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キャリコンことば辞典その3:「カウンセリング」と「コンサルティング」…じゃあキャリアコンサルタントはどっち?
キャリアコンサルタントの資格を生かして仕事をしたい…。
求人を見てみると「キャリアカウンセラー」「キャリアコンサルタント」など、仕事の呼び方はさまざまです。
国家資格キャリアコンサルタントは「コンサルタント」とついているのに、求人では「キャリアカウンセリング」「転職コンサルティング」など、書いてある内容は違っていて、一体どっちなの?と思うこともあるでしょう。
ビジネスの場面でも「カウンセリング(カウンセラー)」と「コンサルティング(コンサルタント)」はよく出てきますが、違うようで似ている部分もあるのが現実。
この記事では、キャリアコンサルタントの視点から「カウンセリング」と「コンサルティング」の違いについて考察します。
「カウンセリング」と「コンサルティング」ではアプローチや目的が違う?
「カウンセリング」と「コンサルティング」は、どちらも「相談」という側面を持っています。
そのため、混同されがちですが…実は目的やアプローチが大きく異なります。
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・「カウンセリング」は心理的問題解決や自己理解が中心
カウンセリングは、個人が対象です。
カウンセラーとクライエント(相談者)の対話を通じ、クライエントの抱える心理的な問題、例えば何かに関する悩みや不安、ストレスなどの解決、自己理解を深めることに主眼が置かれます。
過去の問題や抱えている現在の感情に目を向け、精神的な面から改善するのが目的です。
アプローチとしては、傾聴を中心とした対話から、クライエントの気持ちを理解し、共感することが基本になります。
専門知識からサポートはもちろん行いますが、クライエント自身で問題解決の糸口を見つけられるよう、支援することに重点を置きます。
例えば、公認心理師、臨床心理士、カウンセラーなどが該当するでしょう。
具体的な解決策を提示するのではなく、クライエントが答えを見つけられるよう促し、信頼関係(ラポール)を築くことで、安心して自己開示できる環境を作ることも大切になります。
・「コンサルティング」は課題解決や目標達成が中心
コンサルティングは、個人・組織両方が対象となります。
課題解決、目標達成を支援することに主眼が置かれ、より効率的・効果的な方法を見つけることを模索するのです。
アプローチとしては、客観的な視点から問題を分析し、具体的な解決策を提案、専門知識や経験に基づいたアドバイスを提供することが求められます。
例えば、経営コンサル会社…世界的に有名なアクセンチュアやデトロイト・トーマツなどの経営コンサルタントもいれば、中小企業診断士、○○コンサルタントが該当します。
具体的な解決策を提示し、行動を促す指示的な対応や、専門知識を活用したクライエントが気づいていない問題点を提示することが大切になります。
じゃあ「キャリアコンサルタント」はどっち?
キャリアコンサルタントには「コンサルタント」とついています。
ということは…「やるのはコンサルティング?」と思うかもしれませんが…そうとは言い切れません。
・国家資格キャリアコンサルタントが行うのは、「キャリアコンサルティング」
国家資格キャリアコンサルタントが行うのは、「カウンセリング」と「コンサルティング」の両方の要素を含んだ「キャリアコンサルティング」です。
決して「カウンセリング」と「コンサルティング」どちらかに偏ったものではありません。
・キャリアコンサルティングの中にある「カウンセリング」の要素
まずは、傾聴を通してキャリアに関する悩みや不安を丁寧に聞き、受容し、共感することが大切だということは、資格取得の際の講習などで学んだはずです。
信頼関係(ラポール)を構築する中で、クライエントの自己理解の促進や価値観や強み、興味関心を深く掘り下げる問いかけも求められます。
何より、キャリアに関する複雑な感情を整理し、前向きな気持ちを取り戻す促しも大切な要素です。
・キャリアコンサルティングの中にある「コンサルティング」の要素
カウンセリングの要素だけではなく、キャリアの専門家としてキャリアに関する情報を提供し、選択肢を広げられるサポートも必要です。
クライエントのキャリアの目標設定や具体的な行動計画を立て、必要であればツールを使うこともあるでしょう。
何より、職業能力開発やキャリアアップ・スキルアップのためのアドバイスを行うこともあるため、この点ではコンサルティングだと言えます。
キャリアの専門家として「カウンセリング」も「コンサルティング」も求められる存在
キャリアコンサルタントが行うのは、カウンセリングとコンサルティングの両方の要素を含んだ「キャリアコンサルティング」であり、決してどちらか一方に偏ったものではありません。
単にクライエントの悩みを聞くだけでなく、具体的な行動計画を立てるまで、丁寧にサポートしていくことが大切な役割です。
カウンセリングのように心の状態を整えながら、コンサルティングのように目標達成に向けて伴走するのが、キャリアコンサルティングの特徴だと言えるのではないでしょうか。
どちらか一方に当てはめるのではなく、両方の要素を組み合わせることで、相談者はより効果的にキャリアの課題を解決できるのです。
私も、難しい事ではありますが…クライエントの心や気持ちを受容・共感するとは何か、常に自問し、内省しながら向き合う日々を送っています。