見いだせなかったことが残念です。
あえて元寇である意味、あえて鎌倉で武士道をやる意味がなく、まあ黒澤やりたかっただけだしいいか、と納得するまででした。しかし、黒澤明が同じ背景で映画を作ったならば、決してこのゲームのようにはならなかったでしょう。
グラフィック 8/10
景色はとてもきれいです。ちょっと豪奢すぎるくらいに(笑)。日本の景色いいとこどりで、行っても観光地みたいな土地でした。
風景グラで惜しかったのは、雪の表現でしょうか。ゴーストオブツシマでは、オープンワールド最高峰のグラフィックですが、もっといい積雪のグラフィックはたくさんあり、ちょっと遅れてるかなと思いました。
人物の顔は、残念ポイントです。主要キャラ以外の顔はパターンがあまりないように見えます。石川先生のサイドクエストでは、巴の顔を作っていないんじゃないかと冷や冷やしました。
ストーリー 25/30
※以下、ネタバレ注意
ストーリーにおいては、いくつかのポイントがありました。
・叔父上をお救いするまで
ゲームとしてはよくある作りです。ボスにとらわれた主人を、主人公が助けに行くというもの。マリオがまんまそうですからね。
さらに和風アクションでこれをやるものですから、直近でGOTYを獲得した『隻狼-SEKIRO-』を彷彿とさせます。しかし逆に言うと、「外さない」ストーリーテリングと言えるでしょう。
やや、「冥人」になるまでが強引でしたが、ご愛嬌。
・竜三の裏切り
一番ピンと来なかった箇所です。まあ裏切るのは良しとして、その理由がいまいちでした。素直に、「モンゴルが優勢だから」「昔からお前が気にくわなかった」ならまだよかったと思います。何か、作劇上の都合といった感じを受けてしまいました。
・豊島にて
強く印象に残っているのは、百合とのやり取りです。この中で、主人公のキャラクターがより深みを増し、話の出来も、後日談となる百合の話を通して良かったです。サイドクエストの中で、一番感情に訴えかけられました。
・たかの死
少し予想していました。衝撃はそこまで強くなかったです。
・蒙古毒殺
おそらく、これは仁の唯一にして最大の失敗でしょう。後に仁自身、少し後悔するような発言もありました。
仁はこのとき、蒙古の火薬を湿らせる工作をするにとどめれば良かったのです。そして叔父上に、「誇り無き火薬を封じ、誇りある戦いに持ち込みましょうぞ」と言えば、説き伏せられた可能性は大いにあると思います。
サブクエでときどき言われていた、「殺しを楽しんでいませんか?」の答えが出ているのかは分かりません。しかし、これまでの冥人としての闇討ちの数々や、毒という確かな手段が、仁の枷を少しづつ外していったのは間違いないでしょう。
私としては、心底気の毒なのは百合です。忠誠心ある彼女が、一度は躊躇い、ついには押し切られて作った毒が、このような事態を招き、ついにはお家の没落をも招いてしまったことを思うと、あの清廉な老婆が可哀そうに思えて仕方ありません。特に、私は百合の最期を見届けて話を進めたので、心が痛みました。
・愛馬の死
これは驚きました。プロットアーマーに守られている存在と思っていたので…。このゲーム一番の衝撃がお馬さんの死とは。
・志村参戦
手紙を届けるストーリーをわざわざ経ただけに、もっと劇的な登場をして欲しかったです。もっとピンチになってから来てもらうとか。
変な挿入だったので、ああ来たんだとしか思いませんでした。
・ラスボス
最後が志村とは、まあこうしたゲームの形式美みたいなラスボスですが、ハーンが最後でも綺麗な終わり方だったのではないかと思われました。
・キャラクター
石川先生や政子殿のキャラクターはとても良かったです。特に石川先生良かったですね。志村も、仁の父親から見ても愚直な性格と評されていたのが地味に好きでした。
一方のモンゴル側は、キャラクターに深みは一切感じられず、テンプレートな侵略者でした。まあそこを描くと主題がぶれるかもしれませんが、サブクエで助けてもいいような善性のモンゴル兵も見てみたかったです。
総評 85/100
今世代のオープンワールドゲームの中でも、しっかりと地に足着いた戦闘や美麗なグラフィックをもつ良いゲームです。
ストーリーはやや盛り上がりや深みに欠け、お使いの多さが目立ちますが、全体的に高水準でまとまっており、PS4最終盤のAAAタイトルとして、胸を張って殿を務め上げた一本だと思います。