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3月の『たちきり』を終えて。そして4月の『世別レ心中』に向けて。

三月五日、六日に大阪の阿倍野長屋にて。
三月九日に東京の王子小劇場にて。
第陸回ハコボレ落語研究会『たちきり』が終演しました。
公演から10日も経った後のご挨拶をお赦しください。
今回もご来場いただきましてまことにありがとうございました。

振り返り

「たちきり」という演目が愛おしかったことを綴ります。
なにかと乱文で剥き出しの言葉を選ばずに置かせてください。

 まずは古典落語『反魂香』から。私はこの演目がやっぱり好きだ。
「線香を焚いている時にだけ、あの世から愛し合た花魁が返ってくる」
この一時の儚さと「会いたい」という願いから溢れる人情。
それが前半にあり、後半は「亡くなった妻に会いたい」と思って真似をするが、視野が狭くなってヘマをする大工の八五郎のドタバタ劇。どちらも根底には「好きな人に会いたい」という一心がある。物語のその人間性が好きで。前半、後半の陰気と陽気の塩梅が好きだ。
この演目を2年前にもやって。自身への落とし込み方も随分と違って来た。
東京の千秋楽は特に本当に話して楽しかった。迷いなくこの陽気さを伝えれたように思う。

 落語が終わり「よ!にっぽんいち!!」の掛け声から演劇が始まる。
俳優の岩田光風の演じる鍛冶山仁(かじやま じん)彼の威勢の良さが演劇へひきこむ第一歩である。「落語から演劇へ」落語を受け継ぎそのまま演劇へ移る境目。ここが肝心である。何度も稽古で繰り返して、本番前も絶対に返し稽古する演劇パートの第一景。二人の呼吸を確かめ合い、微調整する。実はこの時間が好きだ。ピリピリと空気が詰まる感じではなく、逆に体を柔らかくし、反射で言葉を返さないように意識する時間。光風の一声めで大体感じがわかってくる。

 そして漫才である。「卒業」をテーマに文化祭で二人で漫才をもういちどやろう。という設定。二人でいろんな話をした。古今東西どの芸人が好きか。誰に影響を受けたか。ネタに尾崎豊を登場させているけれど、どれくらい伝わるのかとか。随所に70年代のオールドスタイルの漫才をベースに、中盤はコント漫才を組み入れ、最後は尾崎オチ。なんどやっても、どこか懐かしい感じで。2年前から何度も彼と芸人になる道を空想していた。

 岩田光風、面白いんすよ。みんなにもっと知って欲しいくらい。稽古してても楽しかった。特にエピソードトークやフリートークは抜群に面白い。僕は彼の「しゃべり」だけで通用する舞台を企画したいくらいだ。今回の漫才ではボケの側に回ってもらっているが、光風曰く、僕をボケにして彼がツッコむスタイルのほうが面白いと考えているみたいだ。新ネタを岩田くんがそろそろ書き上げてくれるみたいなので楽しみだ(笑)いつでも待っている。

 ええと、作品に戻る。
 物語は終盤。鍛冶山が再びコンビを結成してくれと頼む。小畑が断る理由の裏腹に、芸人を続けて欲しい本心を語る。光風と僕と演出の角居と最後まで、なんなら千秋楽まで対話した。毎回、彼の本心に届けと思い舞台に臨んだ。セリフの枠を借りて。それでも彼に伝えたかったことは一つだった。

 岩田光風は俳優の才がある。だからこれからも舞台を続けて欲しい。

 近ごろ、人にはそれぞれ道があって過干渉になってはいけないと悟っていたが、それでも干渉したい、深く関わりたい人達がハコボレを通して出会えて。私のお節介の熱が何人も苦しめてきたと想う。
 だけれど伝えずにはいられないのは、舞台を続けて欲しいなんて言われたことがない。執着でしている身の私からしたら、過ぎゆく彼ら彼女らの輝かしい才が本当に眩しくて。もったいないと思ってしまうのだ。
 岩田光風もその一人。人間が良くて、真面目で熱心。それでも遊び心がある。いい俳優だ。そしていい芸人にもなれると確信している。

「たちきり」は岩田光風へ捧ぐ送る言葉のような芝居でした。
舞台の壇上を降りても言葉を重ねてしまう野暮をお赦しください。

それぞれの最後の回。終演後に別々の涙が溢れました。

 大阪では良い作品が生まれて散りゆく実感と共に、時世のせいにするしか出来ない、もっとこの作品を遠くへ飛ばしてやりたかった悔し涙を。
 東京では、この『たちきり』という作品と本当の意味でお別れをしたという、達成感の寂しさと。隣にいる彼と同じ舞台を共に生きてくれてありがとうという、訳のわからなく涙を流しました。がスグにバラしがあるので泣き止みました。余韻なんてなかった慌ただしい楽屋ですが、二人で最後は笑ってました。

 もうきっと僕たちは『たちきり』の話をするのは似合わなくなり。
賞味期限と言いますか。この話を二人ですることはないでしょう。
このたちきりは「卒業」です。それが寂しいのだなと改めて想う。

 しみったれた言葉ばかりになってしまいましたが。
卒業後の晴れ晴れとした気分で過ごしております。この『たちきり』をしっかりと成仏させてやれて良かったと心から思います。ご来場いただいたお客様、遠方より応援してくれた皆様には本当に御礼申し上げます。

終演後に光風の口から「11月ご一緒できるのを楽しみにしてます」その言葉を頂いて、それだけで2021年は生きていけそうです。さらに、今回の公演で新たな出会いもあり4月になれば新しいハコボレ構成員の紹介もございます。お楽しみにお待ちくださいませ!
今年も懸命に芝居に挑みましょう。
どうぞご贔屓に!!


!!大告知!!

そして、もう2週間後には、あの!
昨年末に好評を頂いたハコボレ「落語から演劇へ」の一人芝居。
『世別レ心中』の再録公演が待っております!!

4月8日〜11日まで。会場は東京都北区の王子小劇場!
前田隆成が25歳になるその日に幕開けです!!
チケットも予約開始しております!!
プレゼントはご予約いただけるのが何より喜びでございます。
本番まで、またきっと誰かは観てくれている!という精神で。
『世別レ心中』稽古場こぼれ話を記事にしていきます!
詳細はホームページを作ったのでご確認ください!!
がんばりました◎


春の風を自ら吹かせて
明日もがんばります
ここまでご愛読ありがとうございます!
おやすみなさいまし。

前田隆成

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