![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/43578975/rectangle_large_type_2_a7f250f8d6ae6a335ae49fa7f6d7c519.png?width=1200)
うそのある生活 21日目
1月16日 晴れ 春みたいに暖かい日
きょうは春のように暖かくなる、と天気予報で言っていたので、勇んですこしはなれたひろい公園に出かけた。自転車のうしろに娘をのせて、公園に向かう。娘ももうずいぶん重くなった。すこし前に測ったら、17キロだったか。
行く道は苦しかった。大きな陸橋の急な坂を息を切らせて登ったり、そこからブレーキもかけずに一気に下ったりした。こちらは必死にこいでいたけれど、その間娘はうしろにのっているだけ。そのうちにひまをして、まだつかないの、と文句を言いだした。
気を紛らわすために、ロボットになることにした。自分は自転車を漕ぐロボットということにして、娘がそれを操縦する。何もない背中を指さして、この辺りが加速のボタン、こっちが減速、ここはブレーキね。そんな説明をしたら娘がことのほか乗り気になった。じゃあ、ここがハンドル、と言って、骨盤のあたりを両手で掴んでくる。公園までの残りの道のり、娘に操縦されて、やたらと加速と減速をくりかえしながら、蛇行して進んだ。そんなことをしたら、苦しかった行く道も、すこし楽しくなった。
夕方家に帰ると、ほんとうにボタンができていた。太腿のつけ根あたり、ボールペンのノックするところのような赤いピカピカしたボタンが突き出てている。娘がやたらとそれを押したがるのをなだめながら、これはなんだろうと妻に話すと、やる気が出るボタンじゃない、といい加減なことを言った。そんなものがあるはずもないし、もともとやる気があるからこんな面倒な現世を生きてるのだ、となんとなく不満に思った。
きっとちょっと変わった蕁麻疹なんだということにして、とりあえず娘と遅い昼寝をした。起きると、望外にボタンはなくなっていた。しばらくあるものだと思っていたので驚いたけれどもともとやる気はあるのだから問題ない。なくなったと娘に言うと、押したかったのにぃ、と大泣きした。泣いてばかりで夕飯も食べないので、それには困ってしまった。
いいなと思ったら応援しよう!
![OMiya](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/11118730/profile_a529464d91ef49692f07a0ed93baf943.png?width=600&crop=1:1,smart)