見出し画像

金沢から岡山へ、女ひとりリトルカブで走った2日間450kmの旅路 ~後編~

10年前の夏、女子大生だった私は、思い立って金沢から岡山までカブで帰省しました。大きなザックを荷台にぐるぐるとくくりつけ、地図片手に原付ツーリング。トラブルを人情(?)で乗り越え、なんとかたどり着いた中間地点の琵琶湖。48時間の旅の後半戦、そしてその後のお話です。

前編はこちら

峠を越え、眼前には琵琶湖。450kmの旅も折り返しです。
日も暮れてきたので、琵琶湖沿いでひとやすみ…が、しかし!

宿は漫画喫茶。なのにうっかりリゾート温泉施設へ

1日目の宿は、琵琶湖沿いの漫画喫茶と決めていました。
漫画喫茶の場所と営業を確認したあと、目星をつけておいた銭湯へ。
が、ここで誤算が生じます。

地図を追ってたどり着いた銭湯は、イメージしていたスーパー銭湯(入館料600円ぐらい)とは違い、入館料1600円のリゾート温泉施設だったのです。
(金沢でいえば、極楽湯を想定していたのにテルメだった、みたいな感じ)
500円を越えると財布の紐が固くなるレベルの貧乏学生だった私は、困惑の嵐…

リトルカブは、大変燃費の良い車両です。
タンクには4Lしか入りませんが、なんとこの道中での給油回数はわずか4回。
つまり、交通費は2000円程度だったのです。

にもかかわらず、ここでリゾートスパに1600円…?!
なんたる不覚。痛恨の出費。
単純なリサーチ不足とはいえ、かなり悔しい思いをしたのを覚えています。

とはいえ、大きなお風呂でゆったりくつろいで旅の疲れも癒せたので、今となっては結果オーライかな…
漫画喫茶でぐっすり眠り、翌朝の京都の山越えに備えました。

京都の山で迷子、姫路でも迷子

滋賀から京都の市街地を抜ける道中、ついに迷子になりました。
まさかの、地図に載っていない道に迷い込んでしまったのです。
周りを見渡しても山、人通りはなく…
ここで最終手段を使うことに決めました。
そう、それは「GPS」。

google mapが標準装備されている現代と違い、10年前の当時はまだスマホが普及していませんでした。
私が持っていたのは、スライド式のガラケー。
GPSを使用するには、通信料がかかります。
さいわい、電波はありました。
よし、なるべく短時間で方向を把握するぞ…と覚悟を決めて、地図ツール(当時はアプリという言葉も浸透してなかった)を起動しました。

その後、無事に迷子の危機を脱し、国道2号線を南下。
大阪、神戸を過ぎ、そろそろ姫路。
岡山も見えてきた…!というときに、これまたどこでどう間違えたのか、原付バイクは進入禁止の自動車専用道路に迷い込んでしまいました。

焦りつつ、料金所の人に間違いを告げ、なんとかUターン。
ちなみに入り込もうとした道路は「姫路バイパス」でした。
(でも姫路バイパスは2000年に無料化されているそうなので、料金所ではなかったのかな…)

ラスト30kmで雨に降られる

その後、順調に海沿いの道を南下し、岡山県内に入ります。
見慣れた景色が見えてきたとき、
「わぁ、帰ってきた!ほんとにカブで帰ってこれた!」
と、まだ到着していないのに達成感で鳥肌が立ったのを覚えています。

が、感動もつかの間…
ラスト30km地点から、雨が降り始めたのです。
いままで瀬戸内らしいいいお天気だったのに…まさかのここで運が尽きるとは。
雨足は強くなるいっぽう、実家まであと数km…!
ここまできたらもう、走り抜けるしかない。

雨に降られながら、なんとか実家までたどり着いたのでした。
長かった…

私がこの旅で手に入れた3つのもの

この旅で私は、大きなものを3つ手に入れました。

まずひとつめは、「大きな大きな達成感」。
ふたつめは、「10年たってもまだネタにできる武勇伝」。
そしてみっつめは、「」です。

ひとりっ子で若干箱入り気味の娘だった私は、実家の親にはカブで帰るなんてとてもじゃないけど言えませんでした。
私がカブに乗って到着したのを見て、家族は大騒ぎ。
無事で帰ってきて良かった、でもあまりにも無茶だ!ということで、
ラッキーなことに?カブで帰省したのは往路のみで、復路は祖父が持て余していたヴィッツで金沢まで戻ることになったのでした。
(農家なので軽トラを普段使いして、ヴィッツはたまにしか使っていなかったんですね)
ザ・おじいちゃんカーという感じのシルバーのヴィッツはそのまま私の足となりました。
金沢の冬は雨と雪が多いので、原付バイクでは移動できない(なにより寒いし)時期があり、自分の車があることは本当にありがたかったです。
傷だらけのボコボコになりながらも(運転は好きだったけど下手だった)、私や大学の友人たちを全国各地へ運んでくれたのでした。

思い出のヴィッツ(岡山ナンバー)も、3年前に17万kmの走行距離を経て廃車に。
旅、家族、友情、恋愛などなどの数知れない思い出が詰まった、愛すべきコンパクトカーでした。

あのリトルカブは今…

岡山で乗り捨てることになってしまったリトルカブ。
リトルカブは今、実家で叔父が乗り回しているそうです。
ちなみにナンバーは金沢のまま、年に1000円の自動車税は私が払い続けています(笑)

いいなと思ったら応援しよう!