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C++プログラミング入門―初心者からその先へ: モジュール化 (セクション11-3/25)

  • ローカル、静的ローカル、グローバル変数など、スコープ規則の基本とその実装方法を理解した。

  • 関数呼び出しスタックの動作、インライン関数によるオーバーヘッド削減、再帰関数の基本的な仕組みを学んだ。

  • これらの概念を用いて、モジュール化されたメニュー駆動型プログラムの設計と実装に挑戦した。


C++プログラミング入門~超初心者から先へ~の「セクション11:関数」の最終パートでは、さらに高度でありながら非常に重要な概念について掘り下げます。ここでは、スコープの仕組み、関数呼び出し時に内部で何が起こっているか、インライン関数がパフォーマンスに対してどのようなヒントを提供できるか、そして特定の問題に対して再帰をどのように活用するかについて学びます。また、これらすべての内容を実践プログラムにまとめ上げる最終チャレンジにも最後に触れます。


スコープ規則の理解

スコープとは、プログラム内で識別子(変数や関数など)がどこで利用可能であり、どれだけの期間メモリ上に残るかを決定する仕組みです。

  1. ローカル(ブロックスコープ)

    • ローカル変数:関数の本体や { ... } ブロック内で宣言された変数です。

    • これらは、囲む中括弧内でのみ可視です。

    • ライフタイムはそのブロックを抜けると終了します。

    • 関数パラメータも同様に、その関数のブロックスコープに属します。

  2. 静的ローカル変数

    • 関数内で static キーワードを用いて宣言される変数です。

    • 初回の関数呼び出し時にのみ初期化され、その後の呼び出しでも値が保持されます。

    • スコープは関数内に限定されますが、そのライフタイムはプログラム全体にわたります。

  3. グローバルスコープ

    • すべての関数やクラスの外で宣言される識別子です。

    • 宣言後はプログラム全体で可視となります。

    • ベストプラクティス:グローバル変数は可能な限り使用を避けるべきです。グローバル定数は一般的に許容されますが、変数の場合はデバッグや保守性が低下する可能性があります。

以下はスコープの振る舞いを示す簡単な例です。

int num {300};  // グローバル変数

void global_example() {
    std::cout << "グローバル変数 num は: " << num << std::endl;
    num *= 2;  // グローバル変数 num を変更する
}

void local_example(int x) {
    int num {1000};  // local_example 内のローカル変数(グローバル変数を隠蔽)
    num = x;         // これはローカル変数のみを変更する
}

int main() {
    int num {100};   // main() 内のローカル変数(グローバル変数を隠蔽)
    {
        int num {200};  // この内側のブロック内でのみ有効な変数
        // ...
    }
    // ...
}

関数呼び出しスタック

C++は実際に関数を「実行」する際に、コールスタック(プログラムスタックとも呼ばれる)を使用します。各関数呼び出しは次の処理を行います。

  1. アクティベーションレコード(またはスタックフレーム)をスタックに「プッシュ」します。

  2. パラメータ、ローカル変数、戻りアドレスなどを保存します。

  3. 関数が終了すると、そのアクティベーションレコードはスタックから「ポップ」され、制御は呼び出し元に戻ります。

スタックは有限であり、後入先出(LIFO:Last-In, First-Out)構造に従います。そのため、非常に多くのネストされた関数呼び出しがある場合、スタックオーバーフローが発生する可能性があります。

次の例は、main() から func1() を呼び出す場合の概略です。

int func1(int a, int b) {
    int result = a + b;
    return result;
}

int main() {
    int x = 10, y = 20;
    int z = func1(x, y);
    // ...
}
  1. main はローカル変数 x, y, z を持って実行中です。

  2. func1 が呼び出され、新たなスタックフレームが作成され、パラメータ a, b とローカル変数 result が格納されます。

  3. func1 が完了すると、そのスタックフレームは取り除かれ、戻り値が main に返されます。


インライン関数

関数呼び出しにはオーバーヘッドが存在します。非常に小さく頻繁に使用される関数の場合、インライン化により呼び出しのオーバーヘッドを減らすことができます。インライン化は、関数呼び出し箇所に関数本体のコードを直接展開することで実現されます。

inline int add_numbers(int a, int b) {
    return a + b;
}

int main() {
    int result = add_numbers(100, 200);  // 関数呼び出しの代わりに直接加算コードが展開される可能性がある
}
  • inline キーワードはコンパイラにインライン化を提案しますが、必ずしも保証されるわけではありません。

  • 現代のコンパイラは、非常に短い関数を自動的に最適化してインライン化することが多いため、特別な場合以外はあまり気にする必要はありません。


再帰:自分自身を呼び出す関数

再帰関数は、関数が自分自身を(直接または間接的に)呼び出すものです。代表的な例として、階乗やフィボナッチ数列の計算、木構造の走査などが挙げられます。再帰関数を書く際の要点は次のとおりです。

