【コスモテック 全面箔押し 同人誌】で検索している人の背中を押したい話
初めまして、くらはしと申します。
去る2024年12月、噂の箔押し印刷所、コスモテックさんにて同人誌表紙の箔押し立ち会いを行いました!
自分の記録に過程を残し、そして過去の私と同じく「全面箔押しをしたいけど、夢のまた夢だ」と思っている方へ楽しさが伝わればいいなと思います。
夢の箔押しが生まれる場所、コスモテックさんへ行きましょう!
思い出を語る前に、2025年1月現在の箔押し依頼に関する情報を記載します。情報だけ欲しい方はここだけ読めば大丈夫です。
思い出話もかなり長いので、箔の写真をご覧になりたい方は目次より「そして迎えた立ち会い当日」までジャンプして下さい。
今回製作した新刊は2/9 VRFにて頒布します。
別ジャンル参加の箔押し好きの方向けに、カバーでないので完全に観賞用となりますが、トンボも箔になっている製本前の表紙用紙のみの頒布も行う予定です。ご興味がございましたら、記事の最後の頒布案内をご覧下さい。イベント後該当部分は削除します。
◾️箔押し依頼の情報(2025年1月現在)
箔押し(ホットスタンプ)と版利用の型押し専門、コールドフォイルは非対応
料金は絵柄・加工難易度・枚数により異なる完全オーダーメイド。ほぼ決定稿が出せれば正確な見積が出るが、ラフでは概算になる
入稿はトンボも統合した状態のモノクロ二階調、解像度1200dpi
依頼は1枚から可能
入稿〜箔押し本番まで約2〜3週間
HPなし、連絡はメール
完成品の発送以外の用紙の手配(校正予備も必要)、製本の印刷所への連絡などは依頼者側が行う
箔の在庫は流動、どうしても使いたい箔がある場合取り寄せになるが、ロール単位なので要確認
校正立ち会いは平日の営業時間中、料金は2万円
箔押しのことならなんでもメールで相談できるからどんどんした方いい
◾️依頼したきっかけ
昔から装丁、特に箔押しが無性に好きです。
コスモテックさんのブログも楽しく読ませていただいていましたが、憧れというよりも別世界の存在でした。
2023年の秋頃から、2024年冬開催のイベントへの動きがありました。(本筋と関係ないため省略しますが、その後2025年2月に決定)
一年もあれば表紙も依頼できるし本文もゆっくり書ける、できれば箔押しもしたい、どの印刷所にお願いしようか…。
そんな折、ひとつのツイートが目に飛び込んできました。どうしてもこの箔押しが欲しい!!そう思ったのはありはらさいきさんによる、コスモテックさん紙と箔おまかせ名刺です。
手元に届くと、箔の緻密さはもちろん、写真に映らないパール感がとっても可愛い!箔は実物を見てこそ!!とよく言われているのを実感しました。
箔ってここまでできるんだ!こんなに綺麗なんだ!と感激して、改めて過去10年分ほどのコスモテックさんのブログや【コスモテック 全面箔押し 同人誌】で検索して同人誌の事例をひたすら遡り、ますますコスモテックさんのことが好きになりました。
善は急げで送った初めてのメールは2024年2月5日、一年後のイベントの本の話をしても即座に断られたらどうしよう…一週間くらいかかるかな…と思っていたら、
その日のうちに、現場リーダーの前田さんから概算の見積もり付きで返信が届きました。
はっっっっっや!!!!!ありがたすぎます。
予想していたよりも自分が許容できる金額で、ここは一念発起するしかない!!!と覚悟を決めました。
ここから数十通のやり取りがスタートしますが、根気よくお付き合いいただいたコスモテックの前田さん、営業の青木さん、本当にありがとうございます!
最初の青木さんのメールの「雪かきからのスタートでした」という一文で、同じ世界にいる…と実感したのが印象に残っています。関東に珍しく雪が降った日のことでした。
お二人とも、多くのお仕事があるにも関わらず会社に住み込みなのでは?と疑うくらいレスポンスが早かったです。ゆっくりお休みして下さい!
◾️全面箔押し本を作るぞ!
