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キャリコンことば辞典その1:最近よく聞く「ナラティブ」と「ストーリー」の違いって?


最近、ビジネスの現場でもよく聞く「ナラティブ」。
キャリアコンサルタントや心理学・教育学の世界では、「ナラティブアプローチ」として実践されていますが…。
一般の方にとっては、
「また、カタカナ用語。もっとわかりやすく簡単な日本語で言ってよ!」
が本音かもしれません。
この記事では、キャリアコンサルタントの視点からよく似ているようで意味が違う「ナラティブ」と「ストーリー」の違いについて考察します。


どちらも「物語」という意味だけど…視点が違う

ナラティブとストーリーの違い一覧

「ナラティブ」と「ストーリー」は、実はどちらも「物語」という意味です。
けれど、視点という意味で異なります。

・ナラティブの視点は「語り手自身・主観」

ナラティブは、物語の主人公は語り手自身。すなわち、主観的な視点から物語が語られます。
例えば、商品やサービスを売りたいセールスマンや、販売員。あるいは、キャリアコンサルタントに相談に来たクライエント(相談者)などが当てはまります。

ナラティブでは、物語は固定されていません。語り手の経験や考えによって常に変化し、決まった結末(終わり)が存在していないことも多いでしょう。
ナラティブは「なぜそれが起きたのか」という問いを投げかけ、物語に意味や価値を与えようとする点が特徴です。
自伝、体験談、ブランドストーリーなどが挙げられます。

・ストーリーの視点は「語り手存在せず・客観」

ストーリーは、物語そのもののこと。主人客や登場人物を中心に、起承転結といった明確な構造を持つ物語の筋書きや内容のことです。
また、語り手や聞き手は物語の中に直接関わりません。客観的な立場で物語を観察する役割になります。
何より、ストーリーにはあらかじめ決められた「明確な結末」が存在します。
絵本風にいうなら「ハッピーエンド」などです。
小説や映画など、あらかじめ構成された創作物が挙げられます。

ナラティブが注目される理由

同じ出来事でも、人によって全く異なる感じ方や捉え方が生まれます。この違いが多様な視点となり、物事を捉え方にバリエーションが出るからこそ、ビジネスでは注目されているのです。

「他社と商品やサービスとの違いを作り出したい」
「うちの商品やサービスに、消費者が自分自身を投影し、共感や共創を持ってほしい」

何より、ストーリーと違って、決まった結末がありません。
特に、現代のような変化の激しい現代社会では、ナラティブはより柔軟に対応できる考え方として注目を集め、ビジネスでも積極的に利用されているのです。

実際に、マーケティングやブランディング、組織開発など、様々なビジネスシーンで今まで以上に積極的な活用がすすんでいます。
自社のブランドや商品の持つ物語をナラティブを効果的に伝えることで、顧客や消費者が共感を深めてくれれば、企業や商品・サービスのイメージ向上が見込めるからこそ、今後も活用されていくでしょう。

キャリアコンサルタントにとってのナラティブは?

キャリアコンサルタントにとってナラティブは、クライエントト自身が持っている「自分自身の物語」を意味します。
この物語の中に、過去の経験、価値観、強み、弱み、そして将来への期待…クライエントのキャリアを形作る様々な要素を含んでいるからこそ、キャリアコンサルティングではカギを握るのです。

・ナラティブが重要なのはなぜ?

クライエントの過去の経験や価値観を「物語=ナラティブ」として捉えることで、表面的な表情や言葉などの情報だけでは分からない、クライアントの心の奥底にあるものを深く理解することができまるからです。

・ラポール構築と自己理解促進になる

キャリアコンサルタントが クライエントの物語=ナラティブに共感し、寄り添うことで、より深い信頼関係を築くことができます。
クライエント自身も自分の物語を語ることで、少しずつ思考や気持ちが整理されます。その結果、自己理解を深めてキャリアに対する新たな気づきを得ることができるとされています。

・キャリアコンサルタントのナラティブ活用

 クライエントの物語に基づいて、より具体的なキャリア目標を設定し、達成するための具体的な行動計画を立てることができます。
ここでは、ナラティブアプローチの具体的手法は割愛しますが、活用例をいくつか挙げてみました。

・クライエントの過去の経験を振り返り、新たなキャリアパスを見つける
・クライエントの強みを再認識し、自信を取り戻す事故効力感の回復
・クライエントの価値観に基づいた具体的な目標を設定する
・様々な選択肢の中から、クライエントにとって最適な道を選ぶ支援

キャリアコンサルタントにとって、ナラティブはクライエントとの対話の核。クライエントの物語に深く関わり、より効果的なキャリア支援を行うことができると思っています。

単に過去の話を聞くだけでなく、クライアントの未来を共創するための重要なツールが、キャリアコンサルタントにとってのナラティブだと言えるでしょう。

ビジネスで使われる「ナラティブ」と「ストーリー」の違いを理解しておこう!

似ているようで、視点や結末の有無が違う「ナラティブ」と「ストーリー」。
どちらもキャリアコンサルタントの現場だけでなく、ビジネスでも聴くことが多い2つのことば。
いまさらと思わず、ぜひ意味の違いを知っておいてくださいね。


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