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日記のようなもの5
月曜日 本屋
帰りに息子の漢字練習帳を買いに本屋へ寄った。最近は文房具の専門店というものがめっきり減って、帰り道にある本屋の文房具コーナーを頼りにすることも多い。ついでに本もチラ見する。バスの時間を考えると、そんなにじっくりは見られないけどと思いながら、新刊から文庫の平積み、ビジネス書のランキングなどぐるっと一周してしまう。本屋という空間がどうしてこんなに好きなのだろう。大の読書家というわけでもないくせに。働いていた時は本当に楽しかったし、死ぬまでにもう一度やってみたいと思う職業だったりする。とりあえず今読んでいる本を読んだら読みたいなと思う本を2冊見つけた。ふと気が付くとバスの時間が迫っていて、レジを通す時間がなくなる。諦めて帰りしなAmazonでポチることにして外に出ると、雪が降り始めていた。傘が無かったので、コートのフードを被って走り出す。せっかくの本を濡らすことにならずに済んで良かったかと思い直して家路に着いた。
火曜日 Eureka
星野源の新曲が配信された。朝起きてすぐにダウンロード。化粧をしながら聞いたその一言目の歌詞にどきっとした。
♪息を吹き返した 私でいる日々が
動き出していた 知らない方に
この数週間、私自身、回復したなぁと実感していたところに、こんな歌詞が聴こえてきて、まさに私の歌だ、と思ってしまう。でも、きっとそんな風に感じた人は日本中に沢山いて、星野源という人は、いつでもその時々の気持ちを掬うのが本当に上手な人なんだと感心してしまう。Xを開けば、私のタイムラインは星野源の新曲を楽しみ、喜び、味わう人の声で溢れている。騒がしい世間の出来事とはまるで無縁の平和な日常。昨日からの出来事を思うと、ここは同じ日本なのか?と疑いたくなる。罵声でも怒号でも無く、優しい歌声に包まれていた1日だった。
水曜日 話して回復
今日は仕事で嫌なことがあった。夕飯を食べ終えても、何だか気持ちのどこかでモヤモヤしていて、ブスくれたままこたつに入っていたら夫が「どうしたの?」と聞いてくれた。こういう時、話すかどうか迷う。仕事のことって一緒に働いている人同士でしか分かり合えない部分があるから、細かいニュアンスが伝わらなくて、結局ストレスが溜まったままになることも多いからだ。今日はその辺に気を付けながら慎重に話してみた。すると、すんなり伝わって夫が深く共感してくれたので、こちらも乗ってきてどんどん話してしまった。私はこういう時、内省することがほとんどだけど、今日はそれじゃダメだったから良かった。話して回復。聞いてくれる相手がいるって有難い。
木曜日 湯たんぽ
息子が布団が温まるまで一緒に寝てほしいと言うようになったので、そうもしてられない日のために湯たんぽを使ってみることに決めた。電子レンジで温めるものや、充電式のものもあるのは知っていたのだが、急な思い付きもあって、近くのドラッグストアでお湯を入れるタイプを購入した。寝る前にお茶を飲むからどうせお湯は沸かすし、と思ったのだけど、これが結構大変だった。湯たんぽ一つに使うお湯は約2リットル。なので二回に分けてお湯を沸かして、湯たんぽを満たさなければならない。なるほど。だからお湯を入れるタイプは減っているのかと納得する。
小さい頃、しもやけができやすかった私のために、母は毎日湯たんぽを用意してくれていた。母は自分のと、私のと妹の分と一晩に最低でも三つは用意していたはずだ。当時は鉄製の注ぎ口も小さいものしかなかったから、漏斗を使って慎重にお湯を注いでいた。やけどするから絶対に触らないように近づかないようにと言われ、厚手のオレンジの巾着に入れたものをさらにタオルで巻いて、いつも布団に入れてくれた。お母さん、毎日これを三つ分やってたのかと思うと、感嘆のため息が出る。当の息子は、一晩やってみたらすっかり湯たんぽが気に入ったようなので、私もしばらく頑張ってみようかと思う。
金曜日 ギター少年、寒風を行く
息子が、ギターを習い始めることになった。近くにクラシックギターを教えているところがあって、年末に見学に行き、お正月の間家族でじっくり考えて、行ってみようということになった。夫はバンドマンで、私も音楽が大好きで、息子がそうなるのは当たり前だろうと周りからは言われたが、私としてはとても不思議な気持ちだった。子どもの頃、それはたくさんの習い事をさせてもらったけど、私は親が薦めるものは、どれもこれも好きになれず続けることができなかったタイプだった。だから絶対に息子にあれやこれやとさせないと決めていたのに、あっけなく自分の理想のど真ん中を歩かれると、自分が無意識下で息子をコントロールしているのではないかと、少し不安になるのだなと思う。
でもそんな心配はよそに、息子は小さな体で大きなギターを背負って「行ってきまーす」と笑顔で教室へ向かって行く。寒風の中を歩いていく姿は、まさにギター少年だ。
この先のことは、分からない。どんな未来が待っているか分からない、だけど、この後ろ姿をしっかり目に焼き付けておこうと思い、私も手を振って元気よく見送った。
今週もおつかれさまでした。