ジェンダーギャップを気にするメディア、無関心の政治家
今年もジェンダーギャップ指数(Gender Gap Index)が発表されましたね。日本は例年通りの低評価😨もはや驚きはありません。
実は、一般に「男女平等ランキング」と呼ばれる指標は何種類か存在することをご存じでしょうか?
日本の順位
・ジェンダー不平等指数(国連開発計画、2017年) 22位/160か国
・ジェンダー開発指数(国連開発計画、2017年) 55位/164か国
・ジェンダーギャップ指数(世界経済フォーラム、2021年) 120位/156か国
・社会制度と男女指数 (OECD、2019年) 10位/177か国
特にジェンダーギャップ指数では日本が世界ワーストレベルの順位になっているため、よく国内メディアも取り上げ、毎年盛んに報道されています。
ジェンダーギャップ指数についての詳細
ジェンダーギャップ指数の詳細な内訳については何故かほとんど報道されていません。以下は2019年の日本の点数の詳しい内訳です。
①健康の平等 0.979(世界平均0.97)
②教育の平等 0.983(0.98) ※
③経済の平等 0.598(0.58)
④政治の平等 0.049(0.12)
総合 0.652(0.66) 世界順位121位
点数で見ると日本は世界平均と同じくらいじゃん!🙄と思うでしょうが、各国で僅差なので順位にすると最下位レベルになっています。
ちなみにジェンダーギャップ指数には、女性に対する暴行や性犯罪、女性の経済負担、参政権、衛生面、娯楽面などは考慮されていないため、女性にとって住みやすい国かどうかは別問題とされており、そのため国際的に有用性の低い指標と言われています。
たとえばこの指標で順位の高いルワンダは、大虐殺の影響で男性人口が減ったことや男性のギャング化により、女性が政治経済を運営せざるを得なくなったという特殊事情があります。フィリピンも男性がだらしないぶん社会の中で女性の役割負担が大きいという国柄が影響しています。
このような発展途上国・紛争国的な要因でランキング上位にいる国も少なからずあり、もちろん、これらは日本にとって目指すべき理想の国ではありません。
※ 2019年の「教育の平等」において、女子の大学進学率において集計ミスが指摘されており、実際より日本の点数が低く算出されているようです。
政治が変わらないと順位は一向に上がらない
日本人はお国柄ランキングというのが大好きですが、それぞれの国で産業構造や国家体制が異なるので国際比較での順位そのものに大した意味はありません。
先ほど挙げたジェンダーギャップ指数の内訳を分析すると、各国で差が大きいのは④政治の平等であり、日本はこの分野で大きく足を引っ張っていることが分かります。そして、ランキングの信用性は置いといても、日本の女性議員の割合が低いのは事実ですし、多くの日本国民はそれを問題視しています。
日本の国会議員の女性の割合は約10%に過ぎず、これは193か国中、165位という悲惨なものです。日本の国会の総入れ替えが発生しない限り、女性議員比率は上がったりはしないので、ジェンダーギャップ指数は毎年発表されてますが大して順位の変動はありません。
北欧やドイツのように「クォータ制」を導入して女性枠を設け、政治力で強引に男女平等になるよう舵取りしている国もありますが、むろん日本の政治家はクォータ制の導入には消極的です(ヨーロッパは結果の平等を尊重するが、日本やアメリカはプロセスの平等を尊重するという違いもある)。
真の先進国になるには男女平等は不可欠
なぜ女性の政治家が必要かというと、女性の労働力化を進めるには職場における女性の地位向上が急務であり、それには政治的なバックアップが必要になるからです。女性目線での政策が求められているから女性の政治家の割合が重要な指標となっています。
昔のような重厚長大な工業国でやっていけるのであればともかく、少子高齢化がますます進む中それは難しいですし、女性の労働力は避けられません。さらに、欧米と同じIT先進国を目指す、海外から労働者を受け入れるのであれば、女性の地位向上は不可避です。海外には女性の優れたエンジニアや経営者も山ほどいますので、対外的な評価もそのうち重要になってくるでしょう。
蛇足
ちなみに男尊女卑な国と見られているサウジアラビアは、石油で経済が回っており、国籍保持者は手厚い福祉を受けられ、働かなくても生きていけるので女性の労働力を必要としておらず、男性すら働いていない人が多いという奇異な国です。
また、中国は「女が強い国」とイメージする人が多いかもしれませんが、(昭和の高度経済成長期の日本のように)工業化に伴い近年急速に男社会化が進んでおり、わずか数年で順位が大幅に低下しています。
そういえば、日本でも「男は外で重労働、女は内で家事」という価値観が生まれたのも高度経済成長期の頃で、それより昔の農耕社会では共働きが当たり前だったことから、日本は歴史的に元々「女が強い国」だったと指摘する専門家もいます。
古代の日本は卑弥呼に始まり、推古帝・皇極帝・持統帝などの女王がいましたし、平安・室町期にも「女人入眼の日本国」「日本は姫氏国ともいう。女が治めるべき国と言えよう」と数々の古典の中で記述されています。歴史云々を叫ぶ保守層ほど、意外とそうした日本史を知らなかったりします。
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