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神戸市がどのくらい没落したのか検証してみる


かつて日本屈指の大都市だった神戸市は、その衰退が叫ばれて久しいです。


神戸は昭和期から「お洒落な港町」「ブランド都市」としてイメージアップを図ってきましたし、女優の戸田恵梨香が「大阪とは一緒にしてほしくない」と言ったように、神戸市民は昔から大阪とは一線を画してきた経緯があります。


それを根に持っている大阪人は、神戸の衰退は神戸人の慢心が招いたものだ、大阪に反抗したツケなのだ、と嘲笑いました。



しかし、神戸衰退の本当の要因は、日本を取り巻く社会情勢の変化、経済構造の変化、ライフスタイルの変化などが背景としてあったのです。




もう現代人が知らない全盛期の神戸

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神戸市は今なお人口150万人の大都市であるため、今の神戸市の姿しか知らない人は、衰退したと言われても実感が湧きにくいかもしれません。

神戸は幕末に開港して以降、急速に発展し、戦前において六大都市の一角として君臨していました。人口だけで見るなら(旧)東京市・大阪市に次ぎ、名古屋市・京都市・横浜市とほぼ同等の勢威を誇っていた時期があったのです。

各都市の人口

しかし戦後、神戸市の人口は伸び悩み、今ではライバルの横浜市に遠く引き離され、札幌市・福岡市・川崎市にも抜かれ、現在は全国8番目に沈んでいます。

1970年代以降、市の人口が伸び悩んでいるのは名古屋市と京都市も同様なのですが、名古屋は衛星都市の人口が増えているため実質拡大しており、京都は観光客数・観光収入が増大したので、両都市は衰退したと考えられておらず、神戸の1人負けと言って良い状態です。


全国の港町が苦境に立たされている

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しかし全国的に見ると、衰退しているのは神戸市だけではありません。

下関市や函館市、北九州市、呉市、小樽市など、海運や造船で栄えた港町はどこも人口減少が著しく、神戸市はまだマシなほうとも言えます。港町で人口を維持できているのは全国で横浜市ただ1つであり、その横浜市は東京一極集中の恩恵を受けているため特殊でしょう。


海洋国家の日本において、海運はかつて物流の生命線とも言える重要な分野でしたが、航空機に取って代わられ海運の重要性そのものが低下。加えて、連絡橋の開通により、関門海峡、津軽海峡、瀬戸内海は自動車で移動することが可能となり、ますます船舶の需要が低下しました。

しかも、タンカーなどの大型船については韓国や中国の造船企業との競争が激しく、造船・海運は今や日本にとって斜陽産業であり、それに紐づいている鉄鋼業も冷え込みつつあります。

港湾と空港の貿易額

ソース:総務省統計局(平成27年)

昭和期に「東洋一の貿易港」と謳われていた神戸港も、貿易額では東京港・横浜港・名古屋港・大阪港の後塵を拝するようになりました。上海や香港や釜山といったアジアの大港湾と比較すると、神戸は見る影もないのが現状です。



神戸の活力が大阪に吸い取られている


それでは、神戸市の中でも一体どのあたりが衰退しているのでしょうか。

各区の人口の推移をグラフ化してみました。


神戸市各区の人口推移


1970年代以降、神戸市の中でも長田区、垂水区といった市西部の人口減少が鮮明であり、阪神淡路大震災に関係なく一貫して著しい減少を辿っていることが分かります。

一方で、北区や西区など内陸部はニュータウンの形成によって人口が増加。1990年代頃まで、神戸市は山を削って宅地開発し、その土砂で海を埋め立てて人工島を作るという手法を取っており、当時「株式会社神戸市」とも呼ばれて都市開発の模範とされていました。しかしすぐに神戸市の財政が行き詰まってしまい、現在は山手の開発は以前ほど勢いがありません。

東灘区、灘区などの市東部は21世紀以降、人口が増加に転じています。これは、大阪に職場がある人が灘区、東灘区に住居を構えたことが大きいと思います。

近年は大阪梅田の再開発によりオフィス需要が三宮から梅田に流出している可能性は指摘せざるを得ません。そして、現在では当たり前になりつつある共働き夫婦は少しでも通勤の負担を減らしたいと思うものですし、大阪に近い東灘区や灘区がベッドタウンとして好まれているのだと推測されます。


神戸の復活はありえるか

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「お洒落な港町」としてブランドを築いてきた神戸市ですが、それも現在はやや陰りが見え始めています。

日本人には「異国情緒」がウケますが、異国人に異国情緒がウケるわけがありません。中国人が南京町中華街を見ても仕方がないですし、西洋人が西洋館を見ても感動しないでしょう。

そのため、インバウンドに湧いていた関西の中でも神戸市は訪日外国人の増加が鈍く、むしろ神戸をスルーして姫路城に行ってしまう人が多いくらいでした。

日本人からしても、残念ながら近年の神戸市は話題性に欠いています。全国テレビのロケで横浜が登場することは多いですが、神戸が登場することはほとんど無いからです。



神戸市は「神戸ブランド」に自惚れている場合ではありません。

単なるハコモノ作りではなく、若者やファミリー層が定着するような抜本的な人口減対策、アフターコロナを見据えた経済活性化を今からでも講じておかないと、神戸市の地盤沈下は収まる気配はなさそうです。


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