  1. 基本ケース(Base Case):再帰を終了させるための単純な条件。

  2. 再帰ケース(Recursive Case):問題のサイズを縮小しながら自分自身を呼び出す処理。

例:階乗 (Factorial)

unsigned long long factorial(unsigned long long n) {
    if (n == 0)
        return 1;               // 基本ケース
    return n * factorial(n-1);  // 再帰ケース
}
  • n が 0 のときは再帰が停止し、1を返します。

  • n > 0 の場合、factorial(n-1) を呼び出してその結果と n を掛け合わせます。

例:フィボナッチ数列 (Fibonacci)

unsigned long long fibonacci(unsigned long long n) {
    if (n <= 1)
        return n;               // 基本ケース(0または1)
    return fibonacci(n-1) + fibonacci(n-2); // 再帰ケース
}
  • 基本ケースとして、n が 0 または 1 の場合、該当する値を返します。

  • n > 1 の場合、fibonacci(n-1) と fibonacci(n-2) の和を計算します。

再帰を使用する際の注意点

  • 問題に自然な再帰構造がある場合にのみ使用してください。

  • 十分な再帰の深さに対応できるか、または最適化(メモ化など)を行う必要があります。

  • 再帰的な解法は直感的で明快なコードを提供することが多いですが、深い再帰ではスタックオーバーフローに注意が必要です。


セクションチャレンジ:すべてを統合する

セクション11の最後のチャレンジでは、以前のセクション9で取り組んだ「整数のリストを管理するメニュー駆動型プログラム」を、今回は関数を用いてモジュール化するという課題に再挑戦します。このチャレンジでは次の点に注意してください。

  1. std::vector<int> は必ず main() 内に宣言し、そのオブジェクトを必要な関数に渡すこと。

  2. 小さく焦点を絞った関数を作成する。

    • メニュー表示用の関数

    • ユーザーからの入力を読み取り、大文字に変換して返す関数

    • 各メニューオプション(例:数字の追加、平均の計算、最小値・最大値の表示など)ごとに関数を作成する

  3. 例えば以下のような構成が考えられます。

#include <iostream>
#include <vector>
#include <cctype>
#include <iomanip>
using namespace std;

// 1. プロトタイプ宣言
void display_menu();
char get_selection();
void print_numbers(const vector<int> &numbers);
void add_number(vector<int> &numbers);
// ... 他の関数もプロトタイプ宣言

int main() {
    vector<int> numbers {};
    char selection {};
    do {
        display_menu();
        selection = get_selection();   // ユーザー入力を大文字に変換
        switch (selection) {
            case 'P': print_numbers(numbers);        break;
            case 'A': add_number(numbers);             break;
            // ... 他のケース
            case 'Q': cout << "Goodbye\n";             break;
            default: cout << "Unknown selection\n";
        }
    } while (selection != 'Q');
    return 0;
}

// 2. 関数定義
void display_menu() {
    cout << "\nP - 数字を表示する" << endl;
    cout << "A - 数字を追加する" << endl;
    cout << "M - 数字の平均を表示する" << endl;
    cout << "S - 最小の数字を表示する" << endl;
    cout << "L - 最大の数字を表示する" << endl;
    cout << "Q - 終了する" << endl;
    cout << "\n選択を入力してください: ";
}

char get_selection() {
    char s {}; 
    cin >> s;
    return toupper(s);
}

void print_numbers(const vector<int> &numbers) {
    if (numbers.empty())
        cout << "[] - リストは空です" << endl;
    else {
        cout << "[ ";
        for (auto num : numbers)
            cout << num << " ";
        cout << "]" << endl;
    }
}

void add_number(vector<int> &numbers) {
    int num_to_add {};
    cout << "リストに追加する整数を入力してください: ";
    cin >> num_to_add;
    numbers.push_back(num_to_add);
    cout << num_to_add << " が追加されました" << endl;
}

// ... 他の機能(平均、最小、最大の計算など)も同様に小さな関数として実装

この設計は、プログラムのロジックを個々の独立した、保守しやすい部分に分割するものであり、「ボスと部下」のアナロジーに基づいて、メインの関数は各機能を呼び出すだけのシンプルなものになります。


総括

セクション11の最終レッスンでは、以下の点を学びました。

  • スコープ規則

    • ローカル、静的ローカル、グローバル変数の違いとその振る舞い。

  • 関数呼び出しスタック

    • 各関数呼び出しがどのようにスタック上にアクティベーションレコードを作成し、終了時にそれを除去するか。

  • インライン関数

    • 短い関数の呼び出しオーバーヘッドを削減するためのコンパイラへのヒント。

  • 再帰関数

    • 自分自身を呼び出す関数の仕組み、基本ケースの重要性、そして再帰と反復のトレードオフについて。

  • 最終チャレンジでは、これまでのすべての関数の概念を統合し、モジュール化されたメニュー駆動型プログラムを作成することで、実践的な設計方法を学びました。

これらの概念を習得することで、より高度なC++プログラム(例えば、データ構造やアルゴリズム、そしてオブジェクト指向プログラミング)に取り組むための堅固な基礎が築かれます。C++の関数の仕組みや再帰、インライン化などの高度な機能を理解すれば、さらに複雑なプログラムも自信を持って設計・実装できるようになります。

ハッピーコーディング!


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