メーカー営業からパン職人になった先輩の話
ワタクシ、会社では管理職をしておりまして、
最近、メンバー全員と面談をしました。
全員の面談を終えた時、
何とも言えない違和感を覚えました。
モチベーションが高いとか低いとか、
問題があるとかないとかじゃなくて、
メンバーの話を反芻しながらどういう組織を作っていくのが良いのか考えても、イメージが全然沸いてこない。
1週間くらい、モヤモヤする日々が続きました。
そんなある日、学生時代の先輩のことを思い出しました。
その先輩はメーカー営業の仕事をしていたんですが、
いろんなところに出張して、
代理店の人たちと営業同行したりお酒を飲んだりして、
「一体自分の仕事は何の役に立っているんだろう?」と悩むようになったそうです。
結果、その先輩はパン職人に転職しました。
メーカー営業より朝も早いし、肉体労働だし、年収も下がったそうです。
それでも今のほうが充実してると言ってました。
この2つのことを結び付けた時に、
僕の中で一つの仮説が浮かんできました。
コロナで余暇の時間が増え、内省する時間も増えた。
そして、在宅勤務をしたことで「会社」「仕事」の固定概念が薄れた。
よく就職活動の時に”これからは敷かれたレールの上を行く訳じゃないぞ”的な話がありますが、
これだけ就職支援サービスが充実している時代、特に大学生にとっては、
実質レールはありますよね。
高校→大学→会社(就職)
と、人生のステージに応じて、朝起きて毎日行く場所は変わるけど、
誰しもがそうやって歩んでいくという常識。
会社に入ったら成長し続けるべきであるという常識。
あくまでその常識の中にある選択肢でキャリアを選択してきた人達が、
「なんで働いてるんだっけ?」
「私の幸せって何なんだっけ?」
と自分を主体として自分の人生を考えてみたタイミングがこの数ヵ月だったんじゃないかと思うんです。
日本の高度成長時代はとうの昔に終わりましたが、
それでもトヨタの社長が”もう終身雇用は無理!”と明言したのはつい最近です。
総中流時代もとうの昔に終わりましたが、
ユニクロの服を着て、ニトリで家具を揃え、お昼に牛丼をかき込み、SNSでの交流を楽しむのは、
年収300万円の人も1000万円の人もあまり変わらないでしょう。
預金や資産総額なんてめったに他人に言うものでもないし、
よく言われるような格差は外見では捉えられません。
なんだかんだで横並び感覚って意外と続いてたんじゃないかと思ってます。
人間の固定概念って怖いですね。
「日本はもうダメだ」と言いながら、
自分のことになると、根拠なく「成長していくのが正解」「成長すればそれなりに豊かな生活が続く」とぼんやり信じていた人が多いんじゃないでしょうか。僕もその一人です。
そして、また仕事でのメンバーとの面談のことを思い返してみると、
かつては「◎◎したい」というTo doの話が多かったのが、
今回は、「こうありたい」というTo beのテーマが多かったことに気づきました。
そしてもう一つ、これまでは業務内の話で完結することが多かったのが、
今回は、人生と仕事の結びつきに関する希望や要望が多かったのです。
だから、僕は情報が幅広過ぎてどんな組織を作るべきなのか分からなかったんですね。
正直、ここについては制度的な部分も大きいので、一介の管理職が全部解決はできないのですが…
これからマネージャーに必要なのは、
組織のTo beと個人のTo beを丁寧にすり合わせることだと感じています。
まずは、組織のTo beを明確にし、何度も何度も都度伝えること。壁に飾られっぱなしの理念じゃダメです。
そして、個人のTo beを先入観を持たずに聞くこと。それを言いたいと思えるだけの心理的安全な場を確保すること。
そして、その2つを繋げることに時間と労力を掛けること。
これが、向こう半年間僕がやる仕事になりました。
あとは、離職率は低ければ低いほうが良いという風潮がありますが、
僕は、どうしてもTo beのベクトルが合わなければ、別れることは問題ないと思いますし、それがまた適合した時に戻ってくるのも大いにアリだと思っています。あまりにそういう人が多く出るなら、やるべきは退職の慰留よりも採用基準の見直しでしょう。
上述のパン職人に転職した先輩は、
毎日体がクタクタになるまで働いて、その日に来てくれたお客さんのことを思い出しながらビールを飲んで、ぐっすり眠れる生活が幸せだって言ってました。
正直、その時は全然ピンと来ていなかったのですが、今ならわかる。
きっとその先輩は、To beが強い人で、コロナが無くても自分のTo beに気づけた人なんだと思います。
To doからTo beへ。
成長から幸せへ。
しばらく頭を悩ませるテーマになりそうです。
本日もお読み頂き、ありがとうございました。
おしまい。