前述の通り、コスモテックさんは入稿さえ終われば2〜3週間で箔押し作業が完了しますが、早め早めの超前のめりで問い合わせをしたので10ヶ月かけています。
本の製作でやるならきっとチャンスは一度きり。ならば全面箔押しで、人物と装飾両方押したい!という欲が生まれました。
しかしながら私は絵が描けません。デザインもできません。小学生レベルのイメージ図と資料を用意してイラスト製作を打診しました。
全世界に向けて恥を晒しますが、絵を描けない人間の全力の図から、無茶振りを快くお引き受け下さったイラストご担当のジルコさんのラフへの劇的ビフォーアフターをご覧下さい。汲み取り力が素晴らしすぎます!!!!
コスモテックさんにこちらのラフを送り、再現性の確認と共に改めて見積もりを出していただきました。背幅がギリギリまで決まらないと分かっていたので、文字入れと最終調整は私が行いました。フォントの力は偉大です。
製本の印刷所への相見積もりはオンデマンド対応、表紙持ち込みや小説への言及があるなど、お願いできそうな8社にメールしました。
結果は◯2社 △2社 ×4社。△の理由はオーダーメイドはオフセットのみ可、正式依頼でないと金額算出不可ということで納得。
ちょうど色々走り始めた頃、S_Dさん(すいさん)の素晴らしい全面箔押し本も手に入れました。
同じデザインでも箔と紙によって表情が変わる様に圧倒されました。
◾️紙と箔の相性チェック
表紙の紙は本のコンセプトを伝えてコスモテックさんにご提案いただいた【ミランダ あい】に決定したものの、紺色のキラキラの紙に箔を押したらどうなるのか?が想像つかないので、複数色でサンプル用紙を製作いただきました。
名刺サイズに図案がぎっしり、最も細い線は0.1mmではなく0.1pt(約0.035mm)です。
髪の毛ほどの驚異的な細さです。サンプルながら、コスモテックさんの技術力を惜しみなく披露してくれています。この版もブログで見たことあるやつだ!とテンションが上がりました。
ここですっかり安心した私は数ヶ月後に泣くことになるのですが、そんなことはつゆ知らず、箔押し見本帳も手に入れて日々どんな箔にしようかなと妄想を膨らませていました。
妄想の一つが次の記事で知った「箔on箔」カラー箔の上に透明箔を押してオリジナルの色味にするというものです。すごい!!
色付きのホログラムと言えば、同人印刷所の箔押しラインナップでもよく見るこの箔。
「推しの箔色があったらいいのにな〜〜〜〜!」
と思ったことはないでしょうか?私はあります。めちゃくちゃあります。もしかしたら、叶うかもしれない…!!
記事内で使われている縦の透明ホロ(HK209透明)しか使えないことはないはず、きっと同じメーカーならHK038も押せる、立ち会いで真っ先にお願いしようと決意しました。
◾️本文がないと背幅が決まらない
最初の打診から入稿までの期間が長かったので、夏頃に青木さんから「その後いかがですか?」とメールをいただきました。お気遣いがとても嬉しかったです。
季節は冬から秋になり、表紙イラストもコスモテックさんも準備万端!本文だけずっと製作中でした。
3月春コミ、6月ジュンブラ、10月スパークと新刊を出したので、2024年は原稿の合間に別の原稿を書く生活をしていました。
二稿目完成でページ数を確定とし、製本の印刷所さんへ見積もりを依頼しました。ちなみにこの後色々あって書き直しをしたので、この頃の原稿は残っていません。
◾️噂通り!しまや出版さん
今回製本印刷をお願いしたのは、「初心者に優しい」と銘打っている老舗同人印刷所のしまや出版さんです。
最初の問い合わせから大変丁寧にご対応いただきました。お電話もマイページもとにかく手厚い。そして、キャンペーンの遊び紙がイメージにぴったりでした!
私が前のめりすぎて箔押し立ち会いの段階では締切が未定でしたが、予想より半月遅くてありがたかったです。せっかくこだわりの表紙なら、他の部分もこだわりたい!ということで、本のテーマに沿って紙を選びました。
本文用紙は嵩高紙が好きなので取り寄せていただきました。ソリストSPは、紙の名前の由来と、紙見本で見たクリーム色にほんのりピンクがかった色がお気に入りです。キラキラして差し色がピンクで恋愛っぽさが出た本になる…はず…!
