Netflix 実写版「ワンピース」を観て
私が初めて「ワンピース」という漫画があることを知ったのは、通っていた塾の休憩中のことだった。
漫画好きの女子グループの子達が、「面白いよね〜!」と話していたのが聞こえてきて、表紙をちらりと横目で見たのを覚えている。
あれは今思えば、コミックス1巻の有名なあの表紙だった。
当時、ハブにされてほとんどの時間を1人で過ごしていたこともあり、彼女たちに詳しく聞くこともできないまま、「ワンピース」というタイトルだけが記憶に残っていた。
程なくしてアニメが始まった時、「これ、あの時話してたやつ!」と思いあたると嬉しかった。友達がいなくても、「ワンピース」の方からやって来てくれた感動があった。
ドラゴンボールもスラムダンクも幽遊白書もるろうに剣心も大好きだった私。
夢中にならない理由がなかった。
それから25年近く、私はコミックをずっと買い続けている。既刊で106巻。
途中リタイアしそうになりながらも、やっぱり面白くて、もう最終章だと尾田先生からのアナウンスがあってからのこの一年ほどは、また「ワンピース」愛が高まってきている。
さて、そんな説明する必要もないくらい、言わずと知れた大人気漫画「ワンピース」の実写化。
発表された時、誰が期待していただろう。
もう、どうせ失敗するって。やらなくていいよ〜と私も思っていた。
ところが、いざ観てみるとびっくり!
すごく面白くて一気見してしまった!
何と言っても、ルフィ役のイニャキ・ゴドイ!!
彼は、まさにルフィ。
ルフィが立って、歩いて、動いて、そこにいる!という感動!
吹替の声優陣が、軒並みアニメ版と変わらないので、そのためかと思ったけど、英語版で見ても、ちゃんとルフィ!成立してる!
ゾロ、ナミ、ウソップ、サンジも同様。
特にゾロのアクション、立ち姿はまさにゾロ!真剣佑、すごい!!
ウソップも鼻が長くないのに、ウソップ!
サンジもくるりん眉毛じゃないのに、サンジ!
ナミも原作みたいな現実離れしたスタイルじゃないのに、ナミ!
5人が並んで立っていると、会話をすると、まさに麦わらの一味!!
このことが一番感動したし、胸が熱くなった。
尾田先生渾身の実写化。お見それしましたとしか言いようがない。
そして、イーストブルー編を全8話にうまく収めているところも偉業と呼ぶにふさわしい。
金棒のアルビダ、道化のバギー、クロネコ海賊団のクロ、魚人海賊アーロン...漫画でもアニメでも長期に渡って描かれていたにも関わらず、しっかり実写としての解釈で要約してあり、分かりやすく、見やすくなっていた。
衣装も、セットも、ただの遊園地にいるコスプレですって感じではなく、実写化するならこんな感じだよねという、絶妙なリアリティが良かった。
ルフィも毎日、赤ベストを着てるわけでも草履なわけでもなく、ちゃんと着替えている。だけど、ちゃんとルフィらしさを損なわないファッションに好感が持てた。
でも、ちゃんとガープは犬の帽子被ってるし、メリーは羊の被り物みたいなのしてるし、ネズミ大佐もネズミのヒゲが生えている。ファンとしては、こういう細部が忠実に再現されていると、やっぱり嬉しいものだ。
特に、電伝虫!あれを普通の電話にされなくてよかった。気持ち悪いぐらいリアルな電伝虫が製作されていて感動。本当に、あんなものでは電話したくないくらい...リアルだった。
そして、久しぶりに見たゴーイングメリー号!
もちろんリアルなメリー号なので、原作みたいに可愛くはないけど、「わー!メリー、久しぶり!」と思わず言ってしまうほど、メリーの頭に座っているイニャキルフィの姿が、初めて見るはずの映像なのに、なんだか懐かしくて、嬉しくて、涙が出そうになった。
何より息子が実写にすごくハマって、今も毎晩一話ずつ見返していて、漫画も少しずつ読み進めている。
アニメを見たことはあっても、途中からだったのでいまいちハマれなかったのに、今回の実写化で物語の始まりを知ったことで興味を持ったらしい。
こんなことが世界中で起こってるとしたら、これも素晴らしい功績だ。
それに今から106巻、何も知らずに読み始められるなんて、幸せものだ。羨ましい。
だけど、今回改めて思わずにいられないのは、やっぱり原作が素晴らしく面白いということ。
ジャンプのモットー、努力・友情・勝利そのものみたいな王道漫画に思われるけど、「ワンピース」のような漫画はそれまで無かったのだ。
女性キャラクターは、どの人も待っているだけのヒロインじゃない。みんな自立しているし、みんな自分の強い意志に基づいて行動している。
出てくる国々や海賊それぞれに深い歴史があって、私たちの世界と重なるような差別や戦争や悲しい物語が語られている。
尾田先生は、世界の歴史そのものを描いているのだと思う。
そんな漫画は、「ワンピース」だけだ。
尾田先生、たった1人の人の頭と心の中から生まれたものが、時代を越えて形や手法を変え、こんな風に世界中に広がっていくんだと思うと、胸がじんと熱くなる。
原作が終わるのももうあと少しだろう。実写版がどこまで続くのか、どんな終わり方をするのか分からないけど、これからも大いに期待して待っていようと思う。
改めて、イニャキルフィを見つけてくれてありがとう!彼がいれば、このドラマは大成功で続けられると思う!