うそのある生活 18日目
12月1日 晴れ 乾いた空
子どもが生まれて以来、友人と疎遠になった。子育てをしていれば、休日は家族で過ごすし、平日もできるだけ早く家に帰らなければいけないので、なかなかひとりの時間をつくれない。自然と友人と会う機会は減ったし、気がつけばもう数年会っていない友人もいる。
最近になって、このままでは友人たちとどんどん疎遠になり一生会わなくなるかもしれない、と危機感を持った。思えばこれまで連絡をしなかったのも、子どもをいいわけにしているけれど、自分が怠けたというところもたしかにあった。大いに反省して、さしあたり一番仲の良かった友人と、一番信頼している先輩に連絡をとって、会う算段をした。
それで昨日はその先輩のほうに会いに行った。一時期お互い遠方に暮らしていたこともあって、会うのは5年ぶりになる。ずいぶん久しぶりなので、すっかり様子が変わっていたらどうしようかと緊張していたが、会ってみるとすこしも変わらない、かつて見知った彼が現れたので安心した。とはいえ、やはり月日が経って中身が変わらないことはないようで、聞くといつの間にか先輩は俳人になっていた。とある界隈ではずいぶん有名な俳人のようで、俳句会を主催しているほかに、新聞社などから仕事を受けたりもしているらしい。
俳人というからには俳句を詠むのだけれど、一緒に食事をしたりコーヒーを飲んだりする間にも詠みだすのには困ってしまった。声に出すというところが一層厄介で、レストランで食事をしているときに突然「牛フィレに ついてくるくる 揚げたイモ」などと詠みだす。先輩は満足そうにしているけれど、周りは驚いてこちらを見るし、店員にもそれとなく注意される。
始終こんな調子で参ったけれど、やはり久しぶりに話すのは楽しかったし、会えてよかった。次には友人のほうと会う予定だけれど、彼もずいぶん久しぶりで、近況はわからないから、同じようになにか変化しているだろうか。友人は手先が器用だったから、たとえば大道芸人かなにかになっているかもしれない。そんなことを考えると、一度疎遠になってからまた会うというのも、興があってなかなか楽しいものだなと思う。
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