◾️いざ入稿!からのまさかの…
背幅が確定したので表紙を作成、11月頭にコスモテックさんへ入稿しました。すぐに立ち会い日程は翌週でどうでしょうか?と連絡が来ました。なんという話の速さ!!
私の仕事の都合がつかず立ち会いは翌月となり、時間的余裕が生まれたため、箔のイメージを掴むためのテスト用紙を郵送していただけることになりました。優しい。
到着当日。ソワソワわくわくしながら開封して取り出してみると、今まで見たことのないきらびやかな箔に目がチカチカしました。しかし、どうしても気になる箇所があります。
攻め箔になってる!!!
攻め箔とは、あえて線を潰すこと前提の細い図案にして、箔に模様を出す技法です。解説記事はこちら。
人物の絵柄は本来抜きの図案になるはずが、箔が埋もれ、遠目から見たらシルエットのようになっていました。しかし、左側の同じくらい細い0.1mm程度の線はしっかり押せています。
今振り返れば当たり前の話ですが、版が大きければ箔押しの難易度が上がります。テスト版は名刺サイズ、これはA5展開サイズです。
箔を「押す」と「抜く」も性質が異なります。ベタ面もたっぷりの今回の図案では細い抜きの線が埋もれてしまったのです。
テスト版とラフチェックで安心して、厳密にどの程度抜きが必要かの確認を怠った私のミスです。
コスモテックさんの技術は素晴らしく、よく箔押しの注意書きに書いてある【細い線のかすれ】や【ベタ面の気泡】は私がいただいたテスト版では一つもありませんでした。そもそも0.1mmが押せるのが凄い。
詳細は省略しますが、諸々の連絡と相談を済ませ再入稿を決めました。動揺してメールが拙い文章になったことが申し訳なかったです。
皆様に迅速にご対応いただき、大変感謝しております!!もちろん版代は2倍になりましたが、後悔は一切ありません。
再入稿の確認版を改めて手に取った時、嬉しくてありがたくて泣きました。
◾️そして迎えた立ち会い当日
一人だと冷静な判断ができないと思い、友人に同行してもらいました。
目の前に広がるブログで見た景色に感激していると、作業机の上に色とりどりの表紙がありました!!ただでさえ上がっていたテンションがますます上がります!まだ立ってるだけなのにすっごく楽しい!
なんと、妄想していたカラー箔+HK038透明ホロの組み合わせも既に用意されていました!
箔on箔をしたいと伝えていたものの、HK038が好きだとは一言も伝えていません。伝えていた本のイメージから想起していただいたのでしょうか…。真相を確認しそびれました。
推し色のカラーホログラム箔、作ってみたい方!その願い、コスモテックさんなら叶います!
どうして手作業なのに二色の箔をぴったりずらさずに押せるのか、すっと準備してえっもう!?というスピードで押して下さるので職人技に驚きの連続でした。
箔on箔に感激したのはもちろん、私は興奮のあまりず〜〜〜〜〜っと喋っていました。
隅から隅まで箔!箔!箔!ブログで見た名刺だ!ナスカの電子回路マステだ!熊手だ!と、響き渡る箔押し機の立てる音も身体で味わいながら、今自分がコスモテックさんにいる実感を噛み締めていました。箔見本を見ながら希望を伝えたらぱっと箔が出てくるのもすごかったです。
青木さんが傍でじっと表紙を見ながら私の言葉に耳を傾けてくださったり、友人が第三者目線で私の箔を見た時のリアクションや、箔への印象を言語化してくれて、本当に助かりました!
