キャリコンことば辞典その5:「伝え返し」と「バックトラッキング」…効果的に使えば信頼関係につながる?
キャリアコンサルタントの実技試験対策で基本とされる「伝え返し」。
キャリコンの試験勉強したことがある方はもちろん、カウンセリングやコーチング、コンサルティング、営業…ビジネス上や恋愛・人間関係で大切なスキルだと言われます。
「伝え返し」と一緒に知っておきたいのが「バックトラッキング」です。
キャリコンの実技対策ではこの言葉は聞きませんが、実は「伝え返し」と同じくらい大切だと思っていることばです。
この記事では、キャリアコンサルタントの視点から「伝え返し」と「バックトラッキング」の違いと効用について考察します。
「伝え返し」と「バックトラッキング」の違い
コミュニケーションを取る上で、実は「伝え返し」も「バックトラッキング」も、誰もが当たり前のようにやっています。
これがビジネスでの商談や国家資格キャリアコンサルタントの実技試験…となった途端、難しく感じてしまうんです。
まずは、「伝え返し」と「バックトラッキング」の違いについて、詳しく解説します。
・「伝え返し」は相手の言葉を受け止め、適切に言い換えて返す
「伝え返し」は、相手の言った内容を受け手が自分の中で受け止めた後、適切なことばに置き換えて返すことです。
相手の言いたいことをより深く理解し、自分のことばで表現することで、より深いコミュニケーションを目指します。
キャリアコンサルタント試験の実技(15分のロールプレイ)では必須ですし、カウンセラーやコーチング・ビジネスでも商談や上司と部下のコミュニケーションなどで欠かせないテクニックだと言えます。
「伝え返し」をする目的は、相手の言いたいことを正しく理解できているかを確認し、共感していることを、より積極的に示すためです。
また、相手の発言を受けて、自分の考えや意見を述べることでビジネスでは有意義な会話に発展しやすくなります。
ただし、相手の意図と異なる内容に言い換えてしまうと、途端に「あ、きちんと話が伝わっていない」「話を聞いてくれてない」と誤解やズレが生じる可能性が高くなり、相手からの信頼を得るのが難しくなります。
また、言い換えるにしても相手の感情を傷つけないよう、ことばを選んで丁寧に伝えることが大前提となります。
・「バックトラッキング」は、オウム返し
「バックトラッキング」は、相手の言ったことばをほぼそのまま繰り返すことです。オウム返しとほぼ同義で、相手のことばを鏡に映すようなイメージで返します。
「バックトラッキング」をする理由は、相手の話をよく聞いていることを示し、相手にそのままことばを返すことで試行を整理するためです。
相手は、自分の話した内容が返ってくることで
「自分の話が理解されている」
と感じ、安心して話し続けることができます。
また、 相手の言葉に共感していることを間接的に伝える効果や、会話の流れをスムーズにする効果も見込めます。
ただし、 常に同じように繰り返していると機械的・単調になり、相手は「もしかして私の話に飽きた?」「本当に聞いてる?」と思われてしまう可能性があります。
すべての場面で効果があるわけではあるわけではないため、相手の状況や関係性によって、使い分けることが大切です。
「伝え返し」と「バックトラッキング」どう使い分けたらいい?
「伝え返し」は、相手の話を詳しく聞きたいとき、または自分の意見を伝えたいときなどに有効です。
「バックトラッキング」は、 相手が話し始めたばかりのとき、または相手が感情的に動揺しているときなどに有効だと言えるのではないでしょうか。
どちらかだけを多用するのが良いわけではなく、状況に応じて使い分けることが大切です。
・「伝え返し」の具体例
Aさん「最近忙しくて、なかなかゆっくりできないんです」
Bさん「最近、仕事が立て込んでいて大変なんですね。何か手伝えることがあれば気軽に声を掛けてくださいね」
このように「忙しい→立て込んでいて大変」と言い換え、その上で気遣うことばをかけることで相手への共感と気遣いの両方を伝えています。
・「バックトラッキング」の具体例
Aさん「「最近忙しくて、なかなかゆっくりできないんです」
Bさん「最近忙しいんですね」
そのまま言葉を返すことで、相手は自分の言葉を脳内でリフレインしやすくなり、感情や思考の整理につながります。
どちらも効果的に相手の話に相槌を打つテクニック
「伝え返し」や「 バックトラッキング」は、「アクティブリスニング」という効果的に相手の話に耳を傾けるためのテクニックの一部です。
もちろん、相手の話に耳を傾けて対話するためには表情・うなずき・態度・雰囲気などのノンバーバル(非言語コミュニケーション)も重要になります。
これらのテクニックを理解し、うまく活用することで、相手との信頼関係(ラポール)を築くことができるのです。
テクニックと捉えるより…相手を尊重し、聞く気持ちがあれば自然にできるようになる
「伝え返し」と「バックトラッキング」は、どちらもコミュニケーションにおいて重要なテクニックです。それぞれの特徴を理解し、状況に合わせて使い分けることで、より円滑なコミュニケーションが可能になります。
確かにコミュニケーション術として解説するなら、技術であり、スキルであり、テクニックの一種だと言えます。
でも、普段友達や家族などとのコミュニケーションで、これらをあまり意識することはないのではないでしょうか。
どちらかというと、よそ行きの場…例えばカウンセリングやコンサルティング、商談、プレゼン、面談などの場で意識することが多いと思います。
けれど、「よし、○○と○○のコミュニケーションテクニックを意識して使おう」というのは、キャリアコンサルタント試験の実技試験などなら分かりますが、意識し過ぎると不自然になる傾向も…。
私自身も、キャリアコンサルタント試験の実技では確かに「伝え返し」等は意識しました。
普段の会話やキャリアコンサルタントのお仕事などでは、純粋に
「相手のことを知りたい」
「どう思っているんだろう(考えているんだろう)」
という気持ちで聞くようにしていますし、自然と相手を知りたいと思えばそう難しいことではないと感じています。
今回は、あえてことばの解説と考察という視点で書きましたが、皆さんもきっとよほど人の話を聞かない人ではない限りできているはず。
自信を持って、笑顔で会話してみてくださいね。