実は職場でのハラスメントが多いらしい北欧
ハッピーな国のイメージが強い北欧ですが、職場でハラスメントや暴力の被害をうけたことのある人の割合において、北欧5カ国すべてが、世界順位でワースト10位内に入っています。
これは、イギリスの慈善団体であるロイド・レジスター財団 (Lloyd’s Register Foundation) が定期的に発表している世界リスク調査によります。
ハラスメント調査で上位を占める北欧
2021年度のリスク・ランキングは以下の通りです。カッコ内は「何らかのハラスメントを職場で受けた経験がある」と答えた人のパーセンテージです。太字表記が北欧5カ国です。
ワースト 1位:オーストラリア (49%)
ワースト 2位:フィンランド (48%)
ワースト 3位:デンマーク、アイスランド、ノルウェー、米国、ニュージーランド (いずれも42%)
ワースト 8位:カナダ (41%)
ワースト 9位:ギリシャ (38%)
ワースト10位:スウェーデン (37%)
このリスク調査は、あくまでも「職場で」起こっているハラスメントについてです。つまり、たまたま運が悪かったとか行き当たりばったりではなく、職場という組織環境内における、特定の相手へのハラスメントです。
この調査結果、なんで日本のメディアは取り上げないんでしょうね。
北欧のことを悪く言ってはいけないという決まりでもあるんでしょうか。
ただし付け加えておくと、このランキングで、ハラスメントを受けたとする人の割合が逆に低い国は、パキスタンやカザフスタンとなっています。 えー、それってどうなん?上下関係が厳しいだけじゃないのかな?
これを踏まえると、上記のワースト10カ国にランクインしている欧米の国々は、ハラスメントを許容しない、ハラスメント問題に対して敏感、ゆえに人権尊重の認識がむしろ高い国、とも言えます。
まぁ、パキスタンやカザフスタンで職場ハラスメントが少ないとか言ってる結果を鑑みると、世論調査ってあてにならないな、とも思います。そして、北欧信者の皆さんにすれば、「だよねー」と胸をなでおろしてスルーされるかもしれません。
ですが、ハラスメントに対してリスクを覚悟で抵抗を試みたり、実際に法的措置をとるケースは、北欧の国々であっても必ずしも多くはなく、泣き寝入りに終わることも多いようです。
ハラスメントのタイプ
この世論調査の結果をざっくり要約すると、北欧諸国で最も一般的に経験されたハラスメントの形態は、「心理的ハラスメント」だそうです。北欧5カ国において、職場での暴力やハラスメントの経験を報告した人の4分の3以上が、この種の虐待で精神的被害をうけた、としています。
ここで2点ほど私見を言わせてもらうと、一つは、北欧好きな方々の夢を打ち砕いて申し訳ないのですが、心理的ハラスメントは確かにかなりあります。記事末尾でかいつまんで書きますが、私の職場でもよく見聞きします。
2点目として特記しておきたいのは、デンマーク人に限って言うと(他の北欧諸国については詳しく知らないので)、デンマーク人って、メンタルが弱い人が多い気がします。打たれ弱いというか、批判に慣れていないので、逆ギレする人も結構います。
だからといって、職場で心理的ハラスメントをうけた人たちの心の傷を軽んじるつもりはありません。ただ、上記の二点が相まって、この指数が高くなっているように思います。
ちなみに、職場で性的暴力や性的ハラスメントを経験した割合が高いのは、アイスランド(39%)とスウェーデン(38%)です。これはなんか納得します。性に解放的であるがゆえにセクハラへの認識が低い、というマイナス要因と、男女平等の意識が高いので、少しの蔑視的発言や態度であっても女性側がそれを良しとしない、というプラス要因の両方が関係しているんではないでしょうか。
一方、フィンランドでは、身体的暴力やその種の嫌がらせを経験した人が多い結果(35%)となっています。職場で「身体的暴力」ってどういうことなんだろう…。フィンランドについては私はあまり知らないので、これについては、フィンランドに詳しいかたにお任せします。
妬みによるパワハラが多い
職場での心理的ハラスメントとして真っ先に思い浮かぶのが、妬みによるものです。上司が、優秀な部下を疎外する、部下の昇進を阻む、部下の功績を横取りする、などなど。
私はこれら全部を職場で目の当たりにしました。私自身は平々凡々な研究者なので標的にされていませんが、以前書いた、理由なくリストラされた同僚のピーターは明らかにこれでした。彼は大学の人事や労組にも相談しましたが、デンマークでは、人事や労組はだいたい経営者側に迎合しがちなので、あまり役に立ちません。
なので、ピーターが仕事で成果を上げれば上げるほど、学部長はそれを妬んで昇進させず、ピーターの業績はガン無視して大学経営層にはそれを隠し通し、重要な会議からも外し、挙句の果てには人気があった彼の講座をいろいろ理由をつけて中止・閉講させました。そして、ピーターが人事や労組に相談していることを知ると、ピーターにたいする学部長のパワハラは陰湿さを増していきました。ちょっと見ていられなかったです。
うちの学部長とピーターは双方ともデンマーク人で、同じ職階で同年代だったため、学部長はライバル意識があったのだと思います。
嫉妬の対象となる要素が多いとパワハラの標的になる可能性がありますが、かといって、仕事の能力が低かったりおどおどしていると、それはそれでハラスメントの対象になりがちです。どうしたらいいんでしょうね。
確かなのは、職場でのハラスメントはどの国においても深刻な問題であるという点です。日本の職場もいろいろ人間関係は大変だとは思いますが、北欧の職場環境にも闇があることを念頭に置いておくべきでしょう。