見えないナイフ
見えないナイフをいくつ隠し持ってるんだろう。
何のために磨き上げてきたのか。
理由すら覚えていないものをため込んだ。
トンネルが真っ黒な口を開けて待ってる。
光を持っていないから、頼りない足取りで進む。
見えないナイフだけを懐に忍ばせて。
寒さで震えてるのか、恐怖で震えてるのか。
歓喜と興奮で震えてるのか。感覚が鈍る。
本当に欲しいものはこの先にしかない。
深い闇の正体が自分の眼だと気づいた。
嘘と欺瞞と不信をご丁寧に塗り重ねた深奥。
我を忘れて見えないナイフを振りまわす。
暗がりの中に居場所を求めてたけどもういいや。
今はただ光が欲しい。本当は真っ暗は寂しいって分かってる。
だからそろそろ終わりにするよ。これが最後のひと突き。
もう大丈夫。これからは自分の世界をしっかり見るから。
見えないナイフも全部ここに置いていく。
これまでも、これからも大切なガラクタたち。
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