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キャリコンことば辞典その13:「バイアス」と「先入観」対象はモノや事柄?それとも人?

日常生活の中で切っても切れないのが「バイアス」と「先入観」。
キャリアコンサルタントの現場でも、コンサルティングの中でクライエント(相談者)の話の中に、それらの欠片を見つけることは日常茶飯事。
私たちは、どうしても「バイアス」「先入観」を100%排除することが難しいのも事実です。

この記事では、キャリアコンサルタントの視点から「バイアス」と「先入観」の違いと効用について考察します。


「バイアス」と「先入観」の違いって?

「バイアス」と「先入観」は、どちらも人間の判断に影響を与える概念。
しかし、厳密には異なる意味を持ちます。

バイアスと先入観の違い

・「バイアス」は個人的な経験などに基づくもの

「バイアス(Bias)」は、ある特定の事柄に対して、客観的な事実よりも個人的な経験や感情、信念などに基づいて偏った判断をしてしまうこと。

認知バイアス、確認バイアス、ハロー効果など、様々な種類のバイアスが存在します。多くの場合、本人が自覚していないうちにバイアスが働いています。

誰でもバイアスを持つ可能性があり、社会的な立場や文化背景によっても影響を受けます。持つ可能性がある…というより、多かれ少なかれ持っていると言っても差し支えないでしょう。

例えば、初めて会った人の外見や話し方から、その人の性格や能力を決めつけてしまうことはありませんか?
他にも、自分の持っている考えを裏付ける情報ばかりに注目し、反対の意見を無視してしまう確証バイアスも知らず知らずのうちに発動しているはずです。

・「先入観」は根拠のない偏見や敵意。ヘイトなどもそうかも…

「先入観(Prejudice)」は、特定の人物や集団に対して、根拠のない偏見や敵意を持つこと。
長年培われた固定的な考え(固定概念)、簡単には変えられないことが多いです。

感情的には、負の感情が伴い、排斥や差別につながる可能性があります。
また、 社会的な背景や教育、メディアの影響など、様々な要因によって形成されるものとも言えるでしょう。

例えば、特定の人種や国の人に対して、生まれながらにして劣っているという固定観念を持つのは人種差別やヘイトです。
女性は男性よりも能力が低いという固定観念などは性別による差別。
思い当たること、あるのではないでしょうか。

どちらが悪いのか?日常生活への影響

どちらも人間の判断を歪ませる点では共通していますが、「先入観」の方がより強い感情的な側面を持ち、社会問題に発展する可能性が高いと言えます。

「バイアス」や「先入観」は、私たちの日常生活において、以下のような影響を与えると言えるでしょう。

・誤った判断…事実と異なる判断をしてしまう。
・コミュニケーションの阻害…相互理解を妨げ、対立を生む。
・差別や偏見…特定の人々を排除したり、差別したりする。
これらの影響を避けるために、私たちは常に自分の考え方を疑い、多様な視点を持つことが重要です。

キャリアコンサルティングも要注意!「バイアス」と「先入観」がもたらす弊害

キャリアコンサルティングにおける「バイアス」と「先入観」は、クライエントのキャリア選択や自己理解に大きな影響を与え、以下のような問題を引き起こす可能性があります。

・客観的な情報提供の阻害

キャリアコンサルタントが自身の経験や価値観に基づいて、クライアントに特定の職業やキャリアパスを勧めることが考えられます。また、クライエントの興味や適性よりも、キャリアコンサルタントの知識や情報に基づいて、不十分な情報提供や過剰な情報提供をしてしまうこともあるでしょう。

さらに、クライエントの多様性(性別、年齢、性的指向、障がいなど)を考慮せず、一般的な価値観に基づいたアドバイスをしてしまうことがあります。

・クライアントの自己理解の阻害

キャリア コンサルタントの固定観念がクライエントに伝わり、クライアントが自分の可能性を狭めてしまうことがあります。
また、 クライエントの強みや弱みを客観的に評価せず、コンサルタントの視点から決めつけてしまうことも十分考えられるでしょう。

さらに、キャリアコンサルタントの否定的な意見や態度が、クライアントの自己効力感を低下させ、キャリア選択に対する自信を失わせてしまうことがあります。

・信頼関係の構築の阻害

クライエントがキャリアコンサルタントの意見に疑問を感じたり、信頼できないと感じたりした場合、良好な関係を築くことが難しくなります。
また、クライエントが自分の本音を打ち明けられなくなり、効果的なキャリア相談ができない可能性があります。

・キャリア決定の誤り

今までの点を踏まえると、クライエントの適性や興味とは異なるキャリアを選択をサポートしてしまう可能性もあるでしょう。
不満のある仕事を選択し、キャリアの行き詰まりや転職を繰り返す可能性すら出てくるのです。

・キャリアコンサルタントが気を付けることは?

・自己認識…自分の価値観や偏見を認識し、それらがクライエントに与える影響を理解し、注意すること。
・中立性…客観的な立場を保ち、クライエントの意見を尊重する。
・傾聴…クライエントの話に耳を傾け、クライエントの言葉から情報を引き出す。
・多様な視点…多様な価値観や生き方を尊重し、クライアントの選択肢を広げる。
・継続的な学習…キャリアに関する知識やスキルを常にアップデートする。

これらを見ると、キャリアコンサルタントは日々勉強だと痛感しますね。

自分を省みること、そして謙虚さが鍵

残念ですが「バイアス」「先入観」からは100%逃れることはできません。
どうしても日々の生活、仕事や学校・友達関係・地域のコミュニティなどから影響は知らず知らずのうちに受けているのは事実です。

けれど、常に「これは正しいのだろうか?」「誰かを傷つけていないだろうか?」と省みることがこれらの影響を軽減するのではないでしょうか。

時には、クライエントの話だけでなく、友達や家族の話を一方的に決めつけたくなることはあります。けれど、ぐっとこらえてしっかり相手の話に耳を傾ける姿勢を持ち続けることが、キャリアコンサルティングにおける基本だといつまでも忘れずにいたいと思っています。

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