ポイントは商社での経験が生み出した“安定して成長できるビジネス”。”誰かに言いたくなる”顧客心理を刺激する「KARADA BESTA」
パーソナルトレーニングをもっと身近な存在に、そしてより多くの方へ
黄氏は早稲田大学を卒業後、大手商社勤務を経て『KARADA BESTA』を立ち上げました。フィットネス関連のキャリアはなく、自身がユーザーとしてサービスを利用した経験から感じた「もっとこうだったらいいのに」という感情や体験を『KARADA BESTA』としてかたちにしました。
お客様にご満足いただけるサービス内容であることはもちろん、働く人も幸せになれて、ビジネスとしてもきちんと利益を生み出せる。そんなwin-win-winな構造を、緻密な計算と分析でつくりあげました。
その発想のきっかけとなったのは、とある施設のパーソナルトレーニングを受けたことだったと黄氏は振り返ります。
「きちんと成果も出て素晴らしいサービスだと思いました。ただ、費用が高くてこれでは一部の方しか受けられない。素晴らしいサービスなのだから、もっと一般の方にも届けられるものにしたいと思い、創業しました」
そのときの経験が、後の『KARADA BESTA』構想につながることとなります。
ユニークなサービス内容は徹底した顧客分析と綿密な戦略から創出
商社勤務での経験から数字のボラティリティ(価格変動)が激しいことへの苦労は知っていたものの、立ち上げ当時のサービスは都度決済としてしまったため売上が安定せず、黄氏は精神的に落ち着かない日々を過ごします。
そのことがスタッフへの態度にも現れてしまうようになり、「やはり安定して売上を得られるサービスにしなければ」と考え始めたことが現在の『KARADA BESTA』の形へとつながりました。
現在のようなサブスク型とすることで安定した経営ができるようになるほか、「通えば通うだけお得になる」サービスならば、お客様が通うモチベーションにもつながります。
しかし、頭を悩ませたのは価格設定。ビジネスとしてきちんと利益を出しつつもユーザーが払える価格にするため、一般的なパーソナルトレーニングが高額となる要因の1つである広告費を徹底的に抑えました。既述のテレビ番組への参加など黄氏本人が積極的にインフルエンサーとしての役割を果たすことで、認知拡大を図っています。
さらに新たな取り組みとして、実際に行うパーソナルレッスンの時間を30分としました。一般的に60分での提供が多いところを半分にした理由は運営上の大きなコストとなる人件費を削減するためですが、それにより出てきた懸念を、次のように『KARADA BESTA』特有のメリットとして解決しました。
「30分間のレッスンを受けるためだけにわざわざ移動時間を使って通ってくれるのか?と思ったんです。そこで、ほかのサービスを30分間つけて合計60分で提供してはどうかと思いつきました。既存顧客に多いパーソナルトレーニングを受けようという女性は『綺麗になりたい』という意欲が高く、エステに通っている方も多いです。それであれば、その2つを同じ場所で受けられたらいいのではないかと考えました」
そこで、セルフエステマシンと、さらに筋トレと組み合わせることでトレーニング効果を高められる有酸素マシンを導入。人件費を抑えながら顧客満足度を高め「通いたくなる」施設にすることにつなげました。
そのような様々なことを考慮した結果、月額は32,780円(税込)に決定。ここには「月額3万円台でパーソナルトレーニングが受け放題」という、思わず人に言いたくなるネーミング戦略も隠れています。
定期利用できなければ“割安”が“割高”に、顧客に向き合う時間創出が鍵
顧客体験と経費削減の両立を叶えた戦略を用いて、立ち上げから2年と少しで15店舗と順調に規模を拡大している同社ですが、もちろん課題がないわけではありません。
例えば、退会率。見学入会率は80%を超えて非常に高いのですが、退会率もやや高い水準を推移しています。これは、利用者の年齢層が比較的若い女性であることと、定期的に通えなければ割安に感じていた通い放題が逆に大きな負担となってしまうことが理由です。
そのため、一般的に多い「(入会後は)自由に利用してください」というやり方は同社ではタブー。カスタマーサクセス部門を立ち上げるなどして定期的に利用していただけるようサービス向上に取り組んでいます。
トレーナーの評価については、インセンティブも取り入れたアンケートを利用しており、彼ら彼女たちのモチベーションを高め、質の高いレッスン提供にもつながっています。評価につながることから会員へのアナウンスにも積極的なため回答率も高いという、相乗効果も生みました。同社ではトレーナーの指名制をとっていないこともあり、このアンケートはとても重要です。
なぜ指名制ではないのか。それはすべてのトレーナーに平等に指導機会を与えることで、安定した収入を保証するためです。安心して働ける環境を提供することも質のよいレッスンにつながるほか、トレーナーの離職率を抑えることにもつながっているといいます。
このように、トレーナーにしっかりと会員へ向き合ってもらうためとして、同社では「hacomono」活用いただいており、体験やレッスン予約、会員管理などはシステムのみで完結する方法をとっています。
本部においても、店舗数が増えると単純に管理作業も増えることになりますが、「hacomono」なら各店舗の入会や予約状況をリアルタイムでチェックできるなど一元管理が可能。結果を出力することもできるため、ミーティング用の資料作成も簡単にできます。
システムに任せる部分と人が対応する部分。win-win-winの構造にはメリハリを付けたサービス提供が大切です。
セミナーでは視聴者からもたくさんの質問が寄せられ、『KARADA BESTA』の注目度の高さを感じます。これまでの業界の常識にとらわれず、ユーザー目線で「あったらいいな」と感じるサービスを純粋に追求したことが、成功要因の1つだとわかるインタビューでした。
アイデア力はもちろんのこと、それを商社で培った分析力で継続できるビジネスに成し遂げる力をもつ黄氏のこれからに目が離せません。
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