鬼滅の刃 「上弦集結、そして刀鍛冶の里へ」を観てきた
テレビアニメとして放送されたもの、そしてこれから放送される予定のものを映画館で観る。家から出て、チケットを買って、ついでにポップコーンも買って席に着く。そんなこと、少し前なら考えもしなかったと思う。
2022年末、無限列車のスペシャル放送の後、満を持して告知された新シーズンのアニメ情報とともに、今回のワールドツアー上映が発表された。
一緒に観ていた息子に確認すると、「行きたい!」の一言。テレビで一回見てるのに、春になれば見れるのに、実は息子に聞かずとも「行くぞ!」と胸の内では決めていた。
鬼滅の刃が流行り出した頃、私はほぼ興味を持っていなかった。夫が、同僚から漫画を借りてきて、夜な夜な読んでいた時も、息子がやたらと「水の呼吸!」と言い出した時も、何か流行ってるねぐらいにしか思っていなかった。
そんな時、職場で仲の良かった人が「昨日、徹夜したんだよね」と言ってきた。
「何してたんですか?」と聞くと、「鬼滅の刃見てた」と返ってきた。
その人は、普段アニメなど見ないタイプの人で、私より大分年上だし、子どももいない。そんな人が、徹夜して見たと言う。
え、そんなに面白いのかな。
途端に興味を持った私は、ネトフリでもアマプラでも最新話までばっちり見られると知って、さっそく見てみることにした。
それは、私が見てきたどのアニメとも違った。作画の進化に心の底から感動した。
アクションシーンの迫力、熱気、闘気。
絶対、鬼の首を斬る!
炭治郎たちの熱が、びしびし伝わってきて、見ているこっちも、緊張と興奮で見入ってしまった。テレビアニメ凄いことになってる!!ストーリー云々よりも、それが一番私の心に刺さった。
というのも、ずっと思っていたことがあった。
小学校一年生の時、すでに毎号買っていた「りぼん」を読み直すのにも飽きて、暇つぶしに買ってみた「なかよし」。私はそこでセーラームーンに出会った。
武内直子先生の絵に一瞬で魅了され、夢中になり「りぼん」と「なかよし」の2冊買いが定着した。テレビアニメ化決定!と表紙に書いてあるのを見た時は、すごく嬉しかったのを覚えている。
ただ、アニメは、最後まで何か好きになれなかった。
武内先生の繊細で可憐なタッチ。うっとりするようなカラー。私が恋したセーラームーンは、アニメのそれとは違うと、幼心に思っていた。うさぎちゃんも美奈子ちゃんも、漫画よりずっとおバカに映ったし、驚くほど長く美しく揺れる髪の毛は、べたっと塗られた黄色や茶色。
アニメはアニメとして、漫画は漫画として、別ものとして受け入れていたように思う。
鬼滅の刃はどうだろう。
遊郭編が終わったところで、漫画を全巻買って読んでみたが、こちらは完璧にブーストされていると感じた。
吾峠先生が漫画を通して伝えようとしていることを、アニメがさらに濃く深く、強く増幅している。余計なことはせず、あくまで原作に忠実に描かれている。作品に対する敬意と、絶対に良いものを作るんだという製作者の熱意が伝わるから、観ている人の心を打つ。
遊郭編の最後のアクションシーンは、テレビで観た時から息を呑むものがあった。こんな凄いものを本当に無料で観ちゃっていいの?と思っていた。
だから、今回映画館で観た時はもう、その世界にまるごと飲み込まれるような心地だった。映像が素晴らしいのはもちろん、音の迫力は映画館でしか味わえない。炭治郎が、妓夫太郎の首を斬るために「百倍の力をひねり出せ!!」と白目をむいて立ち向かい、善逸と伊之助が二人で堕姫に突進していく様は、もう勝手に涙がぼろぼろ落ちてきて、止めることができなかった。
観に来てよかったぁと感動して、遊郭編の二話を見終わったところで、あの無限城だ。度肝を抜かれた。
すでにたくさんの人達が、あの無限城に感嘆の声を上げている。だって本当にすごい。もう言葉にできないくらい本当にすごいのだ。漫画で描かれているのは、無限城の中のほんの一部に過ぎない。だけど、無限城の内部から外観まで見事な作画で再現している。物語の後半では、ここが舞台となるのだから、今後どんなものが観られるのか。期待しかない。大きなスクリーンで観る価値は、ここだけでも十分にあるように思う。
そして、刀鍛冶の里へ。私は、個人的に甘露寺蜜璃推しなので、大好きなキャラが、大好きな花澤香菜さんの声で動き回っている姿を観られて嬉しかった。昨今のうるさすぎるコンプラを恐れず、しっかり入浴シーンが描かれていたのも、甘露寺蜜璃の美貌が原作通りだったのも好感が持てた。春からの放送が、すごく楽しみだ。
漫画のファンだった人が、アニメを観てさらにその愛を深め、アニメを観てファンになった人が、漫画を読んでその愛をさらに深める。
鬼滅の刃はその相互作用によって、たくさんの人に支持される作品になったのだと思う。ストーリーの面でも語りたいことはたくさんあるが、今回はアニメ作画の素晴らしさに留めて、今後も折を見て鬼滅の刃語りをしたいと思う。