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考え抜き、強烈な役を生きる ~インタビューリレー⑥ ムラチヨリ~


ゲスト紹介

名前:ノムラチヨリ
国際人間科学部
卒業公演では、役者・演出補佐・宣伝美術・小道具を担当。
心理学を学んでいるからか、役の心情を深く考察し、言語化する能力に長けている。『夢中』にて演じる役は、特に心の奥深くまで考えていないと表現が難しい役である。限界まで考え、役を身に宿す覚悟で稽古に取り組んでいる。


本編

〈演劇関連〉 ~演劇好き・公演を観に行こうと思っている人必見~


ー今回の役どころ/スタッフの仕事を教えてください。

 今回の役どころは,そうですね~。ノムラチヨリ3世といったところでしょうか。
(※ノムラチヨリは,過去2作品で2回死んでいる。)
 スタッフの仕事は,演出補佐,宣伝美術,小道具をさせていただいてます。演出補佐では,役者同士での話し合いを演出メモとして記録したり,始めの頃は稽古場動画の撮影もしたりしました。宣伝美術や小道具はまだあまり私が動けておらず,これから仕事します。


ー脚本を初めて開いた時、どんなことを思いましたか?

 脚本を初めて開いた時には,おほほほほ~これは1クールのドラマ分のスケールやな~って思いました(冗談です笑)。本音を言えば,これをこれから劇として作っていくのか!よっしゃ!頑張るぞ!と高揚感を抱きました。
 読み合わせで脚本に,はじめて声が吹き込まれた時には,感情がぐちゃぐちゃになりました笑


ー『夢中』の魅力や見どころは何ですか?

 『夢中』の見どころは,様々な登場人物の視点で物語が楽しめるところです!ひとりひとりの人生や生き様が丁寧に描かれている作品なので,シーンひとつひとつで感情移入する対象を換えながら観てください!


ー新人公演後、初の舞台ですね。やっぱりまだ緊張していますか?

 緊張してます‼緊張しない舞台はないですね~。舞台どころか,最近では練習のときにも緊張するようになりました。緊張感をもって稽古ができているということで笑


ー大学以前に演劇の経験はありましたか?

 高校演劇をしていました。高2で剣道部から演劇部に転部しました。部員が少なく,入部してすぐに副部長になるといういきなりビックリ大出世でした笑
 初の舞台は地区大会で有難いことに主の役(主演)をさせていただき,結果は優秀賞で惜しくも地区大会止まりでした。県大会で講評委員をし,他校の先生に推薦していただき,中部大会でも講評委員をさせていただきました。講評委員の活動については,「第72回中部日本高等学校演劇大会」でググって,ホームページの「講評へ」をご覧ください(宣伝)。高3では,引退公演として8月に「セロ弾きのゴーシュ」ならぬ「ギター弾きのゴーシュ」という現代版の作品にオマージュし,動物役として一人で6役しました。なので,舞台経験は地区大会,引退公演,はちの巣座新人公演の3回で,今回の公演で4回目です。


ー演劇を始めたのはなぜですか?

 私は今年から神戸大学に転入しました。小学校教諭からスクールカウンセラーになりたいという志に変わり,前の大学では,とにかく心理学,公認心理師の道に進めるように勉強していて,サークルに所属していませんでした。
 心理学の領域では,「心理劇」といって演劇が心理学に応用されることがあります。また,心理学は相手の立場になって考える「共感」を大切にする学問でもあります。このことから,演劇で様々な人間について考え,演じることは,心理学にもつながるのではないか,と思い演劇を再開しました。そして,心理学の知識もまた,今日の役作りに活かされている気がします。演劇と専門分野の相乗効果を期待して,演劇を再開しました笑


ー役作りはどのように行っていますか?

 脚本にある「言葉」に「感情」を乗せるところからはじめています。私だったら,このシーンだとこう感じて,このセリフが出るな…私にも似た経験があるかな?どうかな?という感じで,まずは役ではなく,私として役に共感することからはじめています。そして,セリフをひとつひとつ分解し,ひとつひとつに感情や表情,動作を当てはめています。それから,そのセリフの中から,演じる人間(役)のもつ「心の癖」のようなものをみつけて,役の性格を分析します。このときに,性格をひとつに決めずに,性格ではなく人間を演じるために,役の中にある矛盾する性格をあえて抽出することを意識しています。役がこのシーンだとこう感じるだろうな~というのが掴めてきてやっと,「私」から抜け出して「役」になれる気がします。


ー新人公演を終えて、苦労したこと、大変だったことは何ですか?

 新人公演では,「優奈」という私とは正反対の役を演じました。正反対という点も大変だったのですが,それよりも大変だったところは,一番観客に共感してもらえない,感情移入してもらえない役だったことです。
そして新人公演は,高校演劇から大学演劇への転向でもあり,私にとって挑戦でした。高校演劇の時には,ひとつの性格から役を演じていました。しかし,人間ってひとつの性格で語れるほど単純じゃないよな~と思うようになり,新人公演では性格ではなく,人間を演じるということを目標に挑戦しました。優奈の性格をいろいろ書き出してみたら,まァ矛盾の多いこと。矛盾をどう演じようか,と考えのに苦労しました。そしてその結果,新人公演では表情をコロコロ変えるという結論に至りました笑


ーはちの巣座の同期、先輩、後輩でこの人すごい!って思う人は誰ですか?そして、どこがすごいと思いますか?

