日本のハンコ文化がもはや謎
昨年(2022年夏)日本に帰った時、唯一解約せずに持っていた地元の地方銀行の口座をやっと解約しました。が、ハンコひとつのせいで、これが結構ひと苦労でした。
私は日本を離れて25年以上たち、すでに日本に住所はないし、日本国籍からも離脱した身なので、その口座も、それはそれは長い間、休眠しっぱなしだった口座です。
他の日本の主要銀行口座と郵便局口座は、まだイギリスで博士課程をしていた時期に、一度日本に帰省してぜんぶ解約しました。じゃ、なんでその地元銀行の口座は残していたかと言うと、それは、私がまだ日本で高校生だった頃に、母がわたし名義で作ってくれた口座だったからです。
当然、お金はすでにイギリスに移してあったので、その地方銀行の私の口座残高は150円くらい。少額なので返金なしでもいいくらいです。なので、すぐ済むだろうと思ってましたが、これが甘かった。
ハンコの法的効力って何よ
口座解約に必要なものはググればすぐわかりますが、該当の地方銀行のサイトには、「通帳、キャッシュカード、身元を証明するもの、または印鑑」とあったので、私は 通帳、キャッシュカード、そしてパスポートを持参しました。
が、実家近所の銀行窓口の対応は、「届け印をお願いします」。
え?、「または」って書いてあったのに、オプションじゃないわけ?
持っていませんと言うと、「解約に必要です。決まりですから」との返事。
いや、あいにく私は昔々に日本を離れ、印鑑なんぞは既に紛失(実は断捨離)しています等々、日本をいつ出てどーのこーのと経歴を長々と話すハメに。
すると行員さんの返事は、「じゃ、その辺の文具店で、認め印を買ってきてもらえますか。それを新たな届け印として登録した上で解約手続きにあたります」
はぁ?
その辺の文具店で売っている認め印でいいの? それで何の証明になるの?
それに、私の姓は珍しいので既成の印鑑はまずありません。別注する必要があり、それには時間がかかります。
そもそも、当の本人が「顔写真付きの証明書(イギリスのパスポートですが)と通帳とキャッシュカード」を揃えて持参しているのに(それも残高150円)、それ以上にどんな証明がいるというのか。それらに加えて、誰でも買えるような文具店の認め印が必要って意味不明。
こういう、日本企業の典型的な「決まりですから」対応には、同じ方法で反論するしかありません。経済産業省の押印に関するQ&Aによると、
「(特段の定めがある場合を除き) 契約に当たり、押印をしなくても契約の効力に影響は生じない」
「文書の真正な成立は、相手方がこれを争わない場合には、基本的に問題とならない」
と、あります。
それでも必要なのですか? なぜ必要なのですか? 納得のいく理由を説明して頂けますか?、と詰め寄ると、窓口担当者は「えーっとぉ… あの、上司に確認します…。」
結果、最終的には署名で対処してもらいました。そして、「はい、こちら、残高の150円でございます」と、きっちり返金までして頂きました。
一件落着です。やれやれ。
最近では、日本でもハンコ廃止が進んでいるようですね。社印なんかはさておき、個人レベルの脱ハンコは是非とも推進していただきたい。
今となっては私には関係ありませんが(多分)、脱ハンコは、日本社会全体の生産性向上のためにも必須です。