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【コトダマ011】「わたしたちみんなが環境に・・・」

わたしたちみんなが環境に順応していたら、わたしたちは定型化し、死んでしまうでしょう。世界は、不健康な精神がそのなかにまじっているからこそ健康なのです。

R・A・ラファティ『昔には帰れない』より「素顔のユリーマ」

わたしたちのクライエントの中には、どうしても「環境に順応」できない人がいます。そのため引きこもりになったり、不登校になったり、うつ症状になったり、あるいは暴れてしまって刑務所に入ったりする。

ソーシャルワーカーの仕事は、そういう人を「環境に順応させる」ことなのでしょうか。もちろん、そういう対応が必要なこともあるでしょう。でも、多くの場合、必要なのは「環境に順応できないという事実を受け入れ、折り合いをつける」作業だと思うんですよね。精神科医の中井久夫は、彼らを「世に棲む患者」と呼びました。言いえて妙だと感じます。

「不健康な精神」というラファティの言い方は少々どぎついですが、まあ、言いたいことはわかります。みんなが環境に適応できる社会は、一見とても素晴らしいように見えるけど、脆弱です。そのことを教えてくれるのが、進化生物学であり、すぐれたサイエンス・フィクションであり、そして私たちの目の前にいる、さまざまな困難を抱えるクライエントたちなのではないでしょうか。

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