ミケとみかん 2


病院に着いて初めてこのコの名前を考えた。
最初は縞々の模様で、いかにも野良猫みたいだから「ノラ」とか、
「しまコ」とか。何だかしょうもない名前をお姉ちゃんと考えていた。
でも、なんかもっと可愛くてこのコらしい名前はないかな。
そう考えてた時に、このコを暑い夏の夕方で出会った事を思い出した。
そして、僕が柑橘が好きだという理由で「みかん」にしたのだ。
「みかん」って冬の名物みたいな感じがするけれど、僕は「夏みかん」を想像した。
丸々と大きいみかんはこの小さなくるんと丸くなっている猫にぴったりだ。
それに、「みかん」と名前を呼んだ時に、このコが嬉しそうに鳴いたから。

お姉ちゃんには「変な名前」と言われたけれど。
僕とみかんはこの名前をとてもいい名前だと思っているから。いいのだ。

病院の診察室に入って、キャリーバックから出て来たみかんは診察台の上にちょこんと乗った。
こういうときって、猫って怖がるのと思ってたけれど、みかんはじっとしてて。
お医者さんのが触っても暴れる事はなく、終わった。
そういえば、ミケも大人しかったなあと思い出す。

こうして、無事に病院が終わった。
気付いたら夜だった。
キャリーケースに入ってつぶらな瞳で見つめるみかんを僕はじっと見つめ返して、「偉かったね」と誉める。
そうすると、どこからか「当然でしょ」と自信満々な声が聞こえて来た気がした。

家に着いてからリビングでキャリーバックに入っているみかんをそっと抱き上げ、離すと一目散にご飯を食べに行った。
みかんはきっと、病院という新しい環境と人に出会って、緊張してたんだなあと思った。
緊張して動けなかったのか。なんだか猫なのに人間臭いなと思ってクスっと笑ってしまった。
ご飯でお腹いっぱいになったみかんは、ミケの傍に行くと、ミケの背中にもたれてぐっすり眠ってしまった。
ミケも何事もないようにそのまま眠りにつく。

色々あったけれど、無事にみかんを家族として迎え入れる事が出来た。
みかんにとって、この家が一番の居場所になったらいいなと思う。
僕がその居場所づくりを手伝えたらと、思った。

寝る前に、ベッドに入ったらみかんがベッドに潜って来た。
初めて感じる、小さな暖かさ。

みかん、これからたくさんの思い出を作ろうね。
そう言って静かに眠りについた。


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