【院生養成所ライフ2】東京はアメリカでブロードウェイ
東京は夢に寛容だと思う。
大きな夢を持つことも、無謀ながらそれを追うことも、手放しで応援してくれる。
みな他人の夢など所詮他人事だとわかっている。人や物に溢れたこの土地では自分のことに構うだけで気力も体力も時間も消耗していく。だから、他人の絵空事くらいはエンタメとして能天気に消費しておかないと生きてゆかれないのだろう。
今夏は、帰省をしなかった。昨年もしなかった。年始に少し帰ったが、それは成人式の後にやるはずだった高校の同窓会が延期に延期を重ねついに決行されたからだ。楽しかったは楽しかったが、もし参加しなかったとしてもどうせ一人の部屋で映画鑑賞か読書か睡眠かをして楽しんでいただろう。
私はすべてを楽しめるさいわいな人間なのだ。
最近、ことばと仲良くできていない気がする。以前は書きたいことや伝えたいことが頭から溢れるほどあって、そこへ易しい語も難しい語も選びたい放題に注ぎ込めた。今は、想像もそれを表現することばも管のどこかで詰まっているような心地がする。インプットもアウトプットも正しく機能していない。休んでいるし、忙しくもしている。友人や先輩や後輩や先生ともたくさん話しているし、故郷からも距離をとっている。何も変わっていないのに、何が変わった?
詰まりを取りたくて、大きな本棚を買った。
好きなものがぎちぎちに詰まった空間はすばらしいものなのだけれど、もう少し風を通すべきなのかもしれないと思った。
大きな本棚は、9月上旬に出荷されるそうだ。まだしばらくは、ぎちぎちだ。
2024年8月22日
修士1年 森貞 茜