優しいロックンロールをありがとう〜The Birthdayと私〜


 チバユウスケさんが亡くなったことを知ってから一か月以上が経ちました。

 チバさんのこと、ここ数年はほとんど追いかけていなかったにも関わらず、大きな喪失感はまだ私を覆っていて、楽しみにしていたはずの他のミュージシャンの新譜などは聴けないまま、チバさんの音楽ばかり聴いてしまう日々が続いています。

 この一カ月間、色んな人達がチバさんのエピソードや思い出を語ったり、今まで見たこと無かった写真や映像もたくさん共有されて、毎日泣いたり笑ったりしながら、私のヒーローは、こんなにもみんなに愛されているのかと深く感動する一方で、今まで感じたことのない大きな寂しさに打ちのめされたりしています。

 以前と大して変わらない日常なのに、ふと寂しさを感じる。涙が出てくることもある。
 見たことしかない人に、こんな感情を抱くなんて思ってもみませんでした。

 そして、この期間になぜか求めて聴きたくなったのは、ミッシェルではなくThe Birthdayの曲ばかり。

 ミッシェルのこと、あんなに好きだったはずなのに、どうしてThe Birthdayなのか、最初は分からずにいました。

 ただ生きている時は、会いたいなんてそんなのおこがましいって、会うことなんてできないと思っていたチバさんに、ただただ会いたくて仕方なくて、チバに繋がる電話があるなら、今すぐそれを手に取って大好きだと、本当にありがとうと伝えたいとそればかり考えてしまっていた時に、The Birthdayの曲を聴いていると、チバさんに触れているような気がして、心が和らぐのを感じました。

 The Birthdayというバンドが作り出す優しいロックンロールが、ミッシェルと変わらないくらい私は大好きだったんだと、こんなことになって初めて気付いたのです。

 ミッシェル解散後、ROSSOなどの活動を見ていても、何だかチバさんが彷徨っているようで、ミッシェルというバンドがあまりに偉大で、もうあんなにカッコいいバンドを作ることはできないのかもしれないと思っていた矢先、活動を始めたのがThe Birthdayでした。

 ドラムはキュウちゃんで続投だったものの、それでも最初はあまり受け入れられず、アルバム一枚目、二枚目を経て、気持ちが大きく変わったのは、三枚目のアルバム「MOTEL RADIO Sixty Six」を聴いてからでした。

 初めて「カサノバ・スネイク」を聴いてハートを鷲掴みにされたあの時とはまた違う、そうだこれだ!という感触。
 エイトビートが、ロックンロールが私は好きなんだ!と思わされた瞬間。
 そして、溢れる激しさと、ロマンティックで少し寂しげな、物語の一節を読んでいるような歌詞。
 チバユウスケにしか書けない、チバユウスケにしか見えていない世界を見せてもらっているような気持ちになれる。
 呆れるほど純粋で、優しくて、眩しいロックンロールがそこにはあったのです。

 それから、子どもを産むまでの数年間、The Birthdayの音楽を夢中で追いかけていたこと、ライブに行ったこと、ニュースレターに登録して、メンバーからの動画付メッセージを受け取っていたこと、大切なバンドだったのに、チバユウスケが大好きだったのに、出産してからは、世界ががらりと変わってしまい、ぱったりと追いかけられなくなってしまいました。

 一度だけ、夫(バンドマン)が、よく出演していたライブハウスにThe Birthdayが来ることが分かって、行きたいなと思ってチケットを取ろうか迷ったことがありました。
 でも、当時はまだ息子も赤ちゃんで、夫が仕事から帰ってくるのは深夜近くの日ばかりで、「またいつでも行けるよね」と思って見送ってしまい、結局そのままチバさんが亡くなったことでThe Birthday自体、活動は終了となってしまいました。

 あの時、行っていたらと思うと、残念でなりません。

 だけど、「またいつでも行けるよね」と簡単に思えるくらい、The Birthdayは年中ライブをやってくれていたし、それに何より、チバさんが死ぬなんて、こんなに早くいなくなるなんて思いもしなくて。

 チバさんは、いつだって見上げればそこにいて、歌声を聴けば、どんな状況の時だって大丈夫だって思える。

 あの、無敵感。

 チバユウスケの音楽は、いつも肩を組んでくれたし、いつも抱きしめてくれた。

 いなくなるなんて思いもしなかった。

 チバさんは、私には、太陽のような人でした。

 とにかく今は、チバさんの声を聴いていたくて、The Birthdayの好きな曲だけを抜粋してプレイリストにしてから、ベスト10を絞ってnoteに書こうと思ったのですが、40曲くらいになってしまい、とても絞れそうにありません(笑)

 「涙がこぼれそう」、「愛でぬりつぶせ」、「ピアノ」、「なぜか今日は」、「さよなら最終兵器」、「ROKA」、「くそったれの世界」、「抱きしめたい」、「青空」、「オルゴール」……。
 シングルだけでもこれだけあって、アルバム収録曲や、B面収録曲でもまだまだ好きな曲や大切な曲は、たくさんあります。

 ミッシェルガンエレファントで見せていた轟くような歌声や、鋭く尖った世界観から、優しく力強いストレートな歌詞をメロディーに乗せて届けてくれたThe Birthday。

 表現者として無駄なものがどんどんそぎ落とされて、研ぎ澄まされ、変わっていくチバさんの姿をもっともっと見ていたかった。

 チバさんは「泣くな」って言うだろうけど、もうしばらくはメソメソしてしまいそうです。

 

 チバさん、今頃、天国に辿り着いた頃でしょうか。
 温かく優しい場所で、痛みとか苦しみとかそういうもの全部から解放されて、大好きなビールとタバコとギターで、そっちにいるみんなと楽しくやっててください。
 そして、時々は、私達のことを見ていてください。
 私はいつも青空の向こうに、あなたの笑顔を見つけます。

 

 最後に、やっぱり何か貼っておきたいなと思うので、名曲を。
 提供されたPUFFYは世界一幸せ者だよ。


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