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【短編小説】半透明の琥珀糖 ~シーグラスII~


琥珀糖(こはくとう)…
半透明のガラスの欠片のような姿をしている
琥珀糖を和菓子屋さんの店頭で見かけると初恋を思い出す

そう…彼女のことを…
私の初恋の相手は 同性だった…

彼女は、当時 喘息(ぜんそく)が酷く
中学2年の夏休みの間だけ私の住んでいた田舎町の祖母の家に泊まっていたのだ

私は、学校やクラスに馴染めず悩んでいた
いつもひとりで 海を眺めていた
海を見ていると癒されるのだ

そんな時、彼女 晶(あきら)と出会って…
恋に落ちたのだ…

彼女と美しい海で 夏を過ごした


8月の終わり、彼女は「帰らないといけない…」と悲しそうに言ってきた

こうなることは わかっていた
彼女が帰る時この恋は終わるのだと…
わかっていたけど認めたくなかった
彼女を失いたくなかった…
でも、当時の私達は 非力だった…

私は、私が大好きな この海で拾った
お気に入りのシーグラスを彼女に手渡した…
もう会えなくなることを覚悟して…

「私だと思って…このシーグラスを見るたびに私のことを思い出して」と引きつった笑顔で そう言った

私は泣かずに笑って見送りたかった…
困らせなくなったから彼女を…

彼女は シーグラスを手にし
夕暮れの空に透かしながら私にこう言った

「翔子(しょうこ)だけを想ってる!!大好き」 と…そして 優しくキスをしてくれた

泣かないと決めてたのに
涙が溢れて 溢れて…

そのたびに彼女は 涙を指で拭(ぬぐ)ってくれながらキスしてくれた…

あんなに綺麗なキスは
あんなに純粋な恋は
もう二度と できないだろう…

彼女は シーグラスを今でも持っていてくれているだろうか…

私のことをシーグラスを見るたびに思い出し 「あの恋は いい思い出」と思っていてくれているだろうか…

「私はね、いい思い出だよ
素敵な恋だったよ晶(あきら)」

琥珀糖を手にし
夕暮れの空に透かした

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#文披31題
Day5 琥珀糖

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