うそのある生活 9日目

6月15日  晴れ   強い陽射しと風

本を読んでいる妻にふざけて抱きつくと、それを見た娘も寄ってきて抱きついた。娘の手足が暖かくて気持ちいいのでついぎゅうと2人を抱きしめると、勢い余ったのか、３人の体同士がくっついて離れなくなった。

離れなくなったよ、と言うと、家族なんだからいいじゃない、と妻が言った。そういえば、実家にいたときにもこんな風に家族同士くっついていた。それが不自由でたまらないので、離れがたいのを離れてようやく東京に来たというのに、うっかりこちらでも自分の家族を作ってしまった。

まったく自業自得なのだけれど、くっついているといろんなことができないので困ってしまう。せっかくの休日なので、お昼にはフレンチトーストを作って、たっぷりフルーツを添えようと思っていた。妻も娘もそれを楽しみにしていたはずなのに、これでは買物にも行けない。それで、このままくっついていたらフレンチトーストを作れないよ、と娘に言うと、いやだ、と叫んで離れた。途端に、暖かかった胸や腕のあたりが涼しく寂しくなる。娘が離れた瞬間にパッと妻とも別々になったのだが、なんとなく気がつかないふりをしてしばらくはくっついていた。