箔選びの条件はこんな感じです。
箔に詳しくなくても手に取って「綺麗だな」と感じてもらえる
人物と装飾の両方を活かす
ミランダあいと合わせると、白地に押された箔見本帳と印象が異なるので要確認
箔をしっかり抜くためにはシルキー系・顔料系は不適、メタリック系にする
王道の組み合わせは間違いないが、せっかくだからコスモテックさんに来たからこそできた!というものがいい
先ほどのアバロンシルバーやレインボーは装飾のみならいいけれど、人物が活かしきれない。
紺の紙と合わせるとシルキーアイスグリーンのような淡い色は更に薄く見える。
金は王道だけど、コスモテックさん以外でもあり得る組み合わせ。
名前が推し関連なので検討していたドルチェ箔は柔らかくて抜きがうまく出ない。
暖色系はシックになりイメージと合わない。
などなど、一つ一つ候補を絞り込んでいきました。
「この箔とこの箔の間の色はこれですか?」のような感覚に頼る調整もしていただいたのですが、その時に出てきたのがポーラライト箔でした。
まだあったんだ!(数年前に製造中止しています)
ポーラライトに、透明ホログラムを乗せる。想像もしていなかった組み合わせに、緊張と期待でよりテンションが上がります。
豪華!!!!!写真で表現できないのが悔しいですが、とっても美しく、幻想的な箔色になりました!
即決!!ではなく二つの組み合わせで絞り、最終的にポーラライト・HK038透明重ね押しに決定!
動画で色味の変化をぜひご覧いただきたいです!
箔フィルムを剥がす体験もしました。動画は無音ですが、超盛り上がっていました。
立ち会いでは紙の紺と溶け合い青が見えなかったのですが、後日自然光の下に持ち出してみると、見事に青が見えてより夢中になりました!
この組み合わせは、立ち合いしなければ生まれなかった偶然の産物です。ミランダに敷き込まれたガラスフレークの輝き。ポーラライト箔の偏光。透明ホログラム箔の光彩。光の三重奏で生まれた虹彩が楽しめる素敵な表紙になりました。
たくさんの箔と出会い、最後に立ち会い記念の賞状までいただきました。賞状も全面箔押し。すごい!
時間にして2時間弱だったかと思いますが、濃密な時間を過ごせました。体感1分でした!当日は別のお仕事をご担当していた前田さんにもご挨拶できて嬉しかったです。
もう箔は決まったのに、明日も来たい!ずっと箔を見たい!と後ろ髪を引かれながら工場を後にしました。
◾️コスモテック青木さんよりコメントをいただきました
体験記を書くので、ぜひ青木さんからも一言いただきたいとお願いしたところ、ご快諾いただきました。素敵なご寄稿をありがとうございます!
立ち会いの数時間後に届きました。早い!!ありがたい!さすがブログを20年続けていらっしゃるだけある。ついにお会いできたこと、一緒に箔で盛り上がれたこと、本当に幸せな時間でした!
◾️おわりに
立ち会い直後も、感想を語り合ってから帰路に着いても、家に帰って改めて写真を撮ってもずっと興奮して体温が上がったまま夢見心地でした。
翌朝会社に行く前に机に飾った表紙を見て、夢だけど、夢じゃなかった!!と嬉しくなりました。
箔押し加工ができる印刷所は多々あれど、加工の自由度の高さ、箔押しをこの身で体感できること、プロのサポートを受けて、ものづくりの場のエネルギーを感じながら箔を選ぶことができるのはコスモテックさんならではです!
「箔を押す」「キラキラした箔っぽいものにする」だけが目的なら、今は箔押し以外の方法があり、裾野が広くなっていると感じています。本がキラキラしていると楽しい!
そんな中、あえて全面箔押しをコスモテックさんにお願いした理由があります。
私は箔押しをした時に生まれるかすかな凹みが好きです。インクではない金属特有の色が好きです。そして、コスモテックさんの箔押しへの情熱を惜しみなく発信する姿勢が好きです!
実際にやり取りを重ね加工現場に立ち会い、技術面はもちろん、箔を通じて理想の作品作りのため伴走して下さることにも感激しました。
もし、箔押しが好きで、色んな箔色を試したい、箔をとことんこだわり抜きたい!という方、コスモテックさんに相談してみて下さい。きっと力を貸して下さいます。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
◾️頒布についてお知らせ
2025年2月9日 VRF(同人即売会・CPプチオンリーのみ)新刊と既刊を頒布します。詳細は画像をご覧下さい。同人即売会ってなに?という方向けのイベントではないです、ご注意下さい!
落ち着いていれば箔がどんな感じなのか見学のみでも大歓迎です。
超・少部数のため、どうしても確保しておきたいというありがたい方は【2/7 12:00】までにX(Twitter)までご連絡お願い致します。どうぞよろしくお願い致します。