 建前なしで,みなさんいろんなところに演劇の引き出しを持っていてすごい!です。演技力はもちろんのこと,宝塚が好きな方やユーモアに長けている方などなど・・・
 特筆すれば,「稲葉有哉」さんがすごい!って思います。役作りでは,役の生育歴も考えておられるそうで,裏の設定というか,裏の裏というか・・・そういうものまで考えて役を練り上げていくところがすごいです。「裏の裏」まで役を作りあげれば,「表」になって演技に深みや幅が出るんだなぁ~って稲葉有哉さんから学びました。


ーどんな役をやってみたいですか?

 兎に角,死なない役がしたいです!生を全うしたい!笑 死んでしまう役は,次の公演で新しい人生として役作りを心機一転できるのは,長所なのですが・・・。やはり生きていたいものですね。今回の「夢中」ではどうなのでしょうか・・・?死なない役かどうか,劇場でご確認ください(o^―^o)


ーはちの巣座のファンの名前は何がいいですか?

 Kobeehiveとかですかね~。


ー稽古場の雰囲気はどのように感じていますか?

 稽古場の雰囲気は,みなさんノリが良いというか…なんていうのでしょう…。張り詰めたシーンの稽古のときには緊迫感があり,コメディシーンの稽古のときには和やかになり,休憩中にも一人がチョケると次々チョケはじめて,チョケの連鎖が起こります…笑 とにかく,全員ノリが良いので一人笑うとみんなも笑う,一人が真剣になるとみんなも真剣になるというように空気が一体化してます。


〈文化談義〉 ~芸術好きの方必見~


ー好きな役者、芸能人はいますか?

 好きな芸能人は,杉咲花さんです。朝ドラの「おちょやん」での演技をみて,それから好きになりました。「おちょやん」は浪花千栄子さんというオロナイン軟膏の看板でお馴染みの女優さんの生涯がモデルとなった作品です。自然体な演技で有名な浪花千栄子さんを杉咲花さんが演じ…役者が役者を演じるという難しい役どころを見事に演じていて感銘を受けました。


ーおすすめの本を紹介してください!

 私は,小説を読み切れない人間なので漫画を紹介します。小説は宮沢賢治や村上春樹など有名どころを着手しましたが,読み途中が20冊以上あります(^▽^)/ 
 漫画は,「こどものおもちゃ」という漫画がおすすめです。少女漫画なのですが,キャッキャウフフという少女漫画に対するステレオタイプを覆す漫画です。現代にも通じる様々な社会問題が子どもの目線で描かれています。「逆境こそ楽しみなさい」という主人公のママ(※お母さんでも母親でもなくあえてママと表記)のセリフがありますが,まさにあらゆる逆境を笑いと笑顔そして時々シリアスシーンで表現されています。『夢中』のように緩×急のある作品なのでぜひぜひ手に取ってほしいです!
余談ですが,真面目な一面を見せるとするなら,最近は,中井久夫先生や小此木啓吾先生などの専門書を読んでます(キリッ)。心理学徒の方はぜひ!!


〈神大談義〉 ~神大トークで盛り上がりましょう!~



ーよく使う図書館はどこですか?レビューもお願いします。

 神大の一番頂上の鶴甲第2キャンパスなので,人間科学図書館をほぼ毎日使ってます。ヘビーユーザーです。専門書が多く,席も座りやすいところがこの図書館の強みです。個人席?仕切りのある席が多いので,集中したいときにもってこいの図書館です。


ー好きな学食のメニューは何ですか?

 かきたま汁です!鶴2食堂のかきたま汁はトロトロなんです!寒い今にピッタリですよ。混んでいない日は,かきたま汁にすこーしだけ七味をかけて食べてます。七味がアクセントになってこりゃまた美味しいんですよ~。


ー大学のお気に入りスポット、景色が綺麗なところを紹介してください。

 鶴甲第2キャンパスのA棟からの景色は,登山(=通学)している学生の特権です。ここからみる景色は格別に綺麗です。A棟は主に研究室のある棟なのですが,ゼミや課題で帰りが遅くなったときにみえる夜景は,その日がんばったご褒美のように感じます。


ー学部では何を研究していますか?

 学部では,心理学を専攻しています。公認心理師の資格を取得するために,学部で必要な単位を取ることに必死になっています笑 転入前は教職を取っていて,公認心理師の単位は1から取るので,週7で授業を受けた時もありました。それぞれの授業が他の授業とのつながりをもっているので,授業で学んだこと同士をつなげながら,心理学の知識を身につけていくことが楽しいです。
卒業研究は,まだはっきりとは決めていないのですが,学校教育での心理教育に活かせる研究になったら良いなァ~なんて夢を描きながら,研究テーマを考えてます。


ーテスト期間の苦労話を教えてください。

テストの内容で頭がいっぱいになって,家に入るための暗証番号を忘れますね~。入れなくて一瞬焦りますね~。は~い。


ー神大に入ってよかったことは何ですか?

