名演出家の采配

駅のホームは見たこともない人たちで溢れ、それでも知り合いの知り合いくらいの可能性がある人は何人かいそう。

微かに繋がっているのかもしれないけれど、お互いに知らない人。
そういう人を目の前で見ているのに、一番深く強く繋がっている人を見ることができない。

世界の七不思議の一つにしたいくらい。

なんで見ることが、触れることができないんだろう。
きちんと存在している人なのに。

それで厭世的になるかというと、そういうわけではない。
子供がいろんなことに「なんで?」というように、単純に不思議に思う。

おかしいなあ?と。

何か嫌なこと、理不尽だと思うこと、辛いこと、腹立たしいこと、悲しいことが起きた、または今まさに起きているとする。

たぶんそれは、宇宙なのか神なのか誰だか知らないけれど、
名演出家が最高のハッピーエンドを作り上げるために用意した布石。

やきもきすることもあるだろうし、生きた心地がしない場面もある。
だとしたら、想像を超えるハッピーエンドが近づいている。
クライマックスまであと少し。

そのくらい力を抜いておくのもありかなと、駅のホームの知らない人を見て思う、雨の朝。

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