 私は国際人間科学部発達コミュニティ学科所属です。この学科に入ってよかったことは,発達コミュニティ学科の名の通り,様々なコミュニティに関われることでしょうか。地球規模の課題(グローバル・イシュー)について探究する「GSP(グローバルスタディーズプログラム)」では,海外研修として1カ月のニュージーランド留学,国内研修として地域のこども食堂のボランティアに行きました。グローバルとローカルの両方のフィールドで様々な人と出会い,新たな発見や刺激があり,この学科に入ってよかったな~と思っています。あと,蛇足ですが,転入生なので1年,2年,3年の授業を受けることが多いです。そこで,多学年の知り合いや友人ができ,縦と横にコミュニティがさらに広がったところもよかったところです。


〈その他〉 ~演劇に興味のない人もお読みください~



ー誰かからもらって、印象に残っている言葉はありますか?
 
最近受けた講義での先生の一言が印象に残ってます。

-3知って,1語れ-

1つのことを語るには,1つのことに関する知識を3つ(それ以上)知っておかなければ,相手にわかりやすく話すことができない。つまり,あることについて相手にわかりやすく話すためには,話すこと以上にそのことについてわかっていないといけないよという意味です。
 この言葉をきいてから,なるほどなぁ~肝に銘じます!と思い,私は自分の専門分野について何も語れなくなりました笑 勉強しまーす笑


ー忙しい時期の体調管理法やおすすめの自炊レシピがあれば教えてほしいです。

 麦ごはんを炊いています。血糖値の急な上昇を抑えるらしく,テスト期間など居眠りしたくないときに食べています。


ー稽古がある時期の生活で気をつけていることはありますか?

 喉が痛くならないように,はちみつを温かい飲み物に入れたり,生姜焼きを作るときに入れたりしてます。あと,緑茶飲んでます。


ー趣味/息抜きの方法を教えてください。

 息抜きの方法は,とにかく外に出て,練り歩くことです。三宮と元町の商店街をぐるぐる回ってます。方向音痴なのに,マップを使わずに歩くのでこの前は同じお店の前を3回通りました笑 個人的には,四条河原町より三宮,元町あたりの方が複雑で,三宮あたりは未だに慣れていません…。


ー座右の銘は何ですか?

 座右の銘,長いですよ~。いきますよ~。

―恐怖は不快ではない 安全は愉快ではない 不安とは君自身が君を試すときの感情だ 栄光(もくてき)を前に対価を差し出さなきゃならない時 ちっぽけな細胞の寄せ集め1人 人生なんてくれてやれ 目を逸らすな 君がやりたいことは何だ?―

これは,「ひゃくえむ」という漫画のセリフなのですが(まだ,全部は読んだことのない漫画ですが…)この言葉にいつも勇気をもらってます。
進路に迷ったときに,この言葉が背中を押してくれました。進路変更という昔から追いかけ続けてきた夢を変えることに,恐怖や不安,過去の自分への裏切りといった罪悪感はあるかもしれません。だけど,今の自分のやりたいことに目を逸らさないというのが時には大切だったりします。「君がやりたいことは何だ?」と今の自分に問いかけたときに出てくる「こたえ」は,これまでの自分がつくり上げてきた,これからの自分の「夢」だったりするものです。


ー地元の方言喋って下さい

 これ以降の質問で方言を小出ししてきます。( )内が,訳です笑


ー好きな食べ物は何ですか?

 これといって好きな食べ物も嫌いな食べ物もないな~って思ってたんですけど,なんと!学食で毎回,「チキン南蛮」を頼んでいることに気づき,どうやら「チキン南蛮」が好きみたいです。知らなんだ…(知らなかった…)


〈最後に〉



ー改めて、公演に向けた意気込みをどうぞ!

 意気込みます。卒業公演では,卒業される先輩方が「いろんなことあったけど,大学演劇して良かった~」と思っていただけるように,後輩としてできることを精一杯したいです! そして,新人公演でデビューしたばかりですが,今回の卒業公演で半年ほど演劇をお休みしようかと考えています。まだ確定ではありませんが…。4年生の後半,院生でまた演劇が再開できるように,今回の公演でその土台を作りたいです!まだお休みするかどうか,は確定ではありませんが…(念のため,二回目)。


ーあなたにとって、演劇とは何ですか?

 私にとって,演劇とは「スペース」です。「すき間」でもあり,「宇宙」でもあります。学校やアルバイト以外の活動として息抜きをする「すき間」であり,私という人格から一旦,離れて違う人間になるという「すき間」であり,役作りや舞台づくりはいつまでも際限のない「宇宙」だと思っています。あれ?なんかいい感じにまとまりましたね。いい感じですよね?いい感じにまとまっとる(まとまっている)から「演劇とはスペースです」とドヤ顔しながら言っときます笑


神戸大学演劇研究会はちの巣座
40期卒業公演

『夢中』
3/1 11時~、16時~
3/2 11時~
神戸大学シアターD300にて上演。
500円+カンパ制です。
ご予約はこちらから